研究課題/領域番号 |
20K11808
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60070:情報セキュリティ関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山本 博章 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (10182643)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 部分文字列検索可能暗号 / DAWG / 正規表現検索 / de Bruijnグラフ / 検索可能暗号 / 部分文字列検索 / 簡潔データ構造 / データ構造 / 有限オートマトン / 正規表現 / 文字列検索 |
研究開始時の研究の概要 |
検索可能暗号とは、暗号化されたデータを暗号化したまま検索する技術である。近年、クラウドサービスの発展により、その重要性が認識され、活発に研究されるようになってきた。その中でも、テキスト文書に出現する任意の文字列を暗号化したまま検索する技術は 部分文字列検索可能暗号と呼ばれる。これは柔軟な検索を可能とするが、安全で効率的な方式の実現が難しい。そのため、この問題の解決に向け、文字列検索問題で開発されてきた先進的データ構造を利用した研究が行われているが、安全性、効率性、検索機能においてまだ十分ではない。本研究課題は、より優れた部分文字列検索可能暗号を開発しようとするものである。
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研究実績の概要 |
次の3点について実施した。 1.DAWGを用いた部分文字列検索可能暗号の改善:文字列に対するDAWG(directed acyclic word graph)とは、その文字列のすべての部分文字列を受理する決定性有限オートマトンである。申請者は、DAWGをその状態遷移の記号がすべて異なるように改良した拡張型DAWGを用いた新たな部分文字列検索可能暗号を開発した。本年度は得られた結果を論文としてまとめ公表した。さらに、テキストからDAWGを構成する線形時間アルゴリズムを利用し、暗号化索引を高速に構成するようにアルゴリズムを改善した。 2.正規表現検索に向けた検索可能暗号の開発:テキストに対する暗号化索引の作成に向けde Bruijnグラフに基づく手法を提案した。テキストに対するde Bruijnグラフは、任意の正の数kに対し、テキスト中に出現するk-gram(長さkの部分文字列)をノードとしたグラフ構造である。すべてのノードは異なるk-gramからなるため、このグラフをベースとした暗号化索引はテキスト中に出現する文字列の出現頻度を隠すことができる。その結果、安全性の高いシステムの構成が期待できる。本年度は、正規表現の閉包演算ない表現(文字列の有限集合を表す)に対し検索可能暗号を開発した。閉包演算を導入した場合、安全性の証明、さらなる検索効率の改良については今後の課題である。 3.効率性の改善に向け局所性を考慮した動的検索可能暗号の開発:アシャロフらは、安全性の強度を落とさずに検索効率を上げるため、サーバに保存する暗号化索引に対し、局所性の概念を導入し、検索効率を改善する方法を提案した。彼らは、カートモラらの手法を改善する形で議論しているため、追加等の更新作業について議論していない。ここでは、追加機能を考慮した手法について提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
拡張型DAWGを用いた部分文字列検索可能暗号については、提案法の実験的評価を含めた結果を論文としてまとめ、採録された。採録された論文では、テキストからDAWGを構築するアルゴリズムに対し、実装は簡単であるが効率の悪いものを使っている。今回は、その部分を線形時間アルゴリズムに変える手法を提案したが、実験的評価が十分にできていない。部分文字列検索の拡張である正規表現検索に対しては、de Bruijnグラフを応用した新たな手法を提案することができた。従来の手法は、単純にテキストをk-gramに分割して暗号化索引を構築しているだけで、文字列の出現頻度が漏れ、安全性が脆弱であった。今回は、de Bruijnグラフを使うことで、統計情報の漏洩を防ぎ、安全性を高めることができた。ただし、正規表現検索に対しても安全性の理論的証明、実験的評価が十分にできていない。以上の理由によりやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
以下のように開発した手法の改良・実験的評価を行うとともに結果を公表する。 1.拡張型DAWGを用いた部分文字列検索可能暗号の実験的評価:暗号化索引の構成アルゴリズムに向け、DAWGを構成する線形時間アルゴリズムを利用した改良版を提案したが、実験的評価が十分ではない。アルゴリズムを整備し、実験的評価を行う。 2.正規表現検索が可能な検索可能暗号の改良:de Bruijnグラフを利用した手法をについて、検索効率の改善および安全性の向上を目指した改良を行う。検索効率の向上に関しては実験的評価も併せて行う。安全性については、適応的安全性を満たすことを証明する。また、提案法はサーバ上で有限オートマトンの動作を計算しているため、検索文字列がどこに出現したかの情報が漏れてしまう。この点に関しても、より秘匿性の高い手法について検討する。
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