研究課題/領域番号 |
20K09732
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56050:耳鼻咽喉科学関連
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研究機関 | 川崎医科大学 (2022-2023) 岡山大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
假谷 伸 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10274226)
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研究分担者 |
前田 幸英 岡山大学, 大学病院, 講師 (00423327)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 蝸牛 / C57BL/6Jマウス / 加齢性難聴 / リアルタイムRT-PCR / 免疫染色 / トランスクリプトーム / 内耳免疫 / サイトカイン / C57BL/6マウス / 次世代シークエンサー / RNA-seq / DNAマイクロアレイ |
研究開始時の研究の概要 |
超高齢社会における加齢性難聴への対応は重要な社会的・医学的課題である。その発症リスク予測や予防のためには遺伝子レベルでの病態研究が必要である。また加齢性難聴の疫学データによると、その発症には炎症・免疫機能が深く関わる。そこで当研究では、加齢性難聴を呈するマウスの内耳病態に、炎症性サイトカインを始めとするどの様な炎症・免疫関連遺伝子の発現網が関わるか、網羅的遺伝子解析を行う。また新規遺伝子転写産物である長鎖非コードRNAに解析対象をひろげ、加齢性難聴の内耳病態における炎症性サイトカインの転写発現網を解明する。当研究は加齢性難聴の研究と診療に、炎症・免疫機能を着眼点とする大きな波及効果をもたらす。
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研究実績の概要 |
2023年度末までに、これまでに検討済みであった1年齢に加えて6ヵ月齢マウスの聴力を聴性脳幹反応で検討した。雄C57BL6Jマウスは6ヵ月齢ですでに加齢性難聴を呈しており、その程度は1年齢マウスとほぼ同等である。このことより1年齢マウスの蝸牛の加齢性変化は一定以上進行した状態であると言える。次にリアルタイムRT-PCRを用いて免疫関連遺伝子Casp1, IL18r1, IL18rap, IL1B, Card9, Clec4e, Ifit1, Ifit3, Tlr9の発現をそれぞれ若年マウス、3ヵ月齢、6ヵ月齢、9ヵ月齢、12ヵ月齢で検討した。これらの内6ヵ月齢までに有意な発現増加を示した遺伝子にはIfit3(3ヵ月齢で増加), IL1B(3ヵ月齢で増加), IL18rap(6ヵ月齢で増加)があった。これらの3遺伝子は加齢性難聴の発症自体に関係する可能性があり、今後その機能を研究することにより、加齢性難聴の原因となるメカニズムが明らかになるかもしれない。一方Ifit3とIL18rap以外の遺伝子はすべて、9ヵ月齢と12ヵ月齢の間に急激な上昇をしめしていた。聴力等から推察すると9ヵ月齢から12ヵ月齢のマウス蝸牛の加齢プロセスは進行した状態と考えられ、これらの免疫応答はむしろ加齢性変性の結果としてもたらされたものと推測される。また、マウス蝸牛でのマクロファージの局在を特異的マーカー(Iba1)の免疫染色で検討したところでは、1年齢の蝸牛においてマクロファージは外側壁(らせん靭帯・血管状)に存在していた。IL-18 receptor 1やIL-1betaの発現はコルチ器にも認められるので、これらの炎症・免疫反応は多彩な分子メカニズムを介すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加齢性難聴を呈するマウスの蝸牛では、サイトカイン遺伝子をはじめとする、炎症・免疫反応にかかわる遺伝子群の発現が増加していると示したことなどから当研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
加齢にともなう炎症・免疫反応が蝸牛のどの様な構造でみとめられるのか、マクロファージのマーカー(Iba1蛋白)の免疫染色で検討したが、さらなる関連因子の検討により、加齢性難聴の原因にかかわると推測される免疫関連遺伝子が明らかにする。また、その機能を研究することは、加齢性難聴の予防指針などにつながりうる。
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