研究課題/領域番号 |
20K09914
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57020:病態系口腔科学関連
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
中島 和久 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90252692)
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研究分担者 |
二藤 彰 鶴見大学, 歯学部, 教授 (00240747)
出野 尚 鶴見大学, 歯学部, 助教 (40435699)
小松 浩一郎 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (60153665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 細胞分化 / 破骨細胞 / ウイルス感染 / 転写 / 翻訳 |
研究開始時の研究の概要 |
骨格の恒常性は遺伝子変異、内分泌系の変動、炎症並びにウイルス感染により破綻して骨 量が増減する。申請者は、アデノウイルスによるcDNA過剰発現が破骨細胞への分化を抑制 することを見出した。骨疾患発症に潜む未知のメカニズムを解明するために、DNAウイル ス感染により、 1, DNA/RNAセンサーがウイルスゲノムからの転写産物を認識して破骨細胞分化を抑制する。 2, 外来遺伝子の翻訳の増加が破骨細胞分化を抑制する。 という2つの可能性を 検証する。骨格の恒常性維持機構の新機軸を切り拓くとともに、その研究結果に基づいて組 織の破壊を抑止する新規薬物の開発基盤の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
破骨細胞は血球系の単球・マクロファージ系の細胞に由来する多核細胞で、特徴的な形態と機能を発揮する細胞群である。この細胞の機能解析には各種ウイルスベクターを用いた遺伝子導入法が用いられてきたが、細胞の機能へのウイルスベクター感染自体とcDNA過剰発現の効果については定かではない。 我々は、培養マウス骨髄細胞の破骨細胞への分化の過程で、アデノウイルスベクターによりcDNAを発現するとTRAP陽性細胞の出現は認められるものの、その融合が極めて抑制されて、多核破骨細胞の形成が低下することを見出した。この抑制はcDNAを含まないベクターでは認められないが、ベクターの発現カセットに導入されたcDNA配列には非依存的であり、GFP、beta-galactosidase、CreリコンビナーゼのいずれのcDNAも抑制した。従って、この抑制作用は転写と翻訳に依存することが予想できる。 ウイルスベクター感染による破骨細胞形成の抑制がサイトカイン合成を経由するのか、感染細胞内での転写と翻訳に依存するのかを区別するために、シグナル強度の高いCOP-GFPを感染させた。するとGFP陽性細胞にのみ破骨細胞形成の抑制が現れた。従って、ウイルスベクター感染による破骨細胞形成の抑制は感染細胞内での転写と翻訳に依存すると考えられる。以上の現象はマウス筋芽細胞株でも認められた。 破骨細胞分化に伴う細胞内RNAセンサー分子の発現量の変化を検討したところ、RANKL刺激での発現量変動は認められなかったが、ウイルス感染により発現量が変動した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)ウイルス感染ではサイトカインの産生を介してcell non-autonomousに細胞分化を抑制する可能性がある。細胞分化抑制作用が感染細胞内での転写と翻訳に依存するのかを区別するために、シグナル強度の高いCOP-GFPを感染させた。するとGFP陽性細胞にのみ破骨細胞形成の抑制が現れた。この抑制は破骨細胞前駆体から破骨細胞への分化の進行に依存しており、RANKL刺激の24時間後にCOP-GFPを感染させると、GFP陽性細胞も破骨細胞を形成した。ウイルスベクター感染による破骨細胞形成の抑制は感染細胞内での転写と翻訳に依存するcell autonomousな現象と考えられる。 2)破骨細胞分化における細胞内RNAセンサー分子群の役割を追求した。破骨細胞分化に伴う細胞内RNAセンサー分子の発現量の変化を検討したところ、RANKL刺激で細胞内核酸センサーのMDA5の発現量変動は認められなかったが、ウイルス感染により発現量が変動した。この発現量の変化はRANKL刺激24時間後のCOP-GFPの感染では認められなかった。同様な機能を有する細胞内核酸センサーRIG-Iや他の関連分子のの発現量の変化を追求している。
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今後の研究の推進方策 |
RANKL 刺激後の Toll-like receptors、RNA センサーRIG-I と MDA5 の発現と細胞内局在を検討する。アデノウイルスベクター感染後はTRAP陽性細胞の出現は認められるものの、その融合が極めて抑制されて、多核破骨細胞の分化が低下することを見出した。ウイルス感染では、ウイルスゲノムあるいはウイルス構成タンパク質がパターン認識受容体の標的となる。アデノウイルスベクターの感染ではエンドソーム内でDNAセンサーToll-like receptor 9がウイルスゲノムを認識して下流の炎症性サイトカイン発現が促進する。しかし、cDNAを含まないアデノウイルスベクターは破骨細胞分化の抑制を示さないことから、TLR9に加えて他のRNA/DNAセンサーが破骨細胞分化制御に関与すると考えられる。実際、細胞質にはウイルスRNAのキャップ構造に特異性を示すRIG-Iや特異性の低いMDA5などのRNAセンサーが存在する。RIG-Iは破骨細胞分化に重要なc-Srcと相互作用すること、並びにMDA5の遺伝子変異は破骨細胞分化を制御することが報告されているが、その機能の全貌は明らかではない。そこで、破骨細胞分化におけるToll-like receptors、RNA センサーRIG-I と MDA5 の発現と細胞内局在を検討する。加えて、アデノウイルスベクター感染前に、RIG-I、MDA5に対するsiRNAを導入して各分子を特異的に阻害したのちに、アデノウイルスベクターを感染させて、筋芽細胞分化と破骨細胞分化に機能しているか検討するため、効率的なsiRNA導入方を検討する。
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