研究課題/領域番号 |
20K11854
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60100:計算科学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
福田 育夫 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 特任教授 (40643185)
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研究分担者 |
森次 圭 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任准教授 (80599506)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 分子動力学 / 相互作用計算 / 力学系 / 運動方程式 / サンプリング / 数値積分 |
研究開始時の研究の概要 |
分子動力学 (MD) シミュレーションは,生体高分子系や機能材料系等さまざまなマクロな系の分子レベルでの解析を可能にする.本研究の目的は,MD計算において状態サンプリング法の深化と相互作用計算の精密化を行うことである.これにより,大規模・複雑系での状態サンプリングを頑強にし,またシミュレーション結果の信頼性を上げる.この際に,ボトルネックである計算コストの問題を回避する.これらの技術が,物理・化学等の基礎科学分野のみならず,材料工学,薬学等を対象にする幅広い分野で容易に用いられるための研究基盤の確立を目指す.
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研究実績の概要 |
分子動力学 (MD) シミュレーションは,生体高分子系や材料系等さまざまなマクロな系の分子レベルでの解析を可能にする.本研究では,MD計算において状態サンプリング法の深化により大規模・複雑系でのミクロ状態のサンプリングを頑強にし,かつ構成粒子間の相互作用計算を精密化することでシミュレーション結果の信頼性を上げる. 前年度までに深層のパラメタ変動ダイナミクスのアルゴリズムは完成させているので,具体的応用に際して重要となるシステムパラメタ値の割り当て法を,昨年度の検討を基に,より汎用化させつつ,個々の数値計算スキームにおいて詳細に定式化した.具体的には,手法の効率を左右するパラメタセット値について,その適切性条件を定式化し,とくに重要である行列パラメタの値をその条件を満足するように定めた.各パラメタ値のシミュレーションにおける効果は互いに関連するため,全体として満足しなければならない条件群を定めて,それらをバランス良く満たすような具体的方法を作った. 生体分子系等のヘテロで複雑な系で,信頼性の高い計算を遂行するためには,精度をさらに上げる方向の研究が必要であり,このために,従来の経験的関数にとらわれない,相互作用計算の精度を上げる方法を検討・開発している.今年度は,情報として与える電荷分布の定式化のバリエーションを再検討し,補正関数の各項の吟味を理論的・数値的に行った.また既に開発済である零多重極子法との関連性が新たに明らかになったので,この知見を活かす方向性も検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
深層パラメタ変動アルゴリズムのように環境系が多次元になると,パラメタ数が増えるため,これらの値を適切に定める必要がある.実際これらは分布の精度と生成速度に強く関与する.考察を進める中でアルゴリズムの将来の発展性を見出したので,本手法をすぐに応用する前に,パラメタ設定の汎用的なスキームを構築することにしたため,予定より時間がかかった.具体的にはまず,理想的な条件を踏まえた上で,実際のサンプリングが有限時間で行われるなどの現実的設定を考えたパラメタセット値の適切性を定式化した.そして具体的なパラメタ設定が有効になるような力学系の変換に対して,この適切性が不変であることを示し,対象のパラメタ設定法を構築した.この設定法の中で,ある行列パラメタの値を定めることが重要であり,そのために環境系ポテンシャル関数のヘシアン近似法を構成した.その際,行列パラメタが満たすべき半正定値性等の条件を満たすような近似法が必要であり,最低近似の方法および精密化された近似法の2通りを構築した. 新規相互作用計算法については,電荷分布の与え方を再検討し,ヒストグラムの詳細設定法を考察した.前年度までの連続分布を用いる方法に加えて,結晶系あるいは特定の条件下で用いることのできる離散的分布を使う方法についても考察した.本手法で用いるペア関数は,基本関数と補正関数からなるが,基本関数に関しては,今まで構築してきた零多重極子法で用いてきた関数を使えることを見出したので,この関連性について考察した.補正関数については,使用される3つの係数の意味付けを明確にし,種々の条件下で数値的な検証をした.注意を要したのは遠方因子の収束についてであり,遮蔽パラメタの導入の必要性が明らかになった.加えて,カットオフ距離依存性の数値検証,および高速化のための数値技法の開発を行った.
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今後の研究の推進方策 |
開発したパラメタ変動ダイナミクスと相互作用計算法を生体分子系へ応用してその効果を詳細に検証する.
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