研究課題/領域番号 |
20K10496
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
玉腰 浩司 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (30262900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 出生時体重 / 糖尿病 / 再現性 / DNAメチル化 / 生活習慣病 / 胎内環境 / エピジェネティクス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、経時的なデータを用いて、出生時体重を胎内環境の指標としてその後の疾患発症との関連について生活習慣、DNAのメチル化等様々な視点から分析する。DOHaDの病態、即ち「発達期の環境の変化に対応した不可逆的な反応が生じると、発達が完了した時期の環境と合えば健康な生活ができ、そうでなければ成人期の様々な疾患の源になる」を疫学的に解明することは、母子から小児、成人、老年と続く生涯保健の向上に寄与する。
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研究実績の概要 |
2002年から「生活習慣病とそれに続く心血管事故の予防を目的としたコホート研究」を開始し、2007年、2013年、2018年に新規対象者追加しながら生活習慣アンケートと健診データを蓄積してきた。本研究の対象者は2018年までの糖尿病発症の有無と年齢が各回のアンケートによって把握できている。2023年度はこのデータを使って、出生時体重と糖尿病発症との関連をコックス比例ハザードモデルと使って分析した。対象は男性5864名、女性2293名であった。出生時体重別の糖尿病発症率は、2500g未満群では観察期間33813人年中95名、2500g以上3000g未満群では197384人年中494名、3000g以上4000g未満群では182315人年中338名、4000g以上群では5752人年中12名であった。3000g以上4000g未満群を基準としたハザード比(95%信頼区間)は、2500g未満群は1.36(1.09, 1.71)、2500g以上3000g未満群は1.15(1.00, 1.32)、4000g以上群は1.40(0.79, 2.48)であった。性と父親の糖尿病歴と母親の糖尿病歴で調整すると、3000g以上4000g未満群を基準としたハザード比(95%信頼区間)は、2500g未満群は1.30(1.03, 1.63)、2500g以上3000g未満群は1.16(1.01, 1.33)、4000g以上群は1.21(0.68, 1.39)であった。最終モデルにおいて、性別との関連は、男性を基準とした女性のハザード比は0.60(0.52, 0.74)であった。また、父親の家族歴に関しては、無しを基準とした有りのハザード比は1.72(1.45, 2.04)、母親の家族歴に関しては、無しを基準とした有りのハザード比は2.42(2.00, 2.92)であった。 以上の結果より、自己申告ながら出生時から糖尿病発症までを追跡したと想定したデータセットにより、性別、糖尿病の家族歴にかかわらず出生時体重が低いことは糖尿病の発症するリスクが高いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度と2021年度は、保存したDNAを使って、生活習慣病に関連する遺伝子のメチル化と出生時体重との関連を検討し、出生時体重が2500グラム未満の成人(35歳から59歳)では、ATP-binding cassette protein G1(ABCG1)遺伝子のメチル化率が高い傾向があることを明らかにした。一方、suppressor of cytokine signaling 3(SOCS3)遺伝子のメチル化率は出生時体重との間に有意な関連はみられなかった。2022年度は、繰り返し行ったアンケート調査結果を使って出生時体重の回答に関する再現性の検討を実施し、高い再現性があることを明らかにした。2023年度は、2002年、2007年、20013年、2018年に実施した生活習慣アンケートと生化学データを統合したデータセットを用いて、自己申告ながら出生時から糖尿病発症までを追跡したと想定したデータセットにより、性別、糖尿病の家族歴にかかわらず出生時体重が低いことは糖尿病の発症するリスクが高いことを明らかにした。DOHaD仮説に基づく生活習慣病の疫学的病態解明に必要な研究成果は、順調に蓄積されている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年からは、2002年、2007年、20013年の経時データとしてBody mass index (BMI)、空腹時血糖、中性脂肪、高密度リポプロテインがあり、出生時体重とこれらのデータとの関連を混合モデルと用いて分析する。特に、出生時体重がBMIの変化にどのような影響を及ぼし、その影響がさらに空腹時血糖、中性脂肪、高密度リポプロテインの変化に影響を与えるかを検討する。また、2023年度に明らかにした性別、糖尿病の家族歴にかかわらず出生時体重が低いことは糖尿病の発症リスクが高いという関連が、生後成人期の肥満、喫煙、飲酒によってどのような影響を受けるか検討していく。具体的には、出生時体重を2500g未満群、2500g以上3000g未満群、3000g以上4000g未満群、4000g以上群の4群に分け、各対象者の2007年、2013年、2018年の年齢を算出し、さらに各年齢でのBMIを用いて、出生時体重を含めた出生時からのBMIの経時データセットを作成する。その後、このデータセットを用いて、出生時体重の成人期BMIの変化に対する影響、さらには出生時体重に成人期BMIの変化を考慮して糖尿病発症との関連を明らかにする。喫煙、飲酒についても同様に分析する。
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