研究課題
基盤研究(C)
令和2年度に長崎県壱岐市の特定健診を受診した受験者のうち、過去に受診歴があり、ISSA-CKD研究(同市の特定健診データを用いた疫学研究)に登録されている受験者の余剰血清を採取し、液体クロマトグラフィー・タンデムMS(TSQ Vantage)システム(Jo-Watanabe A et al. Aging Cell, 2014)を用いて複数のAGEsを測定する。腎機能の推移、尿蛋白の有無などのパラメータとAGEsの関係を明らかにする。これらの結果より、CKDの発症・伸展における有用なバイオマーカーを同定し、将来のCKD発症・重症化予防につなげ、医療費を削減や健康寿命を延伸に寄与したい。
代表的な最終糖化産物(AGEs)であるペントシジン(Pent)に対する、早期腎障害と高血糖の影響を検討した。対象は、2019年2月から2022年11月までの間に、福岡県福岡市城南区ならびに同県那珂川市で健康診断を受診した40歳以上の男女のうち、福岡動脈硬化疫学研究 (FESTA: Fukuoka Epidemiological STudy of Atherosclerosis)への参加同意が得られた825名 (平均年齢64.0±9.4歳、男性379名(45.9%))。保存しておいた血清を用いて血清Pent濃度を測定し、腎機能による違いを検討した。また、血清Pent濃度が最も高値の四分位群 (高値群) とそれ以外 (低値群) の二群に分け、それぞれの患者背景および血液・尿検査所見を比較するとともに、多重ロジスティック解析を用いて血清Pent高値に影響を与える因子を検討した。【結果】血清Pent濃度の中央値 (四分位範囲) は、eGFR>90で16.3 (12.7-20.2)ng/dL、eGFR60-89で17.9 (14.3-21.9)ng/mL、 eGFR30-59で20.6 (16.0-25.6)ng/dLと、eGFRの低下に伴って有意に上昇した(p for trend <0.001、eGFRの単位はmL/min/1.73m2)。多重ロディスティック解析を行ったところ、有意にPent濃度を上げる因子として年齢、eGFR低下が検出された。オッズ比 (95%信頼区間 (CI)) はそれぞれ、1.32 (1.10-1.58)と1.58 (1.31-1.91)であった。一方、HbA1cは有意な因子とはならなかった。以上より、糸球体濾過量の低下は、早期からHbA1c高値よりも血清Pent濃度を上昇させる影響が大きいと考えられる。
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Hypertens Res.
巻: 46 号: 5 ページ: 1122-1131
10.1038/s41440-023-01175-4
Clinical and Experimental Nephrology
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10.1007/s10157-021-02042-7