研究課題/領域番号 |
20K09673
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56040:産婦人科学関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
片渕 秀隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 名誉教授 (90224451)
|
研究分担者 |
本原 剛志 熊本大学, 病院, 講師 (10457591)
田代 浩徳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (70304996)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 卵巣癌 / 環境物質 / アスベスト / タルク / 発癌 |
研究開始時の研究の概要 |
卵巣癌の発癌機構において、アスベストならびにタルクを代表とする環境物質が、どのような機序で発癌に関わっているのかを明らかにすることを目的としている。さらに、その発癌機序の一端が明らかになった際には、卵管を介した女性特有の外界との連絡がある腹腔内環境を閉鎖腔へ導くことによる外科的予防に関する検討も行う予定である。これらの環境物質と卵巣癌の発癌に関する既報は疫学調査が主であり、今回計画する培養細胞、実験動物、そして臨床検体を用いた網羅的な分子生物学的解析はこれまでに報告されていない。卵巣癌の今後の予後改善のためには、卵巣癌の発症を予防するといった観点からその対策を講じる必要があると考えている。
|
研究実績の概要 |
本邦において卵巣癌の罹患数は増加傾向にあり、毎年約1万人が罹患している。卵巣癌は初期の症状に乏しく、また効果的なスクリーニング法も確立されていないため、半分の症例が進行して診断される。したがって、卵巣癌の今後の予後改善のためには、卵巣癌の発症を予防するといった観点から対策を講じる必要がある。 卵巣癌のリスク因子は、内的因子と外的因子に分類される。内的因子として、未産、排卵誘発剤の使用、ホルモン補充療法に加え、骨盤内炎症性疾患や多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症は、卵巣癌の発症に密接に関与していることが知られている。その一方で、外的因子にはアスベストならびにタルクなどの特定の環境物質の曝露や欧米型の食生活などが挙げられる。 今回我々は、各種in vitroならびラットを用いたin vivoによる網羅的な解析を行い、アスベストならびにタルクが卵巣癌の発癌に密接に関与していることを明らかにした。 近年、卵巣癌予防のため、NCCNはBRCA変異のある女性への予防的卵巣卵管切除を、ACOGはBRCA変異のない女性にも婦人科手術を受ける時の両側付属期切除もしくは両側卵管切除の検討を奨めている。今回われわれが行った解析結果から、アスベストならびにタルクは、卵巣表層上皮の鉄代謝を変化させ活性酸素の産生を惹起することで卵巣癌の発癌に密接に関わっている可能性が示された。 卵巣癌の発症の予防という観点において、外的因子が腹腔内に到達する経路を遮断するといった意味からも、卵管切除術が有意義である可能性があるため、実臨床においてもこれらの啓発を行っていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回我々は、不死化ヒト卵巣表層上皮細胞株(HOSE1C)、ならびにラットを用いたin vivoにおいて、アスベストならびにタルクと卵巣癌の発癌に関する研究を行った。 アスベストに関する検討では、中皮腫の研究において高い発癌性が知られるクロシドライトを用いて、発癌に関わる因子として活性酸素に注目し検討を行った。酸化ストレスに関して3種類のマーカーを用い検討を行った結果、そのいずれにおいても用量依存性の酸化ストレスレベルの上昇が認められた。 さらに我々は、酸化ストレスによって生じるDNA障害の一つであり、特にde novo発癌との関連性が知られるDNAの二本鎖切断に関して注目し検討を行った。γH2AXをマーカーとして評価を行った結果、アスベストおよびタルクの曝露によって、HOSE1CにおけるDNAの二本鎖切断が増加していることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
現在我々は、今回の一連のin vitro解析によって得られた結果を踏まえて、ラットを用いたin vivoでの網羅的な発癌実験を行っている。 すでに、卵巣へのアスベストおよびタルク曝露ラットモデルを作成することに成功しており、今後はさまざまな環境因子の暴露やそれによって引き起こされる詳細な分子メカニズムについての検証を行う予定としている。
|