研究課題/領域番号 |
20K09602
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
甲斐 健太郎 大分大学, 医学部, 講師 (90457622)
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研究分担者 |
奈須 家栄 大分大学, 医学部, 教授 (30274757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 子宮内膜症 / マイクロRNA / 細胞増殖 / 細胞死 / 細胞郵送能 / 細胞遊走能 / 細胞増殖能 / スフィロイド |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ヒト及びヒヒ子宮内症検体を用いて、最初にmiR-132及びその標的分子の同定、発現検証と局在解析を行い、次に、miR-132及び標的分子の機能解析を行い、最後に子宮内膜症マウス・スフィロイドにおけるin vivo/ex vivo studyを目指す。本研究の独自性は、ヒトと同様に月経を有し、子宮内膜症を発症するヒヒモデルを用いる点である。子宮内膜症は月経回数の増加に伴い症状が増悪するため、マイクロRNAの発現異常で早期診断・治療ができれば、医学的な少子化対策として波及効果が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、miR-132が子宮内膜症の病態形成に関与するか、また、将来的な治療標的となるかを探索することだった。2020年度は発現解析とパスウェイ解析を行った。その結果、miR-132は、正常子宮内膜間質細胞と比較して、子宮内膜症間質細胞で発現が亢進していた。また、miR-132を強制発現させた正常子宮内膜間質細胞(正常細胞に内膜症形質を導入)と非導入群との比較マイクロアレイで得られたデータを用いたパスウェイ解析では、p53 SignalingとCell Death and Survival、Cellular Movementが候補パスウェイとして抽出された。2021年度はmiR-132の強制発現モデルを用いて、miR-132の下流の標的分子(Akt1およびMDM2、MMP1)の転写(mRNA)・翻訳(蛋白)レベルでの発現変化を検証した。その結果、Akt1のmRNA発現は低下したが、蛋白発現は亢進した。一方、MDM2とMMP1はmRNAレベル、蛋白レベルでいずれも発現が亢進した。一般的に、マイクロRNAはその標的となるmRNAの末端に結合し、転写を阻害する(一部蛋白への翻訳阻害作用もある)。そのため、理論的には、下流標的分子のmRNAおよび蛋白の発現はいずれも低下するはずである。しかし、本研究では、miR-132の強制発現によって、下流の標的分子のmRNAは、Akt1は低下し、MDM2およびMMP1は亢進した。蛋白発現に至っては、3つとも亢進した。この矛盾した実験結果のメカニズム解明が課題だった。2022年度は、miR-132を強制発現した正常子宮内膜間質細胞を用いて、機能解析した。miR-132の強制発現によって、細胞増殖・細胞遊走能は亢進し、細胞死耐性は低下した(miR-132の強制発現によって、正常子宮内膜間質細胞が子宮内膜症的形質を獲得したと解釈できる)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記したmRNAレベルと蛋白レベルの発現乖離が課題である。また、オルガノイド作成も研究協力関係にあるミシガン州立大学の研究室の方針転換もあり、自施設では未作成のままである。 しかし、2023年秋に大分大学とミシガン州立大学との間でMTA(Material Transfer Agreemnet)協定を結び、ミシガン州立大学が世界に先駆けて樹立した、ヒト卵巣子宮内膜症由来の不死化間質細胞を入手できた。本細胞株により、当講座はヒト子宮内膜症の上皮細胞株と間質細胞株を両方を研究に供することができるようになった。入手した細胞株は感染チェックを経て、既にストック貯蔵した。本細胞株を用いて、細胞増殖アッセイを行うと、正常子宮内膜間質細胞に比較して、その増殖能は優位に高かった。本細胞株の入手は、本研究を推進する協力なツールになると確信する。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年間延長し、2024年度が最終年度に当たる。来年度は、上記細胞株を用いて、miR-132の、Loss of function実験を進める。しかし、その一方で、他の候補であったmiR-210についても発現解析・機能実験を進める。miR-132とアッセイ系が共通なので、ターゲット(つまりプライマー)を変更するだけで、同様の解析が可能である。また、過去に当講座で行った3種類のマイクロアレイの結果からmiR-210の標的分子(IGFBP3とCOL8A1)を抽出済みである。さらに上皮系と間質系の両方の細胞株を有するため、miR-210発現局在に応じた細胞株を使用可能である。結果のとりまとめと論文化に向けて、遅滞なく研究を推進する。
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