研究課題/領域番号 |
20K09533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56030:泌尿器科学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
白木 良一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (70226330)
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研究分担者 |
前田 明 藤田医科大学, 医科学研究センター, 教授 (50212204)
住友 誠 藤田医科大学, 医学部, 教授 (50255535)
高原 健 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (90418939)
全並 賢二 藤田医科大学, 医学部, 講師 (60440731)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 筋層浸潤性尿路上皮癌 / ロボット支援膀胱全摘除術 / 鏡視下手術 / 腫瘍制御 / 術後イレウス / 血中循環癌細胞 / 遺伝子パネル検査 / 膀胱癌 / 膀胱全摘除術 |
研究開始時の研究の概要 |
腹腔鏡手術やRARC等の低侵襲術式では術後早期の再発例や、ORCでは通常経験しない特異な転移様式(皮下や遠隔転移等)が報告されている。本研究の目的はRARCの術後再発高リスク例の予見(開腹術の選択)と、術中手術操作を検討し術後再発リスクを低下できる術式の確立である。手術の各段階において、血清および腹腔内に貯留する洗浄液等の細胞を個別に回収し、これらのCTC検査、細胞診および様々な尿路上皮癌の活動性に関与するmRNA発現を解析する。これらにより、術後再発の高リスク症例を予見し、術中手術操作の問題点を検討し腫瘍制御の観点においても安全かつ有効な治療法を確立する。
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研究実績の概要 |
筋層浸潤膀胱癌に対する根治的膀胱全摘除術は主要なガイドラインに於いて高いグレードで推奨されている。ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)が本邦でも2020年に保険適応となり、術後回復や合併症発生率低下などのメリットが報告されている。我々も200例以上 の症例を重ねて周術期成績の改善や早期の社会復帰を報告してきた。一方、開腹手術では通常経験しない特異な転移様式(皮下転移や腹膜播種等)を経験した。同様の症例は他の施設からも報告されて おり、鏡視下手術の気腹下での手術操作と非典型的な再発形式に関連があると推定された。これらの解析のため、RARC手術操作中の血漿お よび腹腔内に貯留する洗浄液の細胞を手術の各段階で個別に回収し、各ステップに於ける腹腔内洗浄液細胞診の陽性率、末梢循環腫瘍細胞(CTC)陽性率の変化や mRNA発現プロファイルを検討した。病理学的並びに分子生物学的情報と臨床的な再発の有無、再発転移様式、時期等を解析した。30症例のエントリーを目標に2021~23年度は20症例の検体採取、保存を行い経過観察した。現在、20例中1例に術後早期のリンパ節再発を認めているが、その後に類似の早期再発例を認めていない。実際、その後の経過観察の経緯では 、ロボット支援による体内尿路変更を伴う根治的膀胱切除術 (iRARC) と開腹による根治的膀胱切除術 (ORC) の間で周術期および長期の腫瘍学的転帰と再発パターンを比較した。iRARCまたはORCを受けた膀胱がん患者177人を遡及的に分析した。 iRARC は、ORC と比較して、周術期の転帰が良好で、合併症が少なく、局所進行 (cT3 以上) 疾患を含む長期生存転帰も同等であった。(Zennami K, Kusaka M, Shiroki R, et al. Int J Clin Oncol. 2021 26:1514-23)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RARC手術操作中の血漿および腹腔内に貯留する洗浄液の細胞を手術の各段階で個別に回収し、各ステップに於ける腹腔内洗浄液細胞診の陽性率、末梢循環腫瘍細胞(CTC)陽性率の変化やmRNA発現プロファイルを検討している。これにより、得られる病理学的並びに分子生物学的情報と臨床的な再発の有無、再発転移様式、時期等を解析した。30症例のエントリーを目標に2021~23年度は30症例の検体採取、保存を行い経過観察した。現在、30例中2例に術後早期のリンパ節再発を認めているが、その後に類似の早期再発例を認めていない。検体の病理細胞診結果では術中の腹腔内洗浄液の細胞診において有意な所見を認めたものはない。CTCの解析、尿路上皮癌の活動性に関与するmRNA発現の解析を行ったが、再発例が少ないためかCTCにおける遺伝子発現等の有意な因子は認められていない。検体の病理細胞診結果では術中の腹腔内洗浄液の細胞診で有意な所見を認めたものはない。引き続き、経過観察中の症例での再発の有無や症例数の増加、特に高リスク例での検体収集を計画していく。 また、当科並びに他施設からの報告でも術後合併症の発生例や社会復帰遅延令において早期再発を認める傾向があるため、(JAMA. 2022 Jun 7;327(21):2092-2103.)術後腸閉塞に着目し後方視的に腫瘍制御以外に術後腸閉塞に関する危険因子を精査し、離床や飲水接種の遅延および高齢者機能評価スクリーニングであるG8スコアの 高得点が有意に関連していた事を報告した。(Zennami K, Takahara K, Shiroki R, et al. Int J Urol 29:553,2022. )
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今後の研究の推進方策 |
RARC手術操作中の血漿および腹腔内に貯留する洗浄液の細胞を手術の各段階で個別に回収し、各ステップに於ける腹腔内洗浄液細胞診の陽性率、末梢循環腫瘍細 胞(CTC)陽性率の変化やmRNA発現プロファイルを検討している。これにより、得られる病理学的並びに分子生物学的情報と臨床的な再発の有無、再発転移様式、時期等を解析した。現在、30例中2例に術後早期のリンパ節再発を認めているが、その後に類似の早期再発例を認めていない。検体の病理細胞診結果では術中の腹腔内洗浄液の細胞診において有意な所見を認めたものはない。CTCの解析、尿路上皮癌の活動性に関与するmRNA発現の解析を行ったが、再発例が少ないためかCTCにおける遺伝子発現等の有意な因子は認められていない。検体の病理細胞診結果では術中の腹腔内洗浄液の細胞診で有意な所見を認めたものはない。引き続き、経過観察中の症例での再発の有無や症例数の増加、特に高リスク例での検体収集を計画していく。 また、本学では現有している次世代シークエンサー(NGS)によるPlession 遺伝子パネル検査を実施しており、これらのデータから尿 路上皮癌における遺伝子サブタイプ分類の情報も獲得し総合的にデータ解析を行う。これらのサブタイプ情報も含め、免疫療法あるいは化学療法の選択を含めた術前補助治療の適応性、および鏡視下での RARC手術の適否についても検討する。また、COVIDの影響で症例集積に遅延が生じたこともあり、研究期間を再延長し最終年度への予算の繰り越しを申請した。
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