研究課題/領域番号 |
20K09727
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤川 太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60401402)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 有毛細胞シナプス病 / 難聴 / グルタミン酸受容体 / シナプス病 / 加齢性難聴 / デルタ型受容体 / 有毛細胞シナプス / Synaptopathy / 機能代償 |
研究開始時の研究の概要 |
加齢性難聴は75歳以上の半数以上が罹患する頻度の高い神経変性疾患である。難聴は生活の質を低下させるにとどまらず、認知症の進行にも関連し、社会保障上も重要な疾患である。デルタ型グルタミン酸受容体は聴覚にかかわる内耳を含めて神経系に広く認められ、神経伝達にかかわるシナプスの構成と機能にかかわる重要なたんぱく質であり、多くの神経変性疾患と関連付けられている。本研究は神経科学の他領域との横断的な研究を進めることで、内耳におけるデルタ型受容体の機能を明らかにして、加齢性難聴をはじめとする内耳障害の治療の新しいアプローチを開発することを目標にする。
|
研究実績の概要 |
最終年度はこれまでの研究データの集積および成果の報告にむけての補強をおこなった。これまでの研究で、1)cerebellin1が外有毛細胞遠心性終末に発現し主にシナプスの維持に重要なはたらきがあり、2)その欠損マウスは高音域の難聴と加齢性変化の促進を示し、3)音響刺激(TTS)に対する脆弱性があり、4)その機序に遠心性抑制性入力の減弱による外有毛細胞障害と内有毛細胞シナプス病がある、ことが判明した。最終年度は、1)cerebellin1の起源、2)AAVウイルスを用いたcerebellin1遺伝子導入による欠損マウスのTTSのレスキュー、および3)野生型マウスの過剰音響刺激(PTS)に対する表現型の変化の有無を観察した。その結果、1)cerebellin1は遠心性終末の起始核である上オリーブ核を起源とすること、2)AAVによるcerebellin1遺伝子の強制発現によって欠損マウスのTTSは軽減しsynaptopathyを減弱することが明らかとなった。一方、3)野生型マウスでのPTSの減弱効果は確認できなかった。以上の結果から、cerebellin1は内耳保護機構である外有毛細胞遠心性終末の機能維持に不可欠であり、その欠損は音響刺激に対する脆弱性を増加させ、外有毛細胞の過剰な自動能を介したsynaptopathyを促進することが示唆された。これは加齢性難聴や騒音性難聴で想定されている内耳synaptopathyの病態とも矛盾しない。また同疾患に対する将来的なcerebellin1を用いた補充治療や遺伝子治療の可能性を開拓する成果である。現在、査読付き英文雑誌への投稿準備中である。
|