研究課題/領域番号 |
20K09627
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
嵯峨 泰 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70360071)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | バソヒビン2 / 卵巣がん / パクリタキセル / ビンクリスチン / イリノテカン / ジェムシタビン / バソヒビン1 / バソヒビン2 / 血管新生 / 抗がん剤感受性 / ゲノム編集 / アデノ随伴ウイルスベクター / 一本鎖抗体 |
研究開始時の研究の概要 |
バソヒビン2は腫瘍のみが産生する血管新生因子であり、バソヒビン2を標的とした治療戦略は副作用が少ない可能性がある。またバソヒビン2はがん細胞の微小管の活性を促進する酵素作用を有し、その抑制は卵巣がん化学療法の基幹薬剤であるパクリタキセルの感受性を増強させる。われわれはベバシズマブと遜色ない抗腫瘍効果を示す抗バソヒビン2抗体を開発した。本研究の目的はこの抗体を基に抗バソヒビン2一本鎖抗体を搭載したアデノ随伴ウイルスベクターを作成し、これまでわれわれが進めてきた遺伝子治療的手法を用いて、副作用が少なくコストが低い、併用により既存の化学療法の効果を高める全く新しい卵巣がん治療法を開発することである。
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研究実績の概要 |
バソヒビン2を標的とした卵巣がん新規治療法の開発を目指して研究を進めている。バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞株を複数樹立し、臨床的に卵巣がん治療に用いられている種々の抗がん剤に対する感受性の変化を観察した。これまで上皮性卵巣がんに対する多剤併用化学療法の基幹薬剤のひとつであるパクリタキセルに対する感受性が増強することを見出し、バソヒビンの微小管活性促進作用と合わせて考察し報告した。またパクリタキセルとは逆に微小管活性を阻害する抗がん剤で、非上皮性の卵巣がん治療に用いられるビンクリスチンに対する感受性の変化を観察した。その結果、複数のバソヒビンノックアウト卵巣がん細胞株においてビンクリスチンの感受性の低下が観察された。このことから、バソヒビン2を標的とした治療戦略とビンクリスチンを含む化学療法レジメの併用には注意を要する可能性が示唆された。さらに本邦で開発され、卵巣がんの2次化学療法に用いられる抗がん剤であるイリノテカンの感受性を検討した。in vitroの検討ではイリノテカンの活性型であるSN38を用いた。その結果、検討した細胞株の中で一株のみ、バソヒビン2ノックアウトによってSN38の明らかな感受性低下が認められた。バソヒビン2を標的とした治療法を臨床応用する際には、イリノテカンとの併用により効果が低減する症例が存在する可能性が示唆され、注意が必要と考えられた。今回はイリノテカンと同様に卵巣がんの2次化学療法に用いられる抗がん剤である、ジェムシタビンの感受性を検討した。その結果、バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞において感受性の増強が観察された。このことから、バソヒビン2を標的とした卵巣がん新規治療法は従来の抗がん剤であるパクリタキセルのみならず、ジェムシタビンとの併用によってもより有効な治療効果が得られ、ひいては卵巣がん症例の予後改善につながる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バソヒビン2を標的とした卵巣がん新規治療法の開発を目指して研究を進めている。バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞株を複数樹立し、臨床的に卵巣がん治療に用いられている種々の抗がん剤に対する感受性の変化を観察した。これまで上皮性卵巣がんに対する多剤併用化学療法の基幹薬剤のひとつであるパクリタキセルに対する感受性が増強することを見出し、バソヒビンの微小管活性促進作用と合わせて考察し報告した。もう一方の基幹薬剤であるシスプラチンの感受性に変化はなかった。今回は卵巣がんの2次化学療法に用いられる抗がん剤である、ジェムシタビンの感受性を検討した。その結果、4種のバソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞中2株において感受性の増強が観察された。一方、感受性の低下した株が1株、変化がなかった株が1株みられた。ジェムシタビンはがん細胞のDNA合成時に取り込まれDNA合成を阻害し、代謝拮抗性悪性腫瘍剤に分類される。今回発見されたジェムシタビン感受性増強現象と、バソヒビン2の機能のひとつである微小管活性化との直接の関連は考え難い。バソヒビン2ノックアウトによるジェムシタビン感受性増強効果の機序の解明は、いまだ不明な点の多いバソヒビンファミリーの機能の一端を解明する手がかりになるかもしれないから。
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今後の研究の推進方策 |
バソヒビン2を標的とした卵巣がん新規治療法の開発を目指して研究を進めている。バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞株を4株樹立し、臨床的に卵巣がん治療に用いられている種々の抗がん剤に対する感受性の変化を観察している。これまで上皮性卵巣がんに対する多剤併用化学療法の基幹薬剤のひとつであるパクリタキセルに対する感受性が増強することを見出し、バソヒビンの微小管活性促進作用と合わせて考察し報告した。もう一方の基幹薬剤であるシスプラチンの感受性に変化はなかった。今回は卵巣がんの2次化学療法に用いられる抗がん剤である、ジェムシタビンの感受性を検討した。その結果、4種のバソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞中、2株において感受性の増強が観察された。一方、感受性の低下した株が1株、変化がなかった株が1株みられた。ジェムシタビンはがん細胞のDNA合成時に取り込まれDNA合成を阻害する。代謝拮抗性悪性腫瘍剤に分類される。今回発見されたジェムシタビン感受性増強現象と、バソヒビン2の機能のひとつである微小管活性化との直接の関連は考え難い。バソヒビン2ノックアウトによるジェムシタビン感受性増強効果の機序の解明は、いまだ不明な点の多いバソヒビンファミリーの機能の一端を解明する手がかりになるかもしれない。今回の検討では4種のバソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞中2株において感受性の増強が観察され、一方、感受性の低下した株が1株、変化がなかった株が1株みられた。これらの細胞同士の性状の差を比較することによって、バソヒビン2ノックアウトのジェムシタビン感受性増強に関与する因子をスクリーニングする予定である。
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