研究課題/領域番号 |
20K10741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58060:臨床看護学関連
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研究機関 | 日本赤十字看護大学 |
研究代表者 |
吉田 みつ子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (80308288)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 妊娠期がん / 育児支援 / がんサバイバー / 親役割 / がんサバイバーシップ / 支援 / ナラティヴ / 助産ケア / 支援プロセス / 助産師 / 意思決定 |
研究開始時の研究の概要 |
2006年にがん対策基本法が制定されてから現在までの15年間、小児・AYA世代にがんに罹患した人々の妊孕性温存については認知度が高まり、相談支援体制が整備されるようになってきた。しかし、妊娠と同時にがんと診断される妊娠期がんに対する注目度は低い。 本研究は、女性とその家族が、がん治療と出産に関する意思決定、出産、育児とがん治療に関する体験、および彼らに関わる専門職者の体験を明らかにし、妊娠期がんと診断された女性とその家族に対する支援プロセスの構造を明らかにすることを目的とする。将来的に増加が予測される妊娠期がん医療に対する課題を明確化し、包括的な支援対策を検討することに貢献すると考える。
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研究実績の概要 |
≪助産師、看護師の妊娠期がんの女性と家族への実践≫1)助産師7名を対象としたインタビューの結果、15 エピソードのテーマ及びサブテーマ、横断的比較検討により4つのテーマ(妊娠の継続/中断,がん治療方法の選択、授乳に関して女性の選択を後押する.妊娠・出産に伴いがん治療を受ける(受けない)女性にお母さんとして関わる.がん治療と妊娠・出産・育児を連続したスパンで捉え家族全体にもたらす影響を捉えながら対応する.複数の診療科や職種を超えて同じ方向を向く中で女性と家族に関わる.が明らかになった。2)看護師・助産師5名に対するインタビューの結果、7つのエピソードから4つの実践(女性と夫に治療と育児が並行して進むことをイメージできるように関わり、周囲からサポートを得る必要性があることを理解してもらう.妊娠中から女性と地域の保健師や助産師をつなぎ、バトンタッチする.日頃から産科医、がん治療医、外来看護師、助産師、MSWとコミュニケーションをとり、いち早く女性と家族の情報をキャッチする.抗がん剤治療の開始に伴い、乳房ケアについて助産師、看護師が協働して関わる.)が明らかになった。 ≪妊娠期がんの治療を受け育児をする女性の経験≫ 妊娠期がんの治療を受け、出産、育児の経験をもつ女性2名に対するインタビュー調査を実施し、データ分析継続中であり、2024年度に学会誌に投稿予定である。 ≪国内外で妊娠期がんの診療実績を有する施設、NPO団体等へのヒアリング調査≫ 沖縄県妊娠期がん診療ネットワーク協議会にヒアリング調査を行い、沖縄県での妊娠期がんの女性と家族の支援を開始した背景や、支援ネットワークの課題、現在の活用状況について聞き取りを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
妊娠期がん当事者である女性のインタビューの分析に時間を要し、また国内外で妊娠期がんの診療実績を有する施設、NPO団体等へのヒアリング調査先の検索が効果的に行えなかったためヒアリング調査が予定通り進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
海外のNPO団体についてインターネット情報を通しての検索、国内外の学会等での発表演題、発表者の検索を進め、妊娠期がんの支援体制の現状と課題に関する情報収集を進める。妊娠期がん当事者である女性のインタビューデータは、大部分の分析が進んでおり、学会誌に投稿予定である。令和6年度は、これまでの結果を統合し、妊娠期がんと診断された女性と家族に対する支援に求められるケアの構造を明らかにする。現在、以下の方向性で検討中である。 1)妊娠期にがんと診断され、妊娠、出産、治療、育児を並行して行わなければならない女性と家族は、これまでに経験したことのない妊娠・出産に、がんの治療が重なり、出産後の育児について具体的に想像し、準備するのは容易なことではない。出産後の育児と治療のイメージがつくように具体的に説明し、それによって当事者自身が周囲からのサポートを得る必要性を理解し、自覚するように促す看護実践は、長期に及ぶ治療と育児について、当事者自らが支援を求めながら行っていくための基盤となるものと考えられる。 2)妊娠期がんは施設によっては稀なケースであるため、症例ごとに、産科がん治療科、新生児科等の間で連携体制自体をつくりながら、女性と家族のケアを進めていく必要がある。看護職が診療科や部を超えて医師やMSWとのコミュニケーションを図り、女性と家族の情報を把握し、職種間、部署間の調整を図ることによって、時間的なリミットのある妊娠や出産という経過の中で、タイミングを逃すことなく関わることにつながると考えられる。 3)女性と家族が出産後にがん治療を受け、子育てしながら生活していくには、助産師による断乳や母乳育児継続に伴う乳房ケア、保健師による出産後の育児訪問、保育園入園に関する相談、行政のサポートに関する情報提供、女性と家族が地域の看護職と信頼関係を構築できるよう妊娠中から関わることが重要である。
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