研究課題/領域番号 |
20K11405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
寺田 和史 天理大学, 体育学部, 教授 (40454798)
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研究分担者 |
中谷 敏昭 天理大学, 体育学部, 教授 (60248185)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 鍼 / 鍼通電 / 力調節能 / 遅発性筋痛 / 鍼治療 / 足関節 / 底屈 / 筋疲労 / 筋紡錘 / 伸張反射 / 立位姿勢制御 / 鍼刺激 / 鍼通電刺激 |
研究開始時の研究の概要 |
遅発性筋痛は、脊髄α運動ニューロンプールの活動の興奮性を亢進させることで、力調節能を低下させる。遅発性筋痛などにより足関節底屈筋である下腿三頭筋に力調節能の低下が生じた場合、スポーツ動作、立位バランス能、車のアクセル・ブレーキの調節等に悪影響が生じる。一方、鍼や鍼通電の刺激は脊髄α運動ニューロンプールの活動を抑制することから、それらの刺激が遅発性筋痛によって生じた下腿三頭筋の力調節能の低下を抑制するのではないかと考えた。そこで本研究では、遅発性筋痛を生じさせた下腿三頭筋に対して鍼または鍼通電を行い、遅発性筋痛モデルによる力調節能及び立位姿勢制御能の低下に対する抑制効果を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、筋疲労や遅発性筋痛(Delayed Onset Muscle Soreness: DOMS)によって生じるとされる力調節能の低下に対して、鍼や鍼通電の影響を検討している。本年度は、DOMS等による力調節能の乱れを定量化するために必要である、視覚フィードバックを伴う足関節底屈における筋出力の調節課題を行うシステムが、実際に安定してデータを得るものとなっているかどうか、その確認作業に注力した。本システムは、椅座位でペダルに見立てたフォースプレートを片側の足関節底屈により押すときの、力の調節様相を記録するものである。力調節能の評価は、視覚課題に対する達成度によって行う。すなわち、モニターに出現する垂直方向に移動する目標物を、ペダルの踏力と連動して同じく垂直移動するレベルゲージで追跡し、目標物とそれに合わせた踏力の誤差を経時的に記録するものである(力合わせ課題)。昨年度までに本システムのソフトウェアについては概ね開発できており、システム全体についてもほぼ完成していたが、今年度ではデータサンプル収集の際の再現性について確認した。その結果としては、少し不安定さを残すものであり、方法について修正の必要であることが示唆された。 また、遅発性筋痛の発生方法、鍼通電の方法についても昨年度に引き続いて予備的な検討を行い、概ね確立することができた。 研究期間内に十分な研究成果を得るには、実際にデータを得るための試行をできるだけ早期に行う必要があるが、これらの検討は課題の検証にとって不可欠であり、昨年度に引き続いて本年度もある程度の時間をかけることとなった。事業期間を延長した次年度についても、残る課題をクリアし、研究成果が得られるように進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度までのCOVID-19流行の影響は幾分かは和らいだものの、これまでの研究計画の遅れを取り戻すまでの研究活動ができなかった。本研究においてデータの取得の際に問題となるヒトとヒトとの接触について、昨年度より対応策を講じられるようになったものの、依然、幅広いデータの収集等については困難な状況であった。 本研究課題に関する研究成果について、昨年度来、学会での発表等を計画していたが、上記のとおりデータ収集についても十分には実施することができず、それらの活動についても満足に行えなかった。ただし、昨年度から徐々にではあるが情報収集をする機会は増えていき、今年度もその点では少し進められた形となった。 本年度は、一昨年度、昨年度と同様に本研究課題に係る資料の収集や、測定に使用するシステムの構築についてを中心に、さらに検討を重ねることとなった。特に、力調節能の評価に用いようとしているシステム・方法については、何度か試行を繰り返してかなり改善することができた。ただし、実際にデータの採取を試みたところでは、上手くいく場合とそうでない場合があり、今後は、本システムを用いたヒトを対象とした測定が安定して確実にできるように順次進めていき、成果を得るための研究活動遂行につなげていく必要がある。 本年度は、一昨年度、昨年度と同じく活動制限のある中で出来るだけ研究が進められるように最大限努力したが、COVID-19流行の影響は避けがたく、研究の進捗としては遅れている状況であると言わざるを得ない。そのため、今年度が計画最終年度であった研究期間を、補助事業期間延長申請により延長した。次年度は、これまでの遅れを取り戻すべくスケジュールを調整し、当初目標としていた研究成果が得られるようさらに工夫を重ねたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度が研究期間の最終年度であったが、それを延長して実施することとなったため、本研究課題の解決ができるスケジュールを立て直し、研究を進めていく。COVID-19流行の影響により一昨年度、昨年度、本年度で進められなかった計画については、早急に見直しを含めた対応をしなければならない。具体的には、本年度までに確立された測定システムを用いた足関節底屈における力調節能の評価法を使い、十分な予備的検討を行ったうえで、元来、本年度までには着手予定であった以下の検討を進める。 対象を「鍼(通電)群」と「無刺激群」に、年齢や体格、筋力などが偏らないように階層化したうえで無作為に割付ける、無作為化比較対照試験を実施する。上記の両群に20度の傾斜板上での踵挙げ運動(エキセントリック運動:ECC運動)を行わせ、実験的にDOMSを発生させる。鍼(通電)群には、力調節能の経時変化をみるために、刺激(介入)の前後における数度の時機において、特別な装置を作成し、それを用いて視覚フィードバックによる片側の等尺性足関節底屈トルクを目標値に合わせる課題を行わせる。さらに、重心軌跡測定器により、立位姿勢制御の評価を行う。鍼(通電)は、DOMSが発生中とみられるECC運動の24時間後に行う。鍼刺激群には、片側の当該筋への2Hz・20分の低周波鍼通電を行う。具体的な刺激点は、委中穴(BL40)と承山穴(BL57)とする。無刺激群は、鍼刺激と同時間による安静をとる。各時点での観察データをもとに、2群を比較する。結果として、鍼(通電)群は無刺激群と比較して、DOMS時の足関節底屈における力調節能や立位姿勢制御能力の低下が抑制されると予想する。 以上のように、当初計画を推進していく。さらには、引き続き学会等での情報収集を行い、研究成果が得られた場合には、積極的に関連学会等で発表を行うことを考えている。
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