研究課題/領域番号 |
20K11123
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野瀬 光弘 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携研究員 (00568529)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 健康診断 / 総合機能評価 / 農業生産活動 / 農作物の栽培 / 作物のおすそ分け / 地域ごとの差異 / 健康づくり活動への関心 / 農作業への姿勢 / 地域の実態把握 / 実務と実践のサポート |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では高齢者を対象に、農業生産活動の実態を明らかにするとともに、心身の健康度との関係の多角な分析を目的とする。先行研究では、横断的な解析に基づいて、農業に従事している高齢者は良好な健康状態にあるといわれてきた。ところが、一時点で収集した定量データの考察だけでは地域ごとに異なる高齢者の実態把握には不十分である。本研究では、農業生産にまつわる周辺の要素もふくめた「農のある暮らし」を多角的に調査し、その実態と健康度との関連を分析することで、先行研究とは異なる観点から健康関連因子を明らかにするものである。そのための手法として、量的アプローチと質的フィールド調査を融合させた、混合研究法を採用する。
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研究実績の概要 |
2023年度はようやく新型コロナウイルスの影響がほとんどなくなり、8月に高知県土佐町在住の75歳以上の高齢者を対象とした健康診断(健診)が開かれ、他にも11月と12月に、現地へ足を運ぶ機会が得られた。現地調査では、年齢、健診への参加の有無、世帯の構成、農作業を開始した時期、田畑の面積、獣害対策、作付け作物の内訳、おすそ分けと自家用野菜の比率などを聞き取った。対象者は主に土佐町西部に位置する石原地区在住の15人(夫婦2人1組を含む。男性5人、女性10人)・14世帯で、家庭菜園を持っていない1人を除く13世帯から農作業について聞くことができた。対象者の年齢は75歳から89歳で、独居は3人(男性1人、女性2人)、残りは配偶者あるいは子どもなどと同居していた。農作業を始めた時期は3人が定年退職後だったが、残りはすべて子どもの頃からで、間断的に続けてきた人が大半を占めていた。農地面積は最も多い人が水田9反、畑1反だったが、その他は5反未満でコメを2世帯が販売している以外はすべて収穫した農作物は自給用だった。獣害対策は13軒中5軒が電気柵などをしていたが、他の世帯は被害がそれほど大きくないこともあって、対策をまったくしていなかった。作付け作物は、コメ2軒を除くと夏野菜、秋野菜の2毛作というところが多く、中には梅、タケノコ、こんにゃくを栽培、加工している世帯もあった。親族や近所の人への農作物のおすそ分けは、80%という世帯を除くとおおむね10~20%にとどまっていた。摂取している野菜に占める自家用の比率は、80%以上という高い世帯と10~20%未満の低い世帯に分かれていた。健康への配慮行動としては、食事と運動(散歩など)という人が複数いたが、4人(男性2人、女性2人)は特にないという回答だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度になってコロナ禍が一段落し、8月に75歳以上の住民を対象としたご長寿健診が開催されるなど、ようやく「通常モード」に近づいた。ところが、調査協力を得て現地へ聞き取りを実施するところまでで手一杯で、11月と12月にそれぞれ5日間滞在するだけとなった。また、高齢者による農作業と健康との関連を調べた結果としてどんなことに結びつくかという重要なポイントに関して、調査協力者に説得力のある理論を説明できないこともあり、モチベーションを持って取り組んでもらうことにも手間取った。というのも、聞き取り先は調査協力者の個人的な地域でのつながりに基づいて選定するため、ある程度のコンセンサスを得ないと高齢者を紹介してもらえないからである。
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今後の研究の推進方策 |
今年は事前に70歳以上の高齢住民に配布されるアンケート票に、農作業の有無と栽培作物の取り扱いについての項目を追加し、前回行った2019年の結果と合わせて縦断解析ができるように手配した。また、昨年に続いて8月に75歳以上の高齢者を対象とした健診が開かれる予定になっており、問診で農作業についていくつか質問する予定にしている。他に、2016年のアンケート結果をもとに、土佐町内の旧村3つのよる運動機能、日常生活機能、生活満足度の違いを解析した結果を6月に開かれる日本老年医学会において、ポスター発表をする。2023年に同町在住で70歳以上の住民を対象としたアンケートについては、聞き取り結果で健康に気を付けていることはないとの回答が複数あったことを踏まえて、健康づくり活動への参加意思の有無で日常生活機能、メンタルヘルス、生活満足度にどのような差異があるかを分析、結果を10月に開かれる日本農村医学会にて口頭発表する。2019年と同じ質問事項を70歳以上の2024年にも尋ねることになったため、基本的日常生活機能、老研式活動能力指標、心理状態、生活満足度の5年間の変化量との関係性を縦断的に統計分析することで、農作業の有無と心身の健康度合いとの結びつきを考察、論文執筆につなげる。
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