研究課題/領域番号 |
20K09512
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
成尾 宗浩 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (00772310)
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研究分担者 |
奥田 貴久 日本大学, 医学部, 教授 (20620305)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | GSNOR / 骨代謝 / 骨強度 / HIF2α / NKT様細胞 / 変形性膝関節症 / IL-4 / エタノール / Natural killer T細胞 / Interleukin 4 / S-ニトロソグルタチオン還元酵素 / 変形性関節症 / HIF2α / NKT細胞 / 整形外科学 |
研究開始時の研究の概要 |
関節疾患の代表格ともいえる変形性膝関節症(膝OA)の有病率は高く、日常生活動作を著しく障害する。一方で発症機構には不明な点が多く根治的治療は存在しない。本研究では、骨芽細胞分化に関与するS-ニトロソ化グルタチオン還元酵素と、破骨細胞分化に関与するNatural Killer T細胞の役割に焦点を当て、特殊な骨代謝動態にある膝OAの病態解明と新規治療法の開発を目的とする。
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研究実績の概要 |
日常生活に甚大な悪影響をもたらす変形性膝関節症(OA)の発症機構解明と根治的治療法の開発に資する候補物質として、本研究では低酸素反応因子HIF2αとS-ニトロソグルタチオン還元酵素(S-nitrosoglutathion reductase;GSNOR)の作用に着目し、GSNORの欠損により増加が予測されるHIF2αのニトロソ化修飾(HIF2α-SNO)がOA発症に与える影響に焦点をあて解析を行う。2021-2023年度は、GSNORがClass Ⅲアルコール脱水素酵素(ADH3)としての作用を持ち、かつその局在に組織特異性がないことを利用して、アルコールを投与した個体がGSNOR(ADH3)の働きを介して骨組織の構造改変に寄与するかにつき考察した。10%エタノールを負荷した13週雌C57BL/6マウス(Alc群)を解剖し、液体窒素を用いて破砕、ライセート化したマウス大腿骨遠位端からmRNAを抽出しリアルタイム定量的PCRにて骨代謝関連のmRNA発現頻度を群間比較した。Alc群において遺伝子レベルで骨吸収が亢進しており、細胞解析ではAlc群においてnatural killer T(NKT)様細胞の機能が低下し、抗炎症サイトカインであるIL-4の産生低下を介して骨吸収が促進することが明らかとなった。本知見から、骨吸収の亢進には自然免疫細胞、とくにNKT様細胞と破骨細胞成熟が深く関与していることが示された。上記研究結果をもとに、2024年度はOAの病態として一般的な内反変形膝における軟骨下骨硬化の進展メカニズムにつき、GSNORと骨形成の関係を中心に解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究結果から、GSNORノックアウトマウスとC57BL/6ワイルドタイプマウスの下肢骨に骨強度の差異があることが示されている。in vivoでの骨微細構造を解析する目的で、大腿骨骨幹部皮質骨の電子顕微鏡解析を追加した。その結果コラーゲン線維の数は同等であるものの、ノックアウトマウスではその密度や配向性、骨基質中のミトコンドリアの形態に差がみられ、有意に高い酸化ストレスと骨強度の低下を補足説明する因子として重視している。大腿骨遠位端を破砕して抽出したmRNA発現頻度において、両群間で破骨細胞成熟に関わる遺伝子に差がない一方、骨形成に関わる遺伝子(Bglap, Col11a2,ATF4)は有意に増加していた。遺伝子レベルではノックアウトマウス群で骨形成促進に傾いていることと合わせて考察すると、骨芽細胞が提供する材料供給能力自体はむしろ亢進している一方で、正常な骨組織を構築する段階で何らかの不備が発生し、構造的な差異を生じている可能性を推測している。現段階では、コラーゲン線維の配向性を決定づける因子を検索中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、GSNORによるHIF2αのSNO化を介した病的な内軟骨骨化および骨形成の亢進を解明することである。現在まで得られている研究結果は、①NKT様細胞が産生するIL-4を介した破骨細胞成熟ならびに骨粗鬆症の伸展、②GSNORによる皮質骨強度の維持 の2点であるが、GSNORとHIF2αを結びつけるのに必要な特定蛋白のSNO化解析がまだ実現していない。予定していたビオチンスイッチ法については、技術的および再現性の問題を考慮して質量分析器を用いた解析への変更を予定している。HIF2α-SNO化の定量と同時に、次世代シーケンサ―を用いてGSNORノックアウトマウスにおける骨形成関連遺伝子のエンハンサー、プロモーター領域のメチル化解析を行い、実際にHIF2α-SNO化と並行して骨形成が亢進することの裏付けを行う予定である。
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