研究課題
基盤研究(C)
網膜疾患のより正確な病態の把握や新しい加療の確立のために,網膜疾患の循環動態を解明することは重要な研究課題である.しかし,網膜疾患における循環動態そのもの,さらには網膜形態・機能との関連についてはまだ不明な部分が多い.本研究では,正常眼データベースを作成し,様々な網膜疾患における循環動態を詳細に調べ,網膜形態・機能変化との関わりを解明することで,網膜疾患の早期発見,新たな加療方法の開発につなげるための研究基盤を確立する.
本研究では,眼循環が網脈絡膜疾患の発症・進行に対してどのように関与しているのかを調べることを目的として研究を進めてきた.網膜静脈分枝閉塞症に関しては,網膜動静脈交差部における網膜静脈狭窄比(VNR)の違いをOCTにより明らかにした(IOVS, 2023).網膜動静脈交差部の網膜動脈が静脈の上に存在する状態(動脈性オーバークロス)はその反対の静脈が上にある場合よりもVNR がBRVO眼で高く,その僚眼でも高かった.したがって、動脈性オーバークロスのVNRが高いことがBRVO発症の一因である可能性が示唆された.網膜静脈分枝閉塞症に関し,さらにレーザースペックルにおける新しいパラメータを用いて,網膜静脈が閉塞している部位では網膜静脈のみならず網膜動脈の流出抵抗が著しく上昇し,抗血管内皮増殖因子を投与することでその抵抗が軽減することを示した(Ophthalmic Surg Lasers Imaging Retina, 2023).網脈絡膜疾患においては黄斑円孔において,Swept-source OCTを用いて手術後黄斑円孔閉鎖までの時間を調べ,9割以上の症例において術後1日で円孔が閉鎖することを突き止め,患者さんに苦痛であるうつ伏せ姿勢は手術翌日までで良いことを示した(J Clin Med, 2023)その他に多くの成果を論文としてまとめることができ,また,前述の網膜静脈分枝閉塞症や黄斑円孔のみならず,多くの種類の網脈絡膜疾患においても眼循環動態などの変化のデータを蓄積することができた.これらの結果は順次,学会で報告し,論文として投稿する予定である.
2: おおむね順調に進展している
網脈絡膜循環の自己調節機能を明確にすることや,正常眼データベースとの比較による網脈絡膜疾患における循環動態の異常を検出することを目的としている.本年度には,網膜静脈分枝閉塞症に関しては,網膜動静脈交差部における網膜静脈狭窄比の違いをOCTにより明らかにし,その発症メカニズムに関連する因子について明らかにすることができた.さらにレーザースペックルにおける新しいパラメータを用いて,網膜静脈が閉塞している部位では網膜静脈のみならず網膜動脈の流出抵抗が著しく上昇し,抗血管内皮増殖因子を投与することでその抵抗が軽減することを示した黄斑円孔において,Swept-source OCTを用いて手術後黄斑円孔閉鎖までの時間を調べ,9割以上の症例において術後1日で円孔が閉鎖することを突き止め,患者さんに苦痛であるうつ伏せ姿勢は手術翌日までで良いことを示した.さらに他の網膜硝子体疾患についてデータを蓄積することができ当初の目標を達成できているものと考えられる.
糖尿病網膜症における進行程度と網膜血管の血流や血管径との間では,新たなデータを前向きに蓄積でき,網膜静脈分枝閉塞症に関しては,網膜動静脈交差部における状況について多くのデータを収集できたので,それらを論文としてまとめる.正常人眼におけるデータベースを拡張し,それを基にして網膜疾患における血流動態をさらに比較検討し,どのような状態になると疾患が発症するのかを解明していくことで網膜硝子体疾患の早期発見や予後を調べる方法について検討を行う.すなわち,レーザースペックルフルオログラフィーと光干渉断層型アンギオグラフィーを用いて血流動態を同時に調べ,光干渉断層型を用いて形態的変化の検討,視機能などの機能的な変化の検討を行い,それぞれの関連についてデータを解析していく.正常眼の自己調節機能については,眼圧上昇時のみならず,他の不可として酸素投与時や血圧上昇時などにおいても解明し,学会発表を行い論文としてまとめる.動物実験においてもヒトにおいては負荷を行うことができないような自己調節機能についての研究をすすめていく.
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すべて 雑誌論文 (26件) (うち査読あり 26件、 オープンアクセス 22件) 学会発表 (54件) (うち国際学会 14件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
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