研究課題
基盤研究(C)
顎変形症の治療後、骨折の治療後、さらに悪性腫瘍による顎骨再建後、機能的な咬合を確立するための客観的な診断法、手術手技の選択のため、その礎となるデータを採取する。顎骨への加振の方法として、適切な波種や周波数、振動の伝達方法、関節窩への圧迫方法について検討する。一方で、その測定法について、センサーの設置場所、設置方法、分析手法について検討する。また、再現性についても評価する。生体での臨床応用も見据え、適切なジグの選定評価、測定の条件設定から開始する。
下顎枝分割術を施行後、予定の位置で良好に上下の歯牙が嵌合し、顎関節の症状が無く、機能的に安定した咬合関係を長期維持するためには、骨片固定を行う 際の関節窩に対する下顎頭の位置づけが重要である。ただ、日常の臨床において、これは専ら術者の経験に頼っているのが実情である。よって、この手技の精度向上には客観的で容易に、かつ正確に下顎頭を関節窩内の良好な位置に誘導する基準や手法が望まれる。 MRIで関節円板の位置関係は評価でき、結果、高頻度に前方転位していることが確認できるが、それはあくまでも静的な状況であり、前方に偏位した結果、関節が可動する際に関節窩内での力の伝達様態に対しての情報は不明である。そこで、探傷技術にヒントを得て、分割した下顎枝に振動を与え、関節窩内での構造を探る。今回の研究を遂行するのに際し、加振方法、受振方法、分析方法の3つの観点から評価・検討しなくてはならない。加振は、口腔内での施行を念頭に置き、口腔内で日常につかえる器械を検討した。そこで、歯科用の切削器具の応用を考え、歯科機材のメーカーに適応の可否を相談した。長田電機工業の協力を得て、パイロット研究用の歯科用エンジン、タービン、超音波スケーラー他、振動を発生できる器械を検討した。組織での振動の減衰が比較的抑えられる、低周波の方が望ましいとの過去報告より1000~5000Hz前後の周波数を算出できる装置を考案した。 振動の受振に関しては、頭蓋振動測定の技術を参考にし、類似の計測器械を制作した。予備実験として、口腔内に超音波スケーラーを入れて歯を振動させ、頭部に装着したヘッドセットでその計測の可否を確認した。結果、どの歯に振動を加えても、ヘッドセットで受振できることができ、今回考案した加振・受振のシステムを用いての実験の可能性が確認できた。そして、パイロット研究用ではなく、実際の実験に適したシステムを構築した。
3: やや遅れている
下顎を加振することにより、頭部に伝わった振動を経皮的に受振できることは、前年度の研究で確認できた。今回は、そのパイロット研究ではなく、実際の手術で使えるよう、その操作性、耐久性に軸足をおいて、装置を開発した。加振器に圧縮空気を与えるコンプレッサーの選定、調整、配管の方法、加振装置の操作方法の、工夫なども多角的に行った。コンプレッサーはHAIGE HG-DC880N1、を選定した。加振は長田電機のエアースケーラー「Sirius」を用いて、チップも工夫した。実際の手術でもその操作性を検討した。ただ、コロナ禍で物品の入手が困難であること、また、手術件数の減少もあり、予定通りの施行はできなかった。
令和4年度は、コンプレッサーの選定、発注に時間がかかったが、そのコンプレッサーも届き、実験の環境は整った。令和5年3月末、最終的にそろった計測機器で術中にデータを採取するため、学内の倫理委員会に提出中である。承認が得られ次第、症例を増やしていく予定である。また、前年はコロナ禍のため、情報収集のための打ち合わせ出張や学会参加もできなかったが、研究期間を1年延長し、研究の目処もたっているため、令和5年度は研究データを収集し、結果が出せると考えている。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Advances in Oral and Maxillofacial Surgery
巻: 8 ページ: 100379-100379
10.1016/j.adoms.2022.100379