研究課題/領域番号 |
20K11689
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60020:数理情報学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
藤原 洋志 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (80434893)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | オンライン最適化 / アルゴリズム / 数理工学 / 情報基礎 / 応用数学 / 数理計画法 / 最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、様々な問題に共通する数理的構造に焦点を当て、数理計画法を活用して総合的なアルゴリズム設計理論を体系化する。具体的には次の 3 つの側面から取り組む。 (A) 数理計画法に基づいたアルゴリズム精度評価の標準化 (B) 数理計画問題への定式化によるアルゴリズム設計技法の深化 (C) 主双対法の拡張による精度保証付きアルゴリズム設計
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研究実績の概要 |
(1) El-Yanivらの2001年の論文では、交換レートの最大変動率のみがプレーヤーに知らされる一方向通貨交換問題に対し、達成可能な競合比(=最適アルゴリズムの性能)が求められている。我々はすでに、これを無限次元ベクトル空間上の線形計画問題に定式化し、最適アルゴリズムをはじめて陽に表した。しかし、プレーヤーが最適アルゴリズムを実行するとレート上限とレート下限が知られてしまうという、オリジナルのモデルの妥当性に疑問が残されていた。本研究において我々は、プレーヤーはパラメータを隠ぺいするサンドボックス内にあり、我々観察者はサンドボックス外から評価するモデルで記述し直すことに成功した。成果をまとめて電子情報通信学会英文論文誌Dに投稿し、採録された。
(2) ビンパッキング問題は、順次到着するアイテムを、そのつどビンに詰めていき、なるべく少ない数のビンに収めることを目的とするオンライン最適化問題である。計算機アーキテクチャからロジスティックスに至るまで幅広い応用があり、40年来計算機科学者の好奇心を刺激し続けてきた有名な問題である。本研究では、アイテムサイズを2種類に限定した問題に取り組む。この問題は、与えられたアイテムサイズの値の組によって、アルゴリズム設計が大きく異なることが知られている。最適アルゴリズムが分かっている組もある一方で、未解決な組も多く残されていた。本研究では、我々の2021年の研究成果を拡張することにより、これまで未解決だったアイテムサイズの値の組の多くのケースについて、それぞれの最適アルゴリズムを与えるスキームを構築した。成果をまとめて電子情報通信学会英文論文誌Aに投稿し、採録された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1) El-Yanivらの2001年の論文は、交換レートの最大変動率のみがプレーヤーに知らされる一方向通貨交換問題を解析した。そこでは、プレーヤーが最適アルゴリズムを実行すると、レート上限とレート下限をプレーヤーが学習でき、ふるまいを自己改善できることが考慮されていなかった。我々は、最大変動率および日々の交換レートのみを知らされるサンドボックスを想定した。プレーヤーは常にサンドボックス内にいて、脅威原理のみにしたがって交換を行う。そして我々観察者はその外側からプレーヤーの振る舞いを観察し、レート上限とレート下限の情報を用いて性能評価する。この枠組みにより、このモデル内にて最適アルゴリズムにしたがうプレーヤーのふるまいを、矛盾なく説明できるようになった。
(2) 本研究では、アイテムサイズを2種類に限定した問題に取り組む。与えられたアイテムサイズの値の組によって、アルゴリズム設計が大きく異なることが知られている。我々はすでに論文[Fujiwara, Wanikawa, & Yamamoto. IEICE Transactions E104-D, No. 3, 2021]において、アイテムサイズに関して complmement-closed という性質を定義した。直観的に説明すると、いかなるパッキングが与えられても、うまくアイテムを追加することにより満杯にできる、ということである。そして当該論文において我々は、complmement-closed なアイテムサイズの場合の漸近競合比計算のための簡便法を構築した。本研究において我々は、この既存の枠組みを、complmement-closed なアイテムサイズだけでなくその近傍へと拡張することから始めた。そのうえで、アルゴリズムの候補を選定し、その最適性を線形計画法を用いて裏付けることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 我々の一方向通貨交換問題に関する結果は、関数最適化をアルゴリズムの評価および設計に持ち込んだことより得られた。関数最適化は古典的な変分問題が有名で、最近でも制御の分野では非常によく使われる。しかしながら、アルゴリズム理論での適用例はきわめて少ないようだ。我々はこれまで一方向通貨交換問題以外にも、スケジューリング問題[Fujiwara & Sekiguchi. IPL 2012]やスキーレンタル問題[Fujiwara. AAAC 2012]に適用し、実績を挙げてきた。今後も適用可能な例を積極的に探し、関数最適化がアルゴリズム理論に役立つことを実証していく。
(2) 我々が提案する、アイテムサイズを2種類に限定した問題に対する最適アルゴリズム導出スキームについて、2つの方策を考える。(イ)まずは、我々の提案手法をもってしても最適アルゴリズムを得られていないアイテムサイズの値の組について解決していきたい。これには抜本的なスキーム見直しも含めて考えていく。(ロ)もう1つは、アルゴリズムのパラメータの意味付けである。我々のスキームから導出される最適アルゴリズムは、いわばパラメータつきのアルゴリズムである。線形計画法によりその最適性が保証されるものの、それが背後でどういう意味をもつのか、多くの研究者から疑問が寄せられている。この解明が(イ)の解決につながる可能性もあるため、優先的に推進していきたい。
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