研究実績の概要 |
臨床研究は、好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis, ECRS)の治療有効性と再発性を検討した。ECRS手術症例を対象として、術後鼻腔局所ステロイド治療の必要性と有効性について比較した。評価には、我々が提唱した鼻症状アンケート(nasal symptoms questionnaire, NSQ; Saito T, Tsuzuki K, et al: ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec, 2018)と術後内視鏡スコア(Eスコア; Tsuzuki K, et al: Auris Nasus Larynx, 2014)を用いた。若年成人、術前の重症副鼻腔炎、術後の嗅覚低下は、鼻腔局所ステロイド治療を必要とする因子であった。この術後治療は重篤な副反応がなく鼻症状の再発を有意に改善させられる有効な治療の一つと考えられることを報告した(Saito T, Tsuzuki k, et al: J Laryngol Otol, 2021)。また、ECRSの主症状である嗅覚障害の背景も検討した。我々が経験した嗅覚障害4300症例における臨床検討では、65歳以上の群では原因不明例が約30%を占め、その臨床的特徴が神経変性疾患によるものと類似していることが分かった(Okumura S, Saito T, Tsuzuki K, et al: Auris Nasus Larynx, 2023)。高齢者の原因不明例では、中枢性疾患へ移行するリスクが示唆された。 基礎研究は、ECRSにおけるメントールのTRPM8を介して肥満細胞を活性化しアレルギー応答を引き起こすメカニズムの解析を継続している。さらに関与しうる種々の免疫系細胞や上皮系および間質系の細胞に対するメントールの効果を評価している。
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