研究課題/領域番号 |
20K10557
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58040:法医学関連
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
笹尾 亜子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80284751)
|
研究分担者 |
山口 佳宏 熊本大学, 環境安全センター, 准教授 (10363524)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 薬毒物スクリーニング / 免疫学的検出 / 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 / 抗体ファージライブラリー / 向精神薬 / 法医中毒学 / 組換え抗体 / 免疫学的検出法 / 薬物スクリーニング / 非ベンゾジアゼピン系 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(ゾピクロン、ゾルピデム)を標的とした抗体ファージライブラリーの構築を行ってその検出法を開発する事を目的とする。具体的には、これら薬物に反応性の高い抗体ファージライブラリーを作製、構築したライブラリーを用いて薬物に親和性の高いファージを選別、その抗体遺伝子を解析する。抗体タンパク質発現ベクターを作製し、調製した抗体の特性を調べた上で薬物検出法を構築するものである。
|
研究実績の概要 |
法医解剖や検屍・検案時の死因診断において、その死因に薬物が関与したかを確認する事は極めて重要である。現在、その検査手段として免疫学的検出法を用いた簡易薬物検査キットが幅広く利用されている。免疫学的検出法は、簡便に対象薬物を検出できるため急を要する現場では最適なスクリーニング法である。しかし、検査対象とする薬物は限定的であり、また国内の中毒発生状況との乖離が年々進んでいる現状がある。これは免疫学的検出法に必須材料となる薬物に対する抗体作製の難しさが一因となっている。 この現状に対して我々は、新規薬物に対する免疫学的簡易検出法を組換え抗体技術を利用することで迅速に提供するための体制作りを行ってきた。特に、抗体検索に有用と考えられる抗体ファージライブラリーの構築は、薬物検出法の構築までの迅速化に大いに貢献できると考えている。そこで我々は、近年処方が拡大している非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を標的とした抗体ファージライブラリーの構築とその検出法の開発を本研究課題の目的とした。 本年度は、昨年度までに調製した非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ザレプロンに対する組換え抗体についてザレプロンやその代謝物5-オキソザレプロンとの反応性を調べた。(進捗1:一本鎖抗体の調製とその特性)。次にQuenchbody(Q-body)を作製してザレプロンとの反応性等を調べた。(進捗2:Q-bodyの特性)。今後は、この組換え抗体のザレプロン結合能の向上や代謝物との結合能向上を目指していくことを予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、上記概要に述べたように非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ザレプロンに対するQ-body前駆体である一本鎖抗体を調製して特性を調べた。さらに、Q-bodyを作製して抗原反応性などについて以下のように検討した。 1)一本鎖抗体の調製とその特性:昨年度の検討において、抗原結合性の高い抗体遺伝子を用いて作製したベクターで抗体産生大腸菌2種を形質転換しいた。目的タンパク質を大量発現させ、その破砕上清から粗タンパク質を回収した。アフィニティクロマトグラフィーで精製してQ-body前駆体である一本鎖抗体(MRZ13、MRZ45)を得た。各抗体について、酵素抗体間接法(ELISA)でザレプロンや代謝物5-オキソザレプロンとの結合活性を調べた。MRZ13、MRZ45は異なる結合活性を示し、ザレプロンではMRZ13に比べてMRZ45がやや強い結合性を示した(50%阻害濃度:3、1μM)。また、5-オキソザレプロンとの反応性はいずれも低かった(50%阻害濃度:>100μM)。 2)Q-bodyの特性:各一本鎖抗体を常法に従って蛍光標識してQ-bodyを作製し、蛍光分光光度法にて抗原添加による蛍光強度変化を調べた。Q-bodyはザレプロン添加で何れも1分以内に蛍光上昇が認められた。また、抗原濃度依存的に蛍光上昇し1.5μMザレプロンで約4倍の蛍光上昇率を示した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの結果では、MRZ13、MRZ45はザレプロン代謝物との反応性がやや弱いことが示されている。そのため、ザレプロンや代謝物との結合能を上げるようにファージライブラリーから変異体を検索することを予定している。なお、Q-bodyとしての蛍光応答性は高い結果が示されており、検出法としてはこの方法を採用することを予定している。想定している結合能を持つ変異体が選別されたのちに、交差反応性等の特性も併せて検討していく。
|