研究課題/領域番号 |
20K11704
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 統計数理研究所 (2022) 東京大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
熊澤 貴雄 統計数理研究所, リスク解析戦略研究センター, 特任准教授 (60649482)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 点過程モデル / 非定常過程 / 余震 / 予測 / 群発地震 / ベイズ統計 / 地震活動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は適切な非定常・非一様なベイズ的統計モデルを開発・適用して、大地震後の地震活動(余震活動)の時空間的識別分布を推定、モデル化し、余震活動の収拾速度の特性を解明するとともに、その予測改善を試みる。本研究で特に注目するのは流体貫入の断層弱化による地震誘発作用であるが、この作用が本震・余震型地震活動にどの様な因果関係を持つかは依然不明であり、その時空間的解明は地震発生のメカニズムの理解を進展させると考えられる。
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研究実績の概要 |
本研究では余震活動の収拾速度の予測改善を目的とする。このとき注目するのは余震活動の類別化であり、幾つかの顕著な本震・余震型の地震時系列をETASモデルで解析すると,余震の減衰変化は幾つかのパターンに分類できることが分かった。すなわち,(a) 全時間で単一のETASモデルが綺麗に当て嵌る (典型的な余震活動),(b) ある時間以降に減衰トレンドが減速する (相対的活発化) か加速する (相対的静穏化)、そして (c) ETASモデルの当てはまりの悪い、それ以外のケースに分かれる。 この背景として、本震が余震を誘発するメカニズムに二種類の物理的作用が考えられる。一種類目は急激な断層活動による周辺断層群への応力集中であり,(a) や (b) の様に近隣の大きな断層の急激なずれ、またはゆっくりした動き(slow slip)があった時、その応力変化の影響による近隣の活動変化が誘発または抑制される。このような要素が卓越している余震活動では定数パラメータの定常ETASモデルまたは部分的定常ETASモデルが良く適合する。二種類目は大規模地震動による地殻の擾乱や潜在断層のゆっくりすべりによって貫入する流体が原因となる断層系の強度の弱化で顕著となる群発型地震である。これらの総括的なモデル化のために、近年に発生した大地震の本震発生前後の地震活動を統計モデルで解析し、余震活動の収束性や本震に至る地震活動の特徴の解析を継続して行うことで、適用事例を増やして統計モデルの高度化をはかっている。 具体的には、2020年4月からの長野県中部群発地震を詳細解析し、その地震時系列の統計学的特徴を地震調査委員会に報告した。また、2020年末より活発化した能登半島群発地震を継続的に追跡解析し、その地震発生特性を調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の地震活動の詳細解析の事例を増やして地震時系列の統計的特徴を掴むことは本研究の重要な課題であり、その方面での進捗状況は順調と言える。特に過去2年間の研究過程で分かったこととして、これまでの統計モデルで考慮していなかったデータが群発地震を含む地震時系列のモデル化に重要な要素となる可能性が出てきた。特に能登半島群発地震では幾つかの特徴的な地震の発生に前後してGPSの地殻変動データが同期していることを確かめており、これを地震活動のモデリングにどう組み入れるかが目下の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
過去数年にわたって注目してきた能登半島群発地震と同領域で、今年5月5日にマグニチュード6.5の大地震が発生した。その余震系列はそれ以前の群発地震系列とは統計的特徴が異なっていることを確かめている。この二つの地震系列がどのように相互作用して時間展開したか、また余震系列の収束性をこれ迄の統計モデルを適用して確かめたい。
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