研究課題/領域番号 |
20K11006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
久保田 正和 大阪医科薬科大学, 看護学部, 教授 (80452267)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 認知リハビリテーション / 脳活動計測装置 / かかわり |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの研究結果から、タスクの違いによって個々に脳血流量が異なること、看護師の介入により脳血流値の変動が拡大することが徐々に分かってきた。現在、多くの施設では、一律に認知リハビリテーションプログラムが組まれているケースや、他者との交流無しに一人でタスクをこなす状況が見られ、個々に合った適切なプログラムの選択や関わりが行われているとは言い難い。本研究では個々に合った認知リハビリテーションを探索、実践し、その効果を可視化、検証する。また、認知症の方に対する適切な看護学的関わりについても同様に、表情や行動等の観察記録と脳血流量を照合させ、「良い関わり」とされる根拠を示す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまでに得られた認知リハビリテーション実施時のfNIRSによる脳血流量データから①個々に合った認知リハビリテーションタスクを選択し、②タスクの実行時に職員がかかわりを持つことを実践した上で、その関わりの効果を客観的に脳血流量を用いて検証するものである。 2023年度は、2022年度の遠隔環境下における看護師のかかわりが認知リハビリテーションの効果に与える影響についての成果を論文発表した。成果の内容は、遠隔環境下で看護師がかかわりながらタスクを実施した時の脳血流量の変動によりその効果を評価した。fNIRSより得られた脳血流量値から中央値とInterquartile Range(IQR)を算出した結果、貼り絵を行った13名のうち左側の脳血流の増幅が見られたのが5名、右側の増幅が見られたのが11名であった。また、クロスワードパズルでは左側の増幅が見られたのが8名、右側の増幅がみられたのが8名であった。この結果から、遠隔環境下においても看護師のかかわりは認知リハビリテーションの効果を高める可能性が示唆された。 しかしながら、上記の研究はコロナ禍により急遽設定したものである。2023年に入り、高齢者施設では通常のデイサービスの形態に戻り始めたため、本研究の目的にある③これまでの個別のリハビリテーションではなく、新たに集団を対象とした認知リハビリテーションの効果を測ること、さらには④この実践が実現可能であるのか、また効率的に実践するためにはどのような工夫が必要なのかについて研究を開始した。デイサービスにおいて、14名の高齢者を対象に集団リハビリテーションのプログラムを職員の介入により行い、現在脳血流量のデータを分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度のコロナ禍により、計画通りの研究を進めることが出来なかったが、コロナ禍であることを逆手に取って、遠隔環境下での認知リハビリテーションにおける関わりの効果を検証し、有効な結果を得ることが出来た。2023年度はその成果を学術論文として認知症ケア学会誌に投稿した。遠隔環境下であっても、やはり他者との関わりを持ちながら認知リハビリテーションを行うことがその効果を高める一助となることが分かり、本来の目的である対象者と職員との関わり、対象者同士の関わりがポイントになるのではないかという示唆を得ることもできた。 2023年度は上記の研究成果を論文発表すると同時に、集団での認知リハビリテーションを企画し、対象者と職員、あるいは対象者同士の関わりを行いながら、認知リハビリテーションの効果を検証している。現在14名の対象者の研究データを収集できており、今後分析とともに成果を発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により、高齢者施設では今後同様の感染症等で、対面でのケアや認知リハビリテーションが困難になる可能性が高くなることが分かった。従って、今後も遠隔環境下におけるICTを用いた認知リハビリテーションの実施についても検証を継続していく。 高齢者施設では、やはり感染予防に留意しながら直接職員と利用者、利用者同士が関わることの重要性が再確認されている。したがって、当初の目的であった職員によるグループを対象とした認知リハビリテーションの実施を継続していく予定である。集団でのリハビリテーションにおいて、他者との関わりの有効性を示すことができれば、同時に多くの高齢者への認知リハビリテーションの実施可能性が拡がる。また他の可能性として、家から出ることに拒否のある高齢者に対して、遠隔環境下においてグループでのリハビリテーションを実践し、実施者がかかわりを行いながら脳血流量を評価することも進めたい。対象者はデイサービスに参加する認知症と診断を受けていない65歳以上の高齢者の予定である。被験者が単独でタスクを行った場合と、遠隔環境下で実施者がかかわりながらタスクを実施した場合の脳血流量の変動については2022年度にデータを示したため、今後はその計画を継続することと、職員がグループを対象に遠隔環境下で認知リハビリテーションを行うことを開始したい。遠隔環境下においてグループでの認知リハビリテーション効果を得ることができれば、地域活動に参加できない複数の高齢者や僻地に住む高齢者に対してもICTを用いて高齢者施設等で実施されているものと同様の認知リハビリテーションを提供できる可能性がある。
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