研究課題/領域番号 |
20K09913
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
津田 啓方 日本大学, 歯学部, 准教授 (60325470)
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研究分担者 |
三上 剛和 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80434075)
鳥海 拓 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (40610308)
篠塚 啓二 日本大学, 歯学部, 講師 (30431745)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 三次元培養系 / 短鎖脂肪酸 / 細胞死 / HDAC阻害 / 血管 / 白血球 / 歯肉オルガノイド / 歯肉培養系モデル / オートファジー / 活性酸素種 / オルガノイド / 歯肉 / 炎症 / 自己免疫疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
歯周疾患および同疾患の関連する全身疾患の細胞生物学的・分子的メカニズムを考察する上で、これまでは二次元培養や動物実験を用いた研究がなされてきた。しかしながら、それらによる実験結果はヒト生体と違う結果となる可能性が高い。その上、実際の歯周組織は様々な由来の細胞からなっており、単純すぎる系では細胞や分子の挙動について本当の事がわからない。本研究では、実際の生体歯肉結合組織には存在する毛細血管や白血球等の遊走細胞を導入した歯肉組織と極めて類似性が高いヒト歯肉オルガノイド組織の作成を試み、これまでの申請者等の研究結果がオルガノイド組織ではどのようになるかを検討することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は初代ヒト歯肉上皮細胞を用いた三次元培養系を作成し、その固有層に毛細血管および白血球等の存在する、より生体に近い三次元歯肉組織の作製することが第一の目的である。また、二次元培養系では歯肉上皮細胞に短鎖脂肪酸が作用すると細胞死が起こるが、その細胞死が起こるメカニズムを本研究で作成した三次元培養系とで比較することが第二の目的である。初代ヒト歯肉上皮細胞の単離培養が難しく、本年度は研究に時間をじっくり取りにくい状況でもあったことから、ヒト歯肉上皮細胞株の二次元培養系を用いて、短鎖脂肪酸によるヒト歯肉上皮細胞死誘導メカニズムを探ることとした。短鎖脂肪酸である酪酸およびプロピオン酸はヒト歯肉上皮の細胞死を引き起こすが、酪酸だけでなくプロピオン酸においてもHDAC阻害作用を持つことがわかった。次に、同じくHDAC阻害因子であるSAHAやValproic acidを作用させると、酪酸やプロピオン酸を作用させたときと同様に細胞死を引き起こすことが解った。ヒストンはヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)によってアセチル化され、HDACにより脱アセチル化されることから、ヒト歯肉上皮細胞をHATの阻害作用を持つC646で前処理することで、HATによるアセチル化作用を減弱させ、短鎖脂肪酸を作用させると、ヒストンのアセチル化は減弱し、それに伴い短鎖脂肪酸誘導細胞死も減弱した。短鎖脂肪酸の代わりにSAHAやValproic acidを作用させると、ヒストンH3のアセチル化を減弱させ、それに伴う細胞死も減弱させた。これらの事から、短鎖脂肪酸のHDAC阻害作用がヒト歯肉上皮細胞の細胞死誘導に関与していることが解った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は初代ヒト歯肉上皮細胞を用いた三次元培養体の作製を完成させる予定でいたが、難しい初代細胞の単離および培養がコンスタントにできなかったことに加えて、今年度は研究にじっくり取り組めない出来事が重なったため、三次元培養体は細胞株を用いたもので完成させた。また、短鎖脂肪酸誘導細胞死の誘導メカニズムの詳細は二次元培養系においても良く解っていないが、この度は短鎖脂肪酸のHDAC阻害作用が短鎖脂肪酸誘導細胞死に重要な役割を果たしていることを解明した。また、RNA-sequencing法によるトランススクリプトーム解析の結果から、短鎖脂肪酸誘導細胞死におけるHDAC阻害作用の意義が解ってきた。これにより、初代培養細胞を用いた三次元培養系が完成したときに、二次元培養系での細胞死誘導メカニズムとの比較するポイントを知る事が出来た。これらの事を総合して考えると、研究に遅れが出ているものの、それなりに進んではいる状況であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、ヒト歯肉上皮細胞株を用いた三次元培養系は構築できている。また、その三次元培養系に酪酸を作用させると細胞死が引き起こされ、Dammage-associated molecular patternsが放出されることまで確認済みである(論文受理済み)。この系をベースとして、まずは初代歯肉上皮細胞と歯肉固有層のハイブリッドを完成させる。並行して、固有層のみの系で血管がその中に生成されるかどうかについて調べていく。両者がうまくいった時点で、そのノウハウを合わせた三次元培養体を作成することで、早く進めることのできるようにする。
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