研究課題/領域番号 |
20K09665
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
津吉 秀昭 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (90593864)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 子宮体癌 / 分子イメージング / Radiogenomics / 治療バイオマーカー / 癌 / genomics / radiomics |
研究開始時の研究の概要 |
従来のRadiogenomics研究は、ある特定の既知の遺伝子変異の有無を画像データから推測するだけのものであった。申請者らは、Radiomics解析によって得られた画像データと、癌組織の網羅的な遺伝子データとのあらゆる相関を検証することで、侵襲的な組織採取を行わず画像検査のみで有効な治療法が選択できる治療バイオマーカーを確立し、更に予後や治療効果といった臨床データとも統合することで、新しい治療へ直結する遺伝子経路を同定し、新規治療薬の開発へとつなぐという、2つのアプローチによって有効な治療選択肢の無い進行再発子宮体癌に対する新たな治療戦略を開発する。
|
研究実績の概要 |
進行再発子宮体癌におけるRadiogenomicsの確立と臨床応用に向け、研究実施計画に沿って前年度に引き続き以下の実験ならびに画像解析を行った。①PET装置を用いた分子イメージ技術の、子宮体癌を含む婦人科癌の病期診断における有用性を、糖代謝を反映するFDG PET画像と、同患者の病理学的データとの相関を解析することによって証明し、かつ前方視的にデータを集めて解析中である。②PET装置を用いた分子イメージ技術が、子宮体癌の進行、転移、更には予後を予測するバイオマーカーとなりうることを、女性ホルモン受容体発現を反映するFES PET画像データと、同患者の病理学的データならびに再発・生存を含む予後データとの相関を解析することによって証明し、かつ前方視的にデータを集めて解析中である。③糖代謝を反映するFDG PET画像のRadiomics解析を行うことによって、子宮体癌の進行再発に極めて重要なPI3K-AKTシグナル経路の遺伝子レベルでの活性化の有無を同定しうるという予備実験の結果を、同患者の組織検体を用いた免疫組織化学染色ならびにウエスタンブロッティングを行うことによって、これら予備実験の裏付け、すなわち子宮体癌におけるRadiogenomics解析の有用性を証明することに成功した。次年度も引き続き新規子宮体癌患者において、治療前にFDG PET検査が行われた症例を対象に、PI3K-AKTシグナル経路の活性化と相関する画像パターンを持つ患者の予後を前方視的に追跡し、さらにこれらの患者の残余組織検体を用いてマイクロアレイによる遺伝子解析を行い、実際にこれら遺伝子経路が活性化されていることの証明を行っているところである。また、近年WHOが子宮体癌における新たな分子遺伝学的分類を発表したのに合わせて、これらと画像所見との解析を計画中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究実施計画、”転移再発を予測し、かつ予防的治療の効果を確立するための、Radiogenomicsにもとづいた治療戦略を樹立する”において、これまでの成果と現状を論文発表で報告するとともに(Clin Nucl Med. 2022. Jul 1;47(7):e481-e488.)、現在は、前向きに子宮体癌患者の画像データ並びに遺伝子データの収集を行い、症例数を蓄積しin vitro・in vivoでの実験系を確立しているところである。また、近年WHOが子宮体癌における新たな分子遺伝学的分類を発表したのに合わせて、これらと画像所見との相関関係を見出すための解析も計画中である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、前向きに子宮体癌患者の画像データ並びに遺伝子データの収集を行うとともに、令和4年度の研究実施計画である”転移再発を予測し、かつ予防的治療の効果を確立するための、Radiogenomicsにもとづいた治療戦略を樹立する”を行うための準備を行っているところである。すなわち、予後不良となりうる遺伝子発現と相関する画像パターンを持つ患者と、持たない患者それぞれの癌組織から細胞を採取し、当科ですでに確立した方法により細胞培養・転移動物モデルを作製する(Mizutani.Cancer lett. 2015)。癌の発育・進展を動物用PET装置で経時的に撮像することで画像パターンがどのように変化していくかを観察すると同時に、腫瘍組織も採取し予後不良となりうる遺伝子経路の変化も観察する。これにより、どのタイミングで、どのような遺伝子の変化が、最も癌の転移・再発に影響を与えるかを解明することができ、転移再発を予防する新たな治療標的遺伝子の同定と治療薬開発、そしてこれを予測する画像を用いた治療バイオマーカーの開発につなぐことができると考え、研究を継続中である。
|