研究課題/領域番号 |
20K11031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
寺島 涼子 杏林大学, 保健学部, 講師 (10614018)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | オーラルフレイル / 早期発見 / フィジカルアセスメント / デルファイ法 / 高齢者 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者の口腔機能を維持することは、栄養を摂取すること、味わうこと、他者とのコミュニケーションなど、健康やQOLと密接に関連している。高齢者のオーラルフレイル(口腔機能の軽微な衰え)は要介護状態の前段階であることが明らかになっており、オーラルフレイルを早期に発見し、適切な介入により口腔機能の低下を予防することは、我が国の高齢者の健康寿命延伸のために重要である。しかし、看護分野においてオーラルフレイルを早期発見へ導く身体査定(フィジカルアセスメント)は明らかになっていない。 本研究では、高齢者支援を担う看護師が、オーラルフレイルを早期に発見するためのフィジカルアセスメントについて明らかする。
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研究実績の概要 |
オーラルフレイル(加齢に伴う口の軽微な衰え)は高齢者のフレイル・要介護状態に先立ち生じることが明らかになっており、適切な介入による改善も可能な状態であることから、健康寿命の延伸を目指すうえで重要な概念となっている。オーラルフレイルには身体的側面のみならず、心理・認知的側面、社会的側面をも含む多面性を有している。本研究の目的は、歯科専門職以外の職種によるオーラルフレイル早期発見のための評価項目の検討を行うことである。研究方法は、専門的知識や経験的判断を有する専門家グループに対し複数回のアンケート調査を行い専門家の意見を集約するデルファイ法を用いた。本研究では身体的側面のみならず生活機能などの多面性を網羅する看護分野のフィジカルアセスメントに着目し、調査対象となる専門家を全国の摂食嚥下障害看護認定看護師とした。デルファイ調査に用いるアンケートの原案は、関連する専門書籍および論文からオーラルフレイル早期発見に関わる評価項目の抽出と検討により作成し、調査を実施した。 令和5年度は原案を用いてプレテストを行い、オーラルフレイルを早期に発見するための評価項目は88項目となった。これをもとにオーラルフレイル評価の必要度を問うデルファイ法によるインターネットを用いたアンケート調査を全国の摂食嚥下障害看護認定看護師を対象として2回実施した。同意率のコンセンサス基準を80%に設定し、80%未満の評価項目はコンセンサスを得られなかったとして削除の対象とし、自由記載欄の内容と共に摂食嚥下障害看護認定看護師4名と老年医科および歯科各1名の専門家と共に、項目の削除や修正・追加の検討を行った。結果、1回目調査では76項目、2回目調査では68項目が抽出された。さらなるデータの分析と共に、研究発表の準備に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況の理由については、以下のとおりである。 本研究における研究対象者は、全国の摂食嚥下障害看護認定看護師である。その多くが看護師として医療機関や介護施設および在宅ケア分野において、日々看護実践を行っている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により研究対象者は日々の業務に加え、厳重な感染対策を施す必要があり、逼迫した状況となった。令和4年度はプレテストと共に本調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の対応の最前線を担う摂食嚥下障害看護認定看護師に対し、調査協力を求めることは難しいと判断し実施を見送った。その間、学会発表、評価項目の再検討、本研究のブラッシュアップや今後への応用について検討を行った。 令和5年5月に新型コロナウイルスは感染症法における5類感染症となり感染症対策が緩和されたことから、プレテストをし、本調査であるデルファイ法によるインターネットを用いたアンケート調査を実施するに至った。プレテストは令和5年5月に行い、デルファイ法による1回目アンケート調査は同年7月~8月、2回目アンケート調査は同年10月~11月に各4週間の調査期間を設けて実施した。1回目調査では240名(回収率26.7%)、2回目調査では120名(回収率48.7%)から分析対象となる回答を得た。結果、本研究の目的である歯科専門職以外の職種によるオーラルフレイル評価の項目は68項目抽出された。本研究で抽出された68項目を概観すると、口腔機能や口腔環境に関する評価に留まらず、栄養に関する評価項目や心理・社会的状況に関する評価項目、コミュニケーションや食事に関する項目と多面的な内容で構成されていた。口腔機能のみに焦点化された評価に偏ることなく、オーラルフレイルの特徴を踏まえた包括的で多面的な評価項目が抽出された。よって研究発表の準備を進めるに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では令和5年度、歯科専門職以外の職種によるオーラルフレイルを評価する項目を検討するためデルファイ法を用いて全国の摂食嚥下障害看護認定看護師を対象に調査を行い、68項目の評価項目が抽出された。 オーラルフレイルについては、2024年4月にさらなる国民啓発および対策への多職種連携の推進を目的に新たな定義、概念が発表された。新概念は「オーラルフレイルは、口の機能の健常な状態(いわゆる『健口』)と『口の機能低下』との間にある状態」とし、残存歯数の減少・咀嚼困難感・嚥下困難感・口腔乾燥感・滑舌低下からなる主観的評価5項目のうち2項目以上該当した場合をオーラルフレイルと位置付け、歯科専門職が不在であっても高齢者自身による主観的評価が可能な内容となり、地域や医療機関など幅広い活用が予測される。一方で高齢者の口腔機能は客観的評価と主観的評価の相違が報告されており、本研究でも研究対象者より「高齢者の自覚度合いの低下と客観的評価との乖離」に関する意見を複数確認した。口腔機能の評価は歯科的症状を自己申告する能力に依存するという特徴を有しており、口の衰えに対し自覚が乏しく「年のせい」とすることや認知機能低下により自己申告に至らない高齢者の場合、主観的評価の十分な活用に至らず、地域に潜在化する可能性がある。以上のことから、地域包括支援センターや通いの場で歯科専門職以外の職種が活用可能なオーラルフレイルの評価指標があることで、主観的評価の補助的な役割や自己申告に至ることが出来ない高齢者のオーラルフレイルの客観的評価へつながり、歯科専門職や介護予防教室への橋渡しが可能となると考える。今後は、本研究で抽出された68項目について歯科専門職以外の職種による評価の実施が可能であるか検討を行い、信頼性と妥当性を検証し地域で活用可能な歯科専門職以外の職種によるオーラルフレイル評価指標の作成を目指す。
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