研究課題/領域番号 |
20K10507
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58030:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含まない
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
江口 依里 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (60635118)
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研究分担者 |
中野 裕紀 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (10736721)
大平 哲也 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50448031)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 東日本大震災 / 避難 / 生活習慣病 / 疫学研究 / 飲酒 / 高血圧 / 脂質異常 / メタボリックシンドローム / 長期動向 / リスク因子 / 長期的動向 / 循環器疾患認知症危険因子 / 認知症 / リスク要因の動向 / 予防的介入 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、福島県の日本人男女で震災前後の10年間に特定健診を受診した地域住民約40万人を対象に、福島県の東日本大震災の避難者と非避難者における認知症発症とそのリスク要因についてその動向を明らかにし、そのうちの一部の避難地区住民については詳細健診を実施し、さらに認知症発症予防のためのポジティブな要因の複合的介入の認知症予防効果を検証する。
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研究実績の概要 |
本年度は認知症や認知機能のリスクである、メタボリックシンドローム、脂質異常、高血圧について東日本大震災の避難者への影響を検討した3本の論文を国際誌に発表した。内容を以下に示す。東日本大震災前後の福島県におけるメタボリックシンドロームの有病率の長期的な推移を検討した。ポアソン回帰モデルを用いて、各地域、年度における有病率を性別・年齢層別に求め、震災前後および地域間で比較した。有病率は期間を通じて有意に増加し、特に避難地域において顕著であった。避難地域の性年齢調整有病率は、2010年の16.2%から2012年の19.5%(有病率比=1.21)、2017年の20.4%へと有意に増加した。その他の地域では、沿岸部が17.9%(2017年)と最も高い増加率を示し、次いで中部地域が16.5%(2017年)、山間部が18.3%(2016年)であった。これらの増加率は、特に男性や高齢者において高かった。次に、同様の対象に、避難生活が脂質異常症の有病率に及ぼす影響を検討した。脂質異常症の有病率は県全体で増加し、特に避難区域では2011年度以降に急激に増加した。避難地域で脂質異常症に罹患している性・年齢調整オッズ比(95%信頼区間)は、2008~2010年度には0.95(0.93~0.97)だったが、2012~2014年度には1.13(1.11~1.16)、2015~2017年度には1.12(1.09~1.14)と増加した。さらに、同対象に、過剰飲酒と高血圧との関連について検討した。女性の過度の飲酒者の割合は震災後に増加し、過度の飲酒と高血圧発症との関連は、避難地域の女性でより強かった。性年齢調整HRは、震災前後の過度の飲酒がない場合と比較して、震災前の過度の飲酒で1.41、震災後の過度の飲酒で2.34、震災前後両方飲酒で3.98となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回は認知症や循環器疾患のリスク因子の東日本大震災後の動向や避難の影響を確認した。その内容をそれぞれ論文化できたことは大きな成果であったと考えられる。詳細なリスク要因や動向と認知症との関連については、データ受け取り遅れもありまだ発表できていない。また、コロナ禍のために、介入研究についても実施に至らなかった。引き続き今後も認知症への大規模災害の影響とその予防因子について明らかにしていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、NDBを用いた解析の論文化をさらに進める予定である。認知症、循環器疾患には、様々な生活習慣がリスク因子として影響を与えていると考えられており、睡眠、運動、栄養などのリスク因子の震災前後のトレンドやそれらが生活習慣病や循環器疾患、認知症に与える影響について縦断的に検討する。また、詳細なリスク要因や動向と認知症との関連について、被災地の一部の地域で検討する研究については、昨年から実施しており、今後成果発表を実施していきたいと考えている。さらに、コロナ禍が終わり、今年度から介入研究を実施する予定である。生活習慣や生活習慣病とリスク因子との関連、また、それらを予防する要因については、今後国際比較も実施していきたいと考えている。
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