研究課題/領域番号 |
20K09683
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
野口 智弘 旭川医科大学, 医学部, 講師 (10466500)
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研究分担者 |
笹島 仁 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00374562)
宮園 貞治 旭川医科大学, 医学部, 助教 (50618379)
志賀 英明 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (80436823)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 嗅覚 / 呼吸 / 神経変性疾患 / 嗅覚情報処理 / 嗅球 / 嗅神経 / 非運動症状 / 嗅覚障害 / ロテノン / シヌクレイノパシー / 鼻腔内投与 / ドパミン |
研究開始時の研究の概要 |
中枢神経系の働きを評価する上で、嗅覚障害の有無は極めて重要である。例えば、加齢とともに発症するパーキンソン病や認知機能障害の最初期に顕著な障害が見られるターゲットのひとつとして嗅球がある。従って、高齢化の進む本邦において、嗅覚の一次中枢である嗅球に由来する嗅覚障害は克服されるだけでなく、早期に診断されることが患者の予後を左右する。ところが、嗅球の障害は、多様な細胞から構成される複雑な神経回路の機能解析が難しいため、機序の解明が遅れている。社会の高齢化とともに増加する神経変性疾患とその初期病態である中枢性嗅覚障害の診断と治療法の確立のために、嗅球障害に関する神経生理学的データの蓄積は急務である。
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研究実績の概要 |
パーキンソン病患者の嗅覚障害には呼吸運動の低下が関与する場合があることが知られている。とくに匂い嗅ぎと呼ばれる速く強い呼吸が出来ない場合に嗅覚検査の成績が低下することが報告されている。この神経機序を解明する目的で、我々はマウス嗅神経に対するパッチクランプ実験を行った。その結果を基に、呼吸波形が嗅神経の匂い情報処理を制御するという仮説を提唱した。また、そのイオンチャネル機構をモデル化した。しかし、上記の仮説は非常に単純化された実験環境下から導かれたものであるため、実際の動物の呼吸を解析する必要がある。そこで今回、嗅覚―呼吸連関における我々の作業仮説をさらに検証するため、自由行動下にあるマウスの呼吸波形を測定および解析する実験系を構築した。まずは呼吸波形のどのようなパラメータに注目すべきかを予備的に検討するため、麻酔下と覚醒直後でマウスの呼吸波形を比較した。セボフルラン吸入によって軽麻酔したマウス(BALB/c雄、8週齢以上)を測定チェンバー内に静置し、呼吸波形を測定した。マウス(n = 3)は10~20秒で麻酔から覚醒し、直後にチェンバー内を盛んに探索する様子を見せた。このとき、呼吸波形は麻酔下と覚醒時で明確に異なり、麻酔下では定型の波形が規則正しく連続するのに対して、覚醒時には振幅の増大と周期の短縮が見られ、一呼吸ごとの波形の変化も多様であった。呼吸波形のパワースペクトル解析において、麻酔下では2 Hzおよび5 Hz、覚醒時には10 Hz周辺に顕著なピークが認められた。本研究は匂い嗅ぎの運動学的特性を明らかにすることで、嗅覚運動系が呼吸制御に寄与する神経機序解明の基盤を構築するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの匂い嗅ぎ呼吸を検出する実験系を新規に構築した。無拘束呼吸解析装置(EMKA社製)を本学動物施設内に設置し、自由行動下マウスの全身プレチスモグラフィによる呼吸流量測定を可能にした。この装置はチェンバー内で自由行動するマウスの呼吸を微細な気圧の変化 (~2500分の1 atm) として検出し、その経時変化を記録する(サンプリング周波数 1000 Hz)。記録された呼吸波形に対して周波数解析などを行うためのアプリケーションを導入した。
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今後の研究の推進方策 |
プレチスモグラフィを嗅覚障害モデルマウスに適用する。以前より、我々はミトコンドリア阻害剤であるロテノンをマウス鼻腔内に投与することで、嗅球中のドパミン介在神経に特異的な細胞死を誘導する手法を確立している。この中枢性嗅障害モデルマウスの匂い嗅ぎ呼吸を解析し、嗅覚が呼吸をどのように制御しているかを明らかにする。
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