研究課題/領域番号 |
20K11658
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
小谷 侑 藤田医科大学, 医学部, 講師 (60644622)
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研究分担者 |
金子 葉子 岐阜医療科学大学, 薬学部, 教授 (20319263)
長崎 弘 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30420384)
河田 美穂 藤田医科大学, 医学部, 助教 (90761601)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 視床下部 / 神経幹細胞 / タニサイト / ES細胞 / オルガノイド / Rax / 分化誘導 / 幹細胞ニッチ / 肥満 / 老化 |
研究開始時の研究の概要 |
肥満と老化に共通する脳内変化として、視床下部での神経幹細胞の減少が報告されている。これらの幹細胞はタニサイトと呼ばれる脳室上衣細胞の一種であり、マウスの脳内に補充すると抗肥満および抗老化作用を示すことが知られている。本研究では、応募者らがこれまでに確立しているマウスES細胞からタニサイトへの分化誘導系を活用することで、タニサイトの維持や機能制御に関わる成体ニッチ(微小環境)を探索し、肥満や老化に関連する幹細胞システムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
昨年度までに、マウスES細胞からタニサイトを含む視床下部様組織(オルガノイド)を作製する技術を確立した。また、この培養系を活用することで、視床下部幹細胞特異的な転写因子であるRaxや形態形成シグナルの一種であるソニックヘッジホッグ(Shh)シグナルが、タニサイトの分化や維持に寄与している可能性を見出した。一方で、Shhシグナル活性化剤を継続的に添加してオルガノイド培養を行った場合でも、タニサイトの存在割合はオルガノイド間で大きくばらつくことを確認している。2023年度は、このようなオルガノイドの不均一性を改善するために、基本となるオルガノイド培養条件の見直しを行った。従来は先行研究において視床下部ニューロンの分化が確認されている無血清培地を使用していたが、成体神経幹細胞の維持培養に適していると報告されている培地組成を新たに検討した。また、三次元培養を行う際の細胞密度の影響など、種々の培養条件を検討した。培養条件の影響を定量的に評価するために、Rax遺伝子に緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子がノックインされたマウスES細胞からオルガノイドを作製することで、オルガノイド中のタニサイトをGFPで蛍光標識した。フローサイトメトリーや画像解析を用いてGFPの発現を定量化することで、タニサイト分化効率を評価した。これらの条件検討の結果から、従来法と比べてオルガノイド間のばらつきを低減し、タニサイトの分化効率を向上させる新たな培養条件を見出した。またこの条件下では、オルガノイド全体での細胞生存率も向上することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度はタニサイトを蛍光標識するための新たなマウスES細胞株を作製する予定であった。具体的には、Rax遺伝子のプロモーター配列下流に高輝度改変型のGFPであるmGreenLantern(mGL)を導入した発現ベクターを作製し、これをマウスES細胞に導入して安定発現株を得る計画であった。しかしこの方法では、Rax-mGL配列が挿入されるゲノム部位をコントロールできないため、内在遺伝子の発現に影響を及ぼす可能性が懸念された。そこで、外来遺伝子の挿入部位として汎用されているRosa26遺伝子座にRax-mGL配列をノックインするためのプラスミドベクターを新たに設計した。ベクター作製用のPCRプライマーも設計済みであり、現在ベクター調製の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現状のオルガノイドでは、Rax遺伝子座にGFP遺伝子をヘテロノックインしたES細胞株を用いてタニサイトを蛍光標識しているが、Rax遺伝子がヘテロノックアウトされている影響で、タニサイトの分化や維持効率が低下している可能性を見出している。Rosa26遺伝子座にRax-mGL配列をノックインしたマウスES細胞株を作製することで、この問題を解決し、正常なRax発現を維持したままタニサイトを蛍光標識する。2023年度に確立したオルガノイド培養方法を用いて、上記の新たな細胞株からオルガノイドを誘導し、タニサイトの分化や維持効率を評価する。特にRax発現やShhシグナルが及ぼす効果を中心に解析し、タニサイトの機能制御因子を明らかにする。
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