研究課題/領域番号 |
20K10860
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58070:生涯発達看護学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 朝美 横浜市立大学, 医学部, 教授 (50384889)
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研究分担者 |
下道 知世乃 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30845962)
藤塚 真希 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80805888)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 重症心身障害児 / コミュニケーション / 支援 / アドバンス・ケア・プランニング / AI技術 / 重症心身障害児者 / 医療的ケア / 在宅支援 / モデル開発 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、常に医療を要しEnd of Life にある在宅重症心身障害児が、家族や看護師などの支援者と一緒にケア計画を立て実践する「アドバンス・ケア・ プランニング(、ACP)」支援モデルを開発することである。 そのために「重症児コミュニケーションモデル」 をベースにした「アクションリサーチ」を訪問看護や日中一時支援の場等で実施し、重症児の意思を反映できるACP支援モデルを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、常に医療を要しEnd of Life にある在宅重症心身障害児(以下、重症児)が、家族や看護師などの支援者と一緒にケア計画を立て実践する「アドバンス・ケア・ プランニング(以下、ACP)」支援モデルを開発することである。本研究で明らかにするACP支援モデルとは、子ども(重症児)が主体となり、子ども自身の将来や医療を、ご家族や近しい人・医療・ケアチームが繰り返し話し合い、子ども主体の意思決定を支援するものである。 本研究では、このACPモデルを重症児の意思をケアを通して把握する「重症児コミュニケーションモデル」をもとに、通所施設でアクションリサーチ法により開発しようとした。しかし、2020年度から続くCovid-19感染拡大により対面機会の減少により関係構築が難しく、今後もコミュニケーションや直接援助機会への影響が続くことを鑑み、コミュニケーション支援の在り方として、重症児の意思をAIにより可視化する「感情状態推定」技術を開発することで関係構築を促進し、ACP支援を試みることに目的を変更した。 そこで、本研究では、まず、重症児の意思をAIにより可視化する「感情状態推定」技術を開発し、ACP支援を試みることを工学系研究者とチームを編成し追究することにした。 今年度は①-③を実施した。①AIによる「感情状態推定」技術開発にあたり、工学系AI技術研究者とのチームを編成した。②4-10月に、研究計画書の作成及び研究倫理審査承認、共同研究契約の締結、知財戦略の検討を行った。③感染状況が拡大しているため、許可の得られた1事例につき検討を行い、AI技術による重症児の感情状態推定のためのモデリング及び研究手法を検討した。その結果1事例の「快」のモデリングについて、高精度な検出結果が得られ、2023年看護情報系学会学術集会に発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ACP支援モデル開発にあたり目的変更を行ったが、以下の通り順調に進展した。重症児の意思をAIにより可視化する「感情状態推定」技術を開発し、ACP支援について工学系研究者とチームを編成し追究に挑むこととし、本年度は、重症児の意思をAIにより可視化する「感情状態推定」技術開発に取り組んだ。 以下①-④が本年度の実施概要である。①重症児の意思をAI技術で可視化する技術開発のための、研究計画及び研究倫理審査の承認、大学間共同研究計画の締結を行った。②Covid-19感染症感染拡大(第8波)により、対象施設での調査許可に時間を要したため、1事例のモデル検討を実施した。③重要な意思クラスとその特徴量の把握、④意思・特徴量把握のための母親のアノテーション力向上にむけた技術検討を実施した。 得られた結果は、以下の2点である。 ①AI技術開発では教師データを作成することが重要である。さらに、少量のデータからモデル開発するためには、的確な母親のアノテーションによる特徴量の把握が要件となる。しかし、母親にとって日常的な重症児の意思の把握は無意識化された「暗黙知」であるため、その言語化が難しいという状況があった。そこで、アノテーションのための技法開発をサインの構造化インタビューから見出した。このプロセスは、今後、無理なくデータを蓄積するシステムの構築にも貢献することが示唆され、学会発表を予定している。 ②AI技術を用いて画像から意思を可視化するために、アクションユニットを使用して顔面筋の動きを捉えた感情推定のモデリングを検討した。この結果「快」感情の検出モデルを抽出した。2023年度学術集会にて発表予定である。今年度は感染状況により1事例の画像から基本技術開発へのモデルの一部を検討したが、次年度は、他の重症児への応用や、意思クラスに関する感情推定技術開発を重ねる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、Covid-19の感染拡大により対面でのコミュニケーションや直接援助機会が減少する中でのコミュニケーション支援の在り方やACP支援モデル開発を再考し、重症児の意思をAIにより可視化する「感情状態推定」技術を開発し、コミュニケーション支援AI技術をACP支援に活用する試みに目的を変更した。 昨年度末より、工学系研究者と共同研究チームを編成、本年度は、重症児の意思をAIにより可視化する「感情状態推定」技術を開発、基本モデルに関する結果を得ることができた。今後は「感情推定」の意思クラスを増やし感情推定モデルを抽出・検証するとともに、他事例の検討にも着手する。また、「感情推定」モデルを構築した事例について、看護場面での活用を試みる必要がある。その準備要件として、AIシステムとして成長が可能なデータ収集方法の検討・開発が必要であり、研究計画の拡充と組織拡大を踏まえた検討が必要である。 そこで次年度は、今後AI技術を用いたコミュニケーション支援を基にACPモデルを検討するための基礎的研究として、感情状態の推定に関する基本技術開発と、AI開発に必要な要件である、持続的データ収集および運用法の確立として、特にアノテーション方法確立のための要件整理を実施する。 今後は、これらの検討をベースに、AI技術を成長させるデータ収集システムの構築と重症児の意思を可視化する「感情推定」技術開発を進め、ACP支援モデル開発と検証を段階的に目指す研究計画及び研究組織の検討に繋げる必要がある。
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