研究課題/領域番号 |
20K11812
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60070:情報セキュリティ関連
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
山場 久昭 宮崎大学, 工学部, 助教 (60260741)
|
研究分担者 |
岡崎 直宣 宮崎大学, 工学部, 教授 (90347047)
油田 健太郎 宮崎大学, 工学部, 准教授 (30433410)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | バイオメトリクス / 深層学習 / 筋電位 / 個人認証 / 携帯端末 / 多要素認証 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、スマートフォンやタブレットが普及しているが、パスワードが覗き見によって盗まれてしまい、端末を不正に使用されてしまうという問題が起きてきている。この問題を解決するため、指紋などの生体情報を用いた生体認証が注目されている。これら生体情報は、一生涯変化することがないために認証に用いる情報として有効ではある。しかし逆にそれが漏洩してしまった場合、別のものに変更できないことが欠点である。そこで生体情報の一つである筋電位(筋肉を動かす際に生じる電位差)を利用し、前腕部の動作(ジェスチャ)の組み合わせをパスワードとする。ジェスチャの順番を変えることにより、パスワードの変更が可能となる。
|
研究実績の概要 |
筋電位を用いた個人認証システムの実現には、予め登録されているジェスチャの波形とシステムに入力された波形を比較し、同一人物による同一のジェスチャであるか否かを判定する手法が必要である。その実現のため、以前の研究では、まず波形の特徴を表す適切な特徴量候補を選定し、それを精度よく取り出す方法として相互相関に基づく手法を開発した。その上で、サポートベクターマシン(SVM)、および、Dynamic Data Warping 法を利用した2つの方法を用いて、ジェスチャを利用した個人認証手法の開発を行っている。この認証の精度を向上させるため、深層学習を導入してその性能を評価する研究に着手した。ただし新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行の影響により、多くの被験者からデータを取得することが困難となったため、複数人の間でジェスチャの違いを認識することよりも、単一の被験者を対象に、その被験者による複数のジェスチャを互いに識別することを優先し、こちらを対象に研究を進めた。その結果、SVMを用いた手法よりも性能の向上が見られ、さらに、敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network、以下GAN)を用いて筋電位データの拡充を図る方法を検討し、国際会議で発表した。本年度は、判定精度をさらに向上させるべく、筋電位の測定箇所を増やすことの効果を検討した。具体的には、これまでは前腕部の掌側一箇所でのみ筋電位を測定していたが、手の甲側、さらに両側面の計4箇所で測定し、4倍のデータを利用してジェスチャの波形比較を行うようにした。その結果として、これまでより非常に大きな性能向上が見られ、国際会議での報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行はほぼ鎮静化したものの、未だに不特定多数の他者との接触を避けることは要求されていたことから、多くの被験者の筋電位を測定するような実験を実施することはできなかった。そのため前年度同様、複数人の間でジェスチャの違いを認識することより、単一の被験者を対象に、その複数のジェスチャを識別することを優先し、こちらに絞って研究を進めるという方針を継続した。この状況のもと、筋電位測定データの前処理プログラムのさらなる改良と、深層学習を用いた単一被験者の複数のジェスチャの認識を進めた。前者については、ノイズ除去の手法の検討を行い、ローパスフィルタを工夫して従来よりクリアな波形を取得することができた。後者については、学習のためのデータ不足を補うため、敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network、以下GAN)を用いてデータ拡張を適用し、筋電位データの拡充を図った。さらに、筋電位の測定を複数点で同時に行い、多くの筋肉の動きを利用することにより精度向上を図った。これらの成果については、国際会議で発表を行った("On an improvement of hand gesture recognition for realizing a user authentication system using s-EMG")。なお、本研究を自らの研究テーマとする大学院生・卒研生が協力してくれたため、特に学生雇用は行わなかった。以上のように、当初の進捗には満たないものの、研究をある程度は進めることができた。また、当初購入を予定していた深層学習に用いる高速ワークステーションを、本研究とは異なる予算で購入できたので、そのセットアップを行った。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、筋電位からのジェスチャ(ハンドサイン)推定に深層学習を適用する研究を進める。具体的には、(1) 筋電位測定データの前処理プログラムのさらなる改良、(2) 深層学習を用いた、単一被験者の複数のジェスチャの認識、さらに、コロナ禍が収まってきたことから、(3) 複数被験者間のジェスチャ識別の認識の3つを中心に行う。これまで、測定した筋電位から当該のジェスチャの箇所を切り出し、ノイズ除去ののちグラフ画像化するプログラムを作成している。さらに、測定された生データにかけるフィルタに工夫を加え、ノイズが適切に除去されるようにした。ただし、得られたグラフが中央に収まらず、左右に寄ってしまう画像が得られるケース、ノイズの除去が不十分であるようなケースは解消できていない。このような画像の質が認識率に影響することが予想されるので、高品質のグラフが描画できるように、画像化のプログラムを改良する。その際には、GPUを備えた深層学習用高速ワークステーションを購入し、科学計算用ソフトウェアをインストールしたので、それを活用する。そして学生に協力してもらい、複数の被験者を対象とてジェスチャの筋電位測定を行い、人の識別を図る実験に取り掛かる。なお、高速ワークステーションを本研究とは異なる予算で購入できたことから予算に余裕ができたが、その使途については、このワークステーションのパフォーマンスをより向上させるためのメモリ増量や、筋電位測定を効率よく行うための測定用機器の買い足しが考えられ、研究の進捗に応じて決定する予定である。
|