研究課題/領域番号 |
20K10412
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58010:医療管理学および医療系社会学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 智彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90553694)
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研究分担者 |
田崎 哲典 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80285626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 輸血副作用 / 輸血関連循環過負荷 / アクティブサーベイランス / 輸血教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、①輸血関連死亡の主要因である輸血関連循環過負荷(TACO)の真の発症率を明らかにするとともに、②その予防に向けた輸血教育教材を作成してその教育効果を検証する。①のために、電子カルテシステムを利用した国内初の積極的な輸血副作用監視(アクティブサーベイランス)を後方視的かつ前方視的に単施設で行う。②では、実例に基づく輸血教育用教材を開発しその教育効果を検証する。本研究での同サーベイランス体制と有効な教材の確立は、国内全体の輸血副作用の低減と血液製剤の適正使用と有効利用の強化に寄与すると考えられる。
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研究実績の概要 |
〇輸血関連循環過負荷(TACO)のactive surveillanceについて:前年度に引き続き、後方視的調査期間を当初の予定から延長して、計4,851症例(実患者数)を分析対象としている。その中でTACO発症を疑わせる「呼吸困難」が21件、「血圧低下」が27件あった。4,851例のうち、輸血後24時間以内に「①胸部X線撮影」を受けた者が498名、「②酸素飽和度(SpO2)90%以下」を示した者が201名、「動脈血液ガス分析」を受けた者が96名であった。①~③の各検査・測定(とその組み合わせ)の実施率が実際のTACO発症例(疑い例含む)とそれ以外でどの程度異なるのかを把握するために、全例の各輸血実施日から1週間以内の電子カルテ記録を個別に引き続き精査している。カルテ記録中の「呼吸」「困難」「呼吸苦」「SpO2」「酸素」といったキーワードの抽出から、TACO疑い例でのカルテ記録の特徴の分析を試みているが、まだ至適条件の確立には至っておらず、様々な検索条件で再検討予定である。 〇TACOに関する輸血教育用教材の作成について:これまでのTACO疑い例の臨床データをもとに、輸血副反応に関する教育スライド等を作成し、初期研修医対象の輸血研修において講義を行った。さらに、当大学の本院と3つの分院で共通の「輸血療法の基礎」に関する教育スライドを、各病院輸血部スタッフの合議のもとで作成した。今後、教職員の基礎教育(e-learning)に用いて、その内容を評価する予定である。 〇その他:TACO発症の抑制につながる「血液製剤の適正使用」について、各学術誌でコメントを発表している(Lancet 2024, 2023, JAMA Pediatr. 2023, JAMA 2023)。血漿製剤・血漿分画製剤の適正使用に関する学会発表(教育講演)、輸血副反応に関する学会発表も行っている(教育講演)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「TACOのactive surveillance」に関する後方視的調査の遅れについて、分析対象を2021年までに拡大したこと、4000例を超える症例の中からTACO疑いに相当する症例を各電子カルテ記録から個別に抽出する必要があることが挙げられる。当初予定していた、タイムリーなTACO発症予防に向けたprospective studyの実施可能性が極めて低いため、より多い症例数での後方視的調査の完遂を目指して分析を進めている。電子カルテ記録中のTACO発症を疑わせるキーワードについても、個別のカルテ分析を通して、当初の予定とは異なるキーワードもあり、検索条件の再検討に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
「TACOのactive surveillance」について、対象症例の電子カルテ記録のレビューからTACO疑い例数を確定した上で、電子カルテ上の複数条件による後方視的サーベイランスの実施可能性を検討していく。特に、疑診例の扱い、および前方視的にTACO疑い例を抽出するための至適条件について検証していく。また、調査期間内のTACO疑い例の事例分析をさらに進めていき、約30例に達した時点でTACO発症リスク分析(可能ならスコアリング化)を行っていく。「TACOに関する輸血教育用教材の作成」については、TACO疑い例に関する教育的スライドだけでなく、当大学の4病院(本院と3つの分院)の教職員向けに輸血療法の基礎に関する教育的スライドを各病院の輸血部スタッフの合議のもとで作成しており、その教材評価を順次進めていく予定である。
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