研究課題/領域番号 |
20K11283
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
花岡 秀明 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (10381419)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 回想法 / 高齢者 / 認知症予防 |
研究開始時の研究の概要 |
認知症予防効果の可能性がある非薬物療法の1つとして回想法が注目され、地域在住高齢者を対象に試みられているものの、その報告は極めて少ない。申請者らは、これまで嗅覚刺激に着目した回想法を行い、短期的な抑うつの軽減効果を報告している。しかし、回想の手がかりに用いる嗅素の使用方法、認知機能や認知症の発症リスク要因に対する追跡期間を設けた効果検討が今後の課題となっている。 本研究は、地域在住高齢者を対象に、嗅覚刺激を用いた回想法の認知機能や認知症の発症リスク要因に対する短期的、中期的な効果を検証することを予定しており、嗅覚刺激を用いた回想法は、地域に根差した認知症予防プログラムとなることが期待できる。
|
研究実績の概要 |
現在、高齢者に対する介護予防に役立つ心理社会的アプローチの1つとして回想法が試みられているが、回想を促すための回想手がかりの使用根拠ついて、十分な検討が行われていない。我々は、回想手がかりの使用根拠について、これまでいくつかの検討を重ねてきており、嗅覚刺激を回想手がかりとして活用することで、回想法をより効果的な介入方法とすることに着目をした。本研究では、認知症を発症してない地域在住高齢者を対象に、回想法介入による効果検証を行う前に、まず、高齢者の回想に役立つ嗅素の種類について検討し、調査結果に基づいた根拠を持った嗅覚刺激を用いた回想法を行い、認知症リスク要因(抑うつ、社会的孤立)に対する短期的、中期的効果を検証し、介護予防に役立つ回想法プログラムの開発に役立てることを目的とした。 初年度の令和2年度は、高齢者の回想に役立つ嗅素を選定するため、簡便で安定した嗅素提供につながる嗅覚検査キットに着目し、回想手がかりへの応用を検討したものの、回想につながる嗅素を選定することができなかった。令和3年度から令和4年の前半にかけて、高齢者の回想に役立つ適切な嗅素を再選定するため、高齢者に馴染みのある嗅素に関する文献レビューを行い、38種類の嗅素を選出することができた。これらの嗅素のから、回想に役立つ嗅素を選出するため、地域在住高齢者を対象に調査を行い、対象者の年代や性別、そして生育環境の影響を受けにくい、回想と関連のある嗅素を確認することができた。令和4年度には、選出された嗅素を実施に用いた回想法を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症により実施が困難であったことから、令和4年度の後半に介入の準備を行い、令和5年度に予定していた介入を実施し、嗅素を回想手がかりとして用いる回想法の効果を検証する予定としている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は令和2年から令和4年の3年間で、前半に嗅覚検査キットから回想法に応用可能な嗅素を選定し、後半にその選択された嗅素を用いた回想法を実施し、その効果を検証する予定であった。しかし、嗅覚検査の嗅素の中から回想法に応用可能な嗅素を選択することが困難であったこと、更に、研究期間に新型コロナウイルス感染症が拡大したため、地域在住高齢者を対象とした調査などが実施できない、あるいは遅れが生じる状況が続いたこと、二つが遅れた主な理由として挙げられる。 初年度の令和2年度は、高齢者の回想に役立つ嗅素を選定するため、簡便で安定して嗅素の提供につながる嗅覚検査キットに着目し、回想手がかりへの応用を検討したものの、実際に高齢者からこの嗅素では過去の出来事を想起することにつながらないといった意見があり、当初計画していた検査キットから嗅素選定を中止した。そのため、日常生活の中になる回想手がかりとして用いることができる、高齢者にとって馴染みのある嗅素を選定することに計画を変更し、文献レビューから候補となる嗅素を挙げ、候補となった複数の嗅素と回想の関係について横断調査することなり、大幅な遅れた生じた。 新型コロナウイルス感染症についても、本研究の開始時点からこの感染拡大に注意をはらう必要があり、対象となる高齢者から意見を求める、あるいは調査を依頼する、調査を実施するといった対面での活動の全て影響があり、計画的に研究を進めること困難であったことから、更なる遅れを生じる原因となった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度から令和4年度の前半にかけて、地域在住高齢者を対象として、日常生活の中で入手可能で、回想手がかりとして用いることができる嗅素を選定するための調査を実施し、その調査結果をまとめ、論文とした投稿した。また、この調査結果から、回想の手がかりとしての嗅覚刺激について、年齢や性別、生育環境に左右されない嗅素の種類(カレー、畳、お茶、石鹸など)を確認することができた。 令和4年度の後半には、この調査に結果に基づいた介入計画を行い、地域在住高齢者に対する嗅覚刺激を用いたグループ回想法の有効性を検討するため、回想手がかりとして嗅覚刺激を用いるグループ回想法を行ったときの抑うつ状態、孤独感、不安感と、回想手がかりとして言語刺激を用いるグループ回想法を行ったときの抑うつ状態、孤独感、不安感を比較する計画を行った。 現段階で、今回の介入研究に関する計画について、倫理審査委員会の承認を得ることができたため、令和5年度はこれらの計画した介入を地域在住の高齢者に対して実施し、回想手がかりの種類の違いについて評価を行う予定である。
|