研究課題/領域番号 |
20K11132
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58080:高齢者看護学および地域看護学関連
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
木下 真里 高知県立大学, 看護学部, 教授 (50849809)
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研究分担者 |
敷田 幹文 高知工科大学, 情報学群, 教授 (80272996)
田之頭 恵里 高知県立大学, 看護学部, 助教 (90758905)
森下 幸子 高知県立大学, 看護学部, 准教授 (40712279)
神原 咲子 高知県立大学, 看護学部, 特任教授 (90438268)
山田 覚 高知県立大学, 看護学部, 教授 (70322378)
畠山 典子 大阪市立大学, 大学院看護学研究科, 講師 (80806042)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | Disaster / Mobile tool / Health assessment / Triage / Nurses / Health Assesment / Anonymous / Complete enumeration / Standarization |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、災害発生時に地域の看護有資格者を動員して全被災者の健康状態の把握を目指す取組みである。特に長期離職者単独での活動を支援するために初期トリアージと応急処置の意思決定、他の支援者等との情報共有を支援するモバイル・ツールを開発する。災害発生時、被災者に識別コード付きタグを配布し、それを手持ちの携帯端末等で読み込めば、クラウド上に集約した最新情報を参照しながら支援を実施し、その過程をそのまま記録できる。記録は多職種間で共有し、支援効率向上を図る。初年度にツールの試作品を作成、2年目に防災訓練や実被災地で試験運用して改良を重ね、3年目に実用化のための諸課題を検討して自治体等への導入をすすめる。
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研究実績の概要 |
1.ツール開発のための調査 2022年2月~3月に高齢者施設で発生した新型コロナウィルス感染症クラスター災害に対する救援活動では、外部から医療従事者が多数集まり、認知機能が低下している複数の高齢者に対するケアを代わりに行うことになった。この活動に参加した研究代表者らが中心となり、COACHESのコンセプトを応用した個人情報を使用しないデータのやり取りを試験的に導入することにした。関係者間の情報共有には個人の氏名を用いず、代替識別コードを使用することで、患者の取り違えや個人情報の漏洩を防止する等の効果を上げた。代替識別コード(この場合はID番号)の判別のために、コードを印字したリストバンドを、含む施設入居者に配布した。この試行により、COACHESの基本コンセプトの有用性が、実際に発生した災害において確認された。 2.アプリ・ベータ版の開発 COACHESアプリケーションのベータ版が開発された。これは、実際に携帯端末を使用してのデータ入力、クラウドデータベースへの保存、データ参照やダウンロードによる加工を可能とするものである。QRコード読み取り機能に不具合があるものの、今後の調査でデモンストレーションを行い、実物のイメージを説明するために活用される。このほか、災害時の情報の利活用のためにQRコードを使う仕組みを開発研究中の他の研究者らとの情報共有を行い、COACHESの仕組みの有用性について確認した。 3.ツールの導入・普及 COACHESの実用化を進めるための追加予算獲得のために、保健セクター以外の領域の研究助成制度について情報収集を行った。さらに、学際的、官学民連携、特に民間アプリ開発業者との連携の可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ツール開発のための事前調査 東日本大震災に関するの公的報告書の分析から、現行の災害時情報収集の課題を明らかにした。これらの課題の解決するCOACHESの仕組みの必要性を確認した。さらに、この仕組みで収集されるデータの信頼性、カバー率を高めるために大きな役割が期待される看護有資格者を対象として、災害に関する知識、意識、経験の調査を行った。高知工科大学の協力で、データを匿名で収集する仕組みについての人々の反応に関する予備調査も実施された。コロナ禍においてもっぱら遠隔となったが、国内外の研究者との情報交換も活発に行われた。これらの成果は、複数の国際学会および原著論文等の著作として国際学術雑誌等に採用・発表された。 2.モバイル・ツールの開発・機能評価・改良必要性の検討 事前調査の結果をもとに、高知工科大学チームとの連携で、個人識別コード、アプリケーションの基本デザインが決まり、初年度にはMock-upが開発された。翌年には民間業者への委託により、実際に現場でデータ入力、クラウド上のデータベースへの保存、ネット上での参照、ダウンロード、統計分析などの加工ができる、ベータ版の開発がされた。ベータ版は、QRコード読み取り不具合があり、手入力が必要となるため、実用化にはさらなる改良が必要である。また、現状ではクラウドデータベースに経時的な記録を残すことができないため、この点について改善が必要である。 3.モバイル・ツールの自治体等への導入・普及促進のための諸課題の解決 COACHESの仕組みは、これまでに複数の自治体に紹介を行っている。仕組みの公益性については一定の評価を得られているものの、実物がない段階では導入の議論は進行しない。一方で自治体での導入の見通しがない段階では実用化に向けての民間企業との連携も進行しない。このため、実用化を推進資金獲得のために国際機関等の助成金の申請を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.ツール開発のための調査 看護師の分布の把握、匿名性、悉皆性の効果をあらためて確認する調査の実施、仕組みの妥当性を確認する。また、悉皆データ収集を実現するには、見ず知らずの相手の協力を得る必要があるが、特にITになじみのない高齢者や日本語になれない外国人の協力を得るために、「匿名データ」を「クラウド上に保存」し「共有する」など、この仕組みの抽象的な概念をどのように伝えるかを調査研究する。 2.ツール開発 開発したベータ版について上述の課題(QRコードの読み取り不良や、サーバへの保存方法の制限など)を解決することにより、実災害でも使用できるアプリケーションに改善することにより、様々な場面での試用ができるようにする。また、災害時に予想される停電やネットワーク障害に対して、データを一時的に保存する方法を検討する。 3.実用化 実用化に向けての資金獲得に引き続き努力する。民間セクターとの連携を実現するために、事業の収益性について再検討するほか、広報活動にも力を入れる。これまでの知見をまとめて学術論文として発表する。
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