研究課題/領域番号 |
20K09900
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松田 彩 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (60514312)
|
研究分担者 |
菊地 奈湖 (間石奈湖) 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (00632423)
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (50301891)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 腫瘍溶解ウイルス / 腫瘍血管内皮細胞 / がん / 腫瘍血管 / アデノウイルス / HuR / 口腔がん / ARE-mRNA / 腫瘍血管内皮マーカー |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らはこれまでにARE-mRNAの核外輸送・安定化を利用した腫瘍溶解ウイルスを開発し、実用化に向けて研究を進めている。また腫瘍血管内皮に特異的に発現するマーカーを同定し、腫瘍血管内皮が分泌するタンパクが腫瘍の進展や転移にどのように影響するかを解明してきた。 腫瘍間質ではARE-mRNAが安定化されており、申請者らが開発した腫瘍溶解ウイルスAdΔE4が増殖しやすい環境であることが示唆される。そこで本研究では腫瘍血管内皮関連因子の存在下でAdΔE4の効果が増強されることを示し、より臨床応用の可能性が高い腫瘍溶解ウイルスを開発することを目的として、研究を進めていこうと考えている。
|
研究実績の概要 |
アデノウイルス(Ad)の初期遺伝子のタンパクはARE-mRNAを核外輸送・安定化する機能を有する。申請者らはこの機能がAdの複製に必須であることを見いだし、腫瘍溶解ウイルス(AdΔE4)を開発した。腫瘍血管は腫瘍組織へ栄養や酸素を供給し、がんの進展や転移に重要な役割を果たしていることが知られている。申請者らは腫瘍血管内皮のマーカーを同定し、腫瘍血管内皮が分泌するタンパクが腫瘍の進展や転移にどのように影響するかを解明してきた。腫瘍間質ではARE-mRNAが安定化されており、AdΔE4が増殖しやすい環境であることが予測される。そこで腫瘍血管内皮マーカーの存在下でわれわれの開発した腫瘍溶解ウイルスの効果が増強されるかを検討することとした。 これまでの研究で腫瘍血管が分泌するBiglycan (BGN)が腫瘍溶解ウイルスの効果を増強させることが示唆されている。 そこでBGNが担癌マウスモデルにおいても同様に腫瘍溶解ウイルスの効果を増強するか検討することとした。ヌードマウスの皮下にヒトがん細胞を移植し、形成した腫瘍に腫瘍溶解ウイルスを直接腫瘍内投与した。その結果、コントロールと比較し、腫瘍溶解ウイルスを投与した群では腫瘍のサイズが有意に小さく、腫瘍溶解効果が示された。マウスから腫瘍をサンプリングし、組織免疫染色により、癌細胞におけるアデノウイルスとHuRの発現を検討したところ、アデノウイルスが検出された細胞ではHuRが細胞質に発現している傾向がみられた。また腫瘍血管内皮細胞にBGNの発現がみられ、またHuRが腫瘍血管内皮細胞の細胞質に発現していることが示された。この結果より腫瘍溶解ウイルスは腫瘍細胞および腫瘍血管内皮細胞に効果があることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は腫瘍血管内皮が特異的に分泌するマーカーの存在下において申請者らの開発したARE-mRNAの核外輸送・安定化を利用した腫瘍溶解ウイルスの効果の増強がみられるか検討することである。 申請者らは本研究により腫瘍血管が分泌するBiglycan (BGN)や腫瘍血管内皮細胞で発現が高いことが示されているARE-mRNA X (ARE X)が腫瘍溶解ウイルスの効果を増強させることを示した。またBGN、ARE Xが担癌マウスモデルにおいても同様に腫瘍溶解ウイルスの効果を増強するか検討した。その結果、in vivoにおいても、腫瘍溶解ウイルスの腫瘍溶解効果が示された。マウスからサンプリングした腫瘍組織を用いて、組織解析を行い、アデノウイルスが検出された腫瘍細胞ではHuRが細胞質に発現していることを示した。また腫瘍血管内皮細胞にBGNの発現がみられ、またHuRが腫瘍血管内皮細胞の細胞質に発現していることが示された。この結果より腫瘍溶解ウイルスは腫瘍細胞および腫瘍血管内皮細胞で細胞溶解効果を示すことが示唆された。 以上より本研究はおおむね計画通り進行しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は胆癌マウス血清中の分泌腫瘍血管内皮マーカーの検出を試みる。さらに,担癌マウス血清中における発現がどのように推移していくのか、腫瘍の進展の経過とともに解析する。また同様の解析を癌患者の血清を用いて行う。 さらにヒトのがん組織およびその周囲の非がん部の血管における発現を組織免疫染色により解析し、これまで見出してきた知見がマウスだけではなく,ヒトにもあてはまることを確認する.血管内皮細胞は抗CD31抗体を用いて識別し、さらに候補分子に対する抗体を用いて二重免疫染色もしくはシリアル切片を用いて血管との共局在の有無を解析する。
|