研究課題/領域番号 |
20K09838
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
大熊 真人 藤田医科大学, 医学部, 講師 (50329710)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 網膜 / パッチクランプ / 画像解析 / イオンチャネル / D-アミノ酸 / グルタミン酸測定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はD-アミノ酸、特にD-グルタミン蓄積による視覚情報伝達系への影響を調べることを目的とし、この蓄積が確認されている網膜をモデル系として機能解析を行う。実験手法は、マウスおよびイモリ試料での電気生理学的測定(パッチクランプ記録)、およびグルタミン酸可視化法による蛍光測定を主とする。研究期間は4年間とし、この期間内に D-グルタミンの情報伝達系への影響,網膜細胞のどの部分で作用するか,D-アミノ酸の蓄積と除去(代謝)について 解明を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は網膜の神経細胞における情報修飾の効果を調べるため、D-アミノ酸を指標に生理学的な研究を行っている。2022年度は 前年度までの網膜細胞外へのD-グルタミン灌流投与による測定とは異なるアプローチで、細胞内にD-アミノ酸を投与して蓄積による影響を検討する実験を試みた。この結果、細胞内にD-グルタミンが浸透すると電位依存性外向き電流の振幅が増加する傾向が見られた。細胞外投与とは異なる電流への影響になるが、いずれもD-グルタミンの蓄積による抑制的な効果が予想される。さらに、これら アカハライモリ網膜細胞でのD-アミノ酸による影響を、哺乳類であるマウス網膜細胞でも確認すべくパッチクランプ測定を試みた。しかし 網膜細胞のサイズ等の違いによる記録の難しさから、現在のところ再現実験が難航している。その他、本研究から派生して、網膜細胞での電位依存性イオン電流や活動電位の記録法をマウス虹彩由来iPS細胞から誘導した試料や培養バソプレシン細胞に適用し、神経分化や情報伝達物質による修飾効果などの成果を得ることができた(Iris-derived induced pluripotent stem cells that express GFP in all somatic cells of mice and differentiate into functional retinal neurons. Med Mol Morphol, 2022; Long-range axonal projections of transplanted mouse embryonic stem cell-derived hypothalamic neurons into adult mouse brain. PLoS One, 2022)。また、enzyme-linked fluorescent assay法によるグルタミン酸放出の測定で得られた、一部の性ホルモンによるグルタミン酸放出の変化についても引き続き解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も当初の想定よりも当該研究の実験に携わることが難しかった。パッチクランプ法での電気記録については、アカハライモリ網膜細胞で得られたD-グルタミンでの応答修飾効果を、マウス網膜細胞でも再現させる予定だったが、細胞レベルでの電気記録の難しさから、現在のところ想定した結果は得られていない。しかし アカハライモリ網膜細胞においては、前年度までは網膜細胞外に投与していたD-アミノ酸を、パッチピペット内液から細胞内に投与することで、先行研究でのD-アミノ酸の蓄積に近い条件での測定が可能になり、遅延整流性カリウムチャネルへの影響を示唆する記録が得られている。また、パッチクランプ法を、マウス虹彩由来のiPS細胞および培養バソプレシン細胞に応用し、神経細胞への分化や神経伝達物質による応答の修飾に関する記録が得られた。これらの結果は別途報告し、それぞれの分野の国際誌に掲載された。Enzyme-linked fluorescent assayによるグルタミン酸放出の測定で見られた、性ホルモンによる網膜の応答変化については、本結果を中心とした報告を英文誌に投稿した。また、画像解析の部分については、第69回中部日本生理学会にて報告した。しかし、派生した内容での業績は得られているものの、主要な研究が順調に進んでいないため、2022年度も“やや遅れている”と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も網膜での生理学的測定を進める予定だが、最終年度であるため 困難な記録等は極力避け、効率を重視して進めたい。特にパッチクランプ法で難航しているマウス網膜細胞での電気記録については、網膜電図(electroretinogram: ERG)による網膜組織レベルでの記録への変更を予定している。細胞レベルでの種々の薬理作用の詳細は検討しづらくなるが、パッチクランプ法では難しかった 実際の光応答時の薬理作用が測定できるようにもなる。適切な増幅器の追加のみで、他は現有機器での構築が可能なため、これを手始めに効率よく研究を遂行したいと考えている。
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