研究課題/領域番号 |
20K10152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
土屋 博紀 朝日大学, その他部局等, 名誉教授 (30131113)
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研究分担者 |
溝上 真樹 社会医療法人厚生会中部国際医療センター(研究支援センター), がん研究部, 研究員 (10231614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | マルチモーダル鎮痛 / 適用薬 / 薬物選択基準 / 機序的生体膜相互作用 / アセトアミノフェン / カプサイシン / COVID-19罹患後口腔症状 / COVID-19口腔症状 / SARS-CoV-2感染 / 生体膜 / 機序的膜相互作用 / 膜流動性変化 / 特異的 |
研究開始時の研究の概要 |
アセトアミノフェン、NSAIDs(イブプロフェン、他)、選択的COX2阻害薬(コキシブ系)、α2-アゴニスト(デクスメデトミジン)、長時間作用型局所麻酔薬(ブピバカイン)、静脈内投与局所麻酔薬(リドカイン)、NMDA受容体アンタゴニスト(ケタミン)、TRPV1アゴニスト(カプサイシン)、GABA誘導体抗てんかん薬(ガバペンチン、他)、SNRI(デュロキセチン)などのマルチモーダル鎮痛適用薬について、疑似生体膜(リポソーム)との相互作用を蛍光偏光法で解析する。一連の実験から得られる各薬物の機序的膜相互作用に関する基礎的知見に基づき、マルチモーダル鎮痛の薬物選択基準としての可能性を追究する。
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研究実績の概要 |
(1)カプサイシンの膜作用:令和3年度は予備的な実験しか行えなかった研究を、より詳細に実施し直した。神経細胞モデル膜に、カプサイシンあるいはカプサゼピンを作用させた。膜流動性の変化を解析した結果、カプサイシンは濃度依存性の二相性膜作用を示し、低μM濃度で膜流動性を高めた。一方、TRPV1アンタゴニストのカプサゼピンは、膜流動性を低下させた。カプサゼピンを神経細胞モデル膜に前処理すると、カプサイシンの膜作用を用量に依存して抑制した。TRPV1受容体との結合だけでなく、神経細胞膜に対する作用にもカプサゼピンがカプサイシンに競合的に拮抗する機序が想定される。 (2)アセトアミノフェンの膜作用:令和3年度の実験結果を追試するとともに、検体数を増やして膜実験を行った。神経細胞、肝細胞、腎細胞モデル膜に、μM濃度のアセトアミノフェンと対照のフェナセチンを作用させた。膜流動性の変化を解析した結果、両薬物とも臨床濃度で膜流動性を亢進した。フェナセチンと比較した時、アセトアミノフェンの相対的な膜活性は腎毒性と相関するが、鎮痛活性や肝毒性とは相関しなかった。機序的背景として、膜相互作用は腎障害に関与し得るものの、鎮痛効果や肝障害には関与しない可能性が考えられる。 (3)COVID-19罹患後口腔症状:コロナ禍により実験を行うことが困難な期間、本研究に関する情報検索につとめたが、収集した文献にCOVID-19に関連するものが多く含まれていた。また、研究課題を総説にまとめる中(Drug Target Insights, 2020; 14: 34-47.)、生体膜マイクロドメインを標的としたCOVID-19治療の着想を得た。そこで、COVID-19治療学とともに本邦では特化した報告が少ないCOVID-19罹患後口腔症状に関し、Systematic Review/Mata-Analysisを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大が収束しないため、令和2年度から令和4年度前半にかけては、満足すべき実験はほとんど行うことができなかった。また、研究成果の公表を予定していた国際会議や国内学会もほぼ全てが中止となり、一部の学会のみがWeb開催された。したがって、当初の研究計画に比べ、令和4年度の進捗状況は遅れている。そんな中、限られた実験と論文検索に基づき、Research ArticleならびにReview Articleとして研究成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画より研究が大幅に遅れたため、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間の延長を申請した。その結果、補助事業期間の延長が承認されたことから、令和5年度も研究を継続して行い本研究目標の達成を目指す。令和2~3年度に行えなかった実験とともに、令和4年度に計画しながら遅延した実験を下記のように実施する。 マルチモーダル鎮痛適用薬のうち、非ステロイド系抗炎症(NSAIDs)の鎮痛効果と胃腸障害の機序に関し、膜相互作用を検証する。すなわち、イブプロフェン、ジクロフェナク、セレコキシブ、ならびに対照のNSAIDsについて、生体モデル膜に対する作用を解析する。種々のリン脂質とコレステロールを用い、神経細胞膜の脂質組成に準じて神経細胞モデル膜を調製する。また、リン脂質DPPC(1,2-Dipalmitoylphosphatidylcholine)を用い、胃腸粘膜保護作用に関与する管腔粘膜のモデルリ膜を調製する。両リポソーム膜に、低~高μM濃度の種々の薬物を、pH 7.4、pH 4.0、あるいはpH 2.5で作用させた後、蛍光偏光法で膜流動性変化を定量する。そして、NSAIDsの膜活性が薬物濃度、反応pH、膜脂質組成に依存するかどうかを解明する。 神経細胞膜の結果に基づき、COX2選択性と膜作用との関連性を追究する。COX2が生体膜マイクロドメインに局在することに着目し、リン脂質、スフィンゴミエリン、コレステロールを用いてラフトモデル膜を調製する。これに、COX2阻害活性が異なるNSAIDsを作用させ、COX2選択性と膜脂質ラフト相互作用との関係を考察する。
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