研究課題/領域番号 |
20K09785
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター (2021-2023) 東京大学 (2020) |
研究代表者 |
村田 博史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, センター病院, 眼科 医師 (80635748)
|
研究分担者 |
朝岡 亮 聖隷クリストファー大学, 看護学研究科, 臨床教授 (00362202)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | ベイズ統計 / 緑内障 / 視野 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに緑内障において、特に少ない回数の視野を用いてVariational Bayes Linear Regression法を超える予測精度を可能にするアルゴリズムはこれまで存在しない。 従ってVariational Bayes Linear Regression法による視野推測を利用して、正確性を損なうことなくSITA standard法よりも高速に視野を計測するアルゴリズムの開発が期待される。今回の研究では、10-2グリッドの視野測定に焦点をあてて研究を行うものとする。
|
研究実績の概要 |
緑内障とは眼圧依存性に視神経乳頭において神経が障害され視野欠損を来す疾患であり、慢性進行性である。ごく特殊な状況を除き、視野欠損は非可逆的である。このような状況から、緑内障治療においては視野の測定、および視野欠損の予測が臨床的に非常に重要となる。 以前本研究における研究者らは変分ベイズ近似を用いたベイズ推定モデルを用いて、視野欠損の進行を予測するアルゴリズムを開発した。そのアルゴリズムにより、視野欠損の進行を線形回帰モデルよりも精度よく予測できることがわかった。 本研究では上記の統計モデルを応用し、正確で速く視野測定を行うアルゴリズムを開発した。当研究者らは24-2グリッドにおける視野測定アルゴリズムを開発し、その再現性、測定時間等がHumphrey Field Analyzer (HFA) のSITA(Swedish Interactive threshold algorithm)-Standard アルゴリズムと同様、もしくは有意に優れていることがわかった。また、その後SITA-Fast相当のアルゴリズムも開発し、同様の結果が得られた。これらのアルゴリズムは現在KOWA社のAP7700に搭載され、実際に臨床現場で使用されるようになった。 また、10-2グリッドにおける測定アルゴリズムについても同様に測定アルゴリズムを作成した。10-2グリッドのアルゴリズムについては当初予定していた性能に達することができなかった。原因としては、10-2グリッドの視野欠損では視野欠損のパターンが多いこと、およびモデルの学習に使用できるデータが少ないことがあげられる。このアルゴリズムについても現在AP7700に搭載され、実際に使用できるようになっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者らは以前、変分ベイズ近似を用いたベイズ推定モデルを活用して、視野欠損の進行を予測するアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは、線形回帰モデルよりも高い精度で視野欠損の進行を予測できることが示された。 さらに、本研究では上記の統計モデルを応用し、正確で迅速な視野測定アルゴリズムを開発した。研究者らは24-2グリッドにおいて視野測定アルゴリズムを構築し、その再現性と測定時間がHumphrey Field Analyzer (HFA) のSITA (Swedish Interactive threshold algorithm)-Standard アルゴリズムと同等または有意に優れていることを確認した。さらに、その後、SITA-Fast相当のアルゴリズムも開発し、同様の結果が得られた。これらのアルゴリズムは現在、KOWA社のAP7700に搭載され、臨床現場で実際に使用されている。 また、10-2グリッドにおける測定アルゴリズムについても同様に取り組んだ。しかし、10-2グリッドの視野欠損では多様なパターンが存在し、さらにモデルの学習に使用できるデータが限られているため、当初予定していた性能には到達できなかった。 上記のように、開発したアルゴリズムが商用の視野検査機器に搭載され、実際に臨床現場で使われるようになったという点については順調に進展いると評価できる。しかしながら、10-2グリッドのアルゴリズムで当初の目標に性能が到達できなかった点を考慮すると、完全に順調に進展したとは言い難いといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
視野欠損の進行予測と高速視野測定のためのアルゴリズムの精度と効率をさらに向上させることは今後の課題である。具体的には10-2グリッドにおける測定アルゴリズムの性能改善が優先事項であると考えられる。 また24-2グリッドとSITA-Fast相当のアルゴリズムの長期的な臨床データに基づく効果の再評価は必要であると考えられる。HFAは世界的に使われており、それを用いた臨床研究も多数ある。本研究のアルゴリズムも長期にわたって評価することが必要であると思われる。 多様な視野欠損パターンを含む大規模なデータセットの構築も並行して進めるべき課題であると感がられる。機械学習モデルのトレーニングに必要なデータ量の増加は著しく、データ量で性能が左右されるといっても過言ではない。したがって、継続してデータ収集を続ける必要があると考えられる。 最新の機械学習技術と統計モデルを用いた新しいアルゴリズムの開発も重要であると思われる。近年ディープラーニングを用いたモデルが広く使われるようになっており、視野検査の測定アルゴリズムにも適用できる可能性は高いと思われる。
|