研究課題/領域番号 |
20K11500
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
|
研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
村越 直子 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 教授 (40465670)
|
研究分担者 |
橋本 有子 お茶の水女子大学, 教学IR・教育開発・学修支援センター, 講師 (50826972)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | ソマティクス / ムーヴメント / ダンス / ラバン/バーテニエフ・ムーヴメント・スタディズ / ソマティック・エデュケーション / 臨床教育学 / 身体性の教育 / からだ / 身体の教育 / ラバン/バーテニエフ・ムーヴメント・スタディーズ / エンボディメント |
研究開始時の研究の概要 |
米国発祥のソマティクスは、貧困、人種差別、人間関係の希薄化など社会問題によって影響を受ける「からだ」について、その声を聴き、実践技法を用いて解決に導こうとする学問領域である。日本においてもソマティクスは注目されつつあるが、国内ソマティクス研究者はいまだ少数であり、分野を超えて思考し実践を共有する現状に至っていない。よって、その中心概念の解釈や実践方法に微妙な違いが見られる。そのため本研究では、領域を牽引してきた米国在住のソマティクス研究・実践者5名のインタビューを通して、ソマティクスの基盤となる基礎的・本質的概念を明らかにし、日本語で文献を作成する。
|
研究実績の概要 |
本年度は、研究成果の一部を「ダンス研究の文献翻訳における難しさと課題:マーサ・エディ著「ソマティック実践とダンスの小史」の翻訳プロセスから」として、第75回舞踊学会大会において研究者2名で口頭発表を行った。それを受け、舞踊教育における言葉・言語の扱いについて大会参加者とのディスカッションがなされた。そのことは、ソマティクス研究の方法論を構築する上で国外でも議論されており、本研究者らの責務を再認識させられた。また、エディ著(2016)Mindful Movement; The Evolution of the Somatic Arts and Conscious Action はソマティクス研究において重要な役割を果たしている。本研究ではその日本語訳に取り組みつつ研究を進めている。予定していた海外調査が日程調整に無理が生じたためオンラインに切り替え、ソマティクス領域に多大な貢献をしてきた6名、Martha Eddy, Bill Evans, Sondra Fraleigh, Jill Green, Don Hanlon Johnson, Andrea Olsenへのインタビューを実施した。各人の文献の講読を踏えた上で、インタビューガイドに沿ってそれぞれ60分前後の聴き取りを行った。その聞き取りに基づき論文を研究者2名で共同執筆し学術誌に投稿した。 新たな展開として、本研究の進捗と共にアジア圏のソマティクス研究者との連携が構築されつつある。その第1弾として、主に台北を拠点とする大学教員らとの研究交流を開始することができた。 また昨年度に引き続き、国内のソマティクス研究の実態を把握するため、「内側から捉える身体の試み:体験的解剖学とボディマインド・センタリング」と題し、上智大学基盤教育センター身体知領域教授、吉田美和子氏によるワークショップを実施し、国内専門家らとの対話を重ねた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ソマティクスの基礎的・本質的概念の抽出を目的とし調査を進めている。対面で予定しているインタビューがコロナ禍の影響により大きく遅れをとったままであり、特に対面でしかできない研究参加者のハンズオンの実態や場を共有している人の反応など、実践現場のデータ収集ができていない。渡航規制が緩和されたとはいえ、高齢の研究参加者らと本研究者らの渡航日程を調整することが困難であったのが理由の一つである。しかしながら本年度はオンラインを活用することによって研究を多少なりとも前進させることはできた。オンライン・インタビューをもとにした共同執筆の論文は、この領域を牽引してきた北米の研究・実践者がソマティクスという語をどのように解釈しているのかの聴き取りを行うことで、個々の視点からみたその特性を捉えた。そこからソマティクス領域の実態について考察を試みたものである。その結果、ソマティクスのもつ多面性は、個人の実践に基づく場の多様性から形づくられていることがわかった。また「内側に入る」ことが実践的概念として共有されていたことから、研究参加者6名が皆、実践を基盤に独自の活動を展開していることが示されている。中でもダンサーたちの実践に注目すると、ソマティクスとダンスの知が融合されることにより、個人の興味関心に裏付けされた才能のembodimentを促すことが示唆された。本論文を土台に最終段階の研究成果をまとめるため、研究参加者たちとの意見交換を継続的に行っていく。コロナ禍中に始まった本研究であるが、そのプロセスにおいて身体性についての研究は著しいスピードで変化しているように感じられる。身体性の教育については、本領域にかぎらず議論を深めることが多方から指摘されている。研究の進捗で形成されつつある人脈を原動力として、さらなる研究に繋げる必要性を感じている。
|
今後の研究の推進方策 |
ソマティクス実践者とのインタビューをオンラインで進めるとともに、対面でのインタビューや実践的な理解を深めるための参与観察を念頭に置き研究計画を更新した。次年度はソマティクス実践者を日本に招聘し、国内ソマティクス研究者らだけではなく、アジア圏の研究者らとともに研究を深めていく方向で考えている。すでにソマティクス研究の母体が形成されつつあるアジア圏の研究者らとの連携は、日本におけるこの領域の発展を後押しするものであり、これまでの実践研究における課題の共有を行いつつ、研究基盤の構築に役立つものと考える。まずは、マーサ・エディを招きワークショップを開催する。このワークショップはアジア圏の研究者へもオンライン公開するとともに、その後、国内専門家らとの研究討論を実施したい(現在交渉中)。具体的には、エディの開発した3つの技法(Dynamic Embodiment, BodyMind Dancing, Moving for Life)の関連性を日本の実践者と共有しつつ、ソマティック実践の真髄を探り、その意見交換をエディと共に議論する予定である。 次年度のもう一つの目標は、これまで継続的に翻訳を進めながら研究者2名で読み深めてきたエディ著(2016)Mindful Movement; The Evolution of the Somatic Arts and Conscious Actionをソマティクスの系譜を紐解く参考本として多くの人々と共有できる形に整えることである。
|