研究課題
基盤研究(C)
脂肪織は大きな内分泌組織であり様々な生理活性物質を分泌しており、アディポネクチンはそのうちの一つである。我々はアディポネクチン受容体がヒトやラットの椎間板細胞で発現し、椎間板細胞においてもアディポネクチンが抗炎症作用を有することを報告した。それに引き続く研究としてヒト椎間板培養細胞や異なる程度の椎間板変性を再現できるラット尾椎椎間板変性モデルを用いて、アディポネクチンが椎間板の炎症や変性へ及ぼす影響の検討を更に深めていく。
アディポネクチンは脂肪組織から分泌される抗炎症作用を有するホルモンで、肥満、炎症性疾患や軟骨疾患に関与し、様々な生理学的、病理学的過程への関与を有する。しかし椎間板への機能は不詳である。本研究ではアディポネクチン作動薬アディポロンのヒト椎間板やラット椎間板変性モデルへの効果を調査した。アディポロンは炎症や細胞外基質異化を抑制し、AMPK経路中のp65のリン酸化を抑制した。アディポロンの椎間板内注射は放射線学的な椎間板高の低下、組織学的な変性進行、炎症性サイトカインや細胞外基質異化タンパクの産生を抑制した。以上の結果からアディポロンは早期の椎間板変性抑制への新たな治療法となりうると考えられた。
腰痛は日本の有訴率の第一位であり早急に解決すべき世界的な健康問題である。椎間板変性は腰痛の主たる独立した危険因子だがその発生機序は明らかではない。変性椎間板に対する現在の治療の多くは切除を中心とした手術療法であり、結果的に椎間板を破壊し本来の機能を失うため、椎間板機能温存と組織再生を両立する新たな治療法の開発が急務であり、成長因子製剤投与や遺伝子導入、幹細胞移植等の生物学的治療の有効性が日々研究されている。本研究からアディポロンは抗炎症作用や細胞外基質異化抑制作用により早期の椎間板変性抑制への新たな治療法になりうると考えられた。アディポロンは経口投与可能であり、臨床応用しやすいと考えられる。
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