研究課題/領域番号 |
20K11990
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
相田 敏明 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 講師 (60290722)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 圧縮センシング / 疎符号化 / 相関 / 画像 / 辞書行列 / レプリカ法 / 統計力学 / 統計物理 / 画像処理 / 辞書 / スケーリング / 超解像 / 拡散方程式 / 逆問題 |
研究開始時の研究の概要 |
画像や音声などの冗長な被推測情報を疎表現することにより,少数の観測データからでも推測可能にする信号処理技術を圧縮センシングと言う.本研究では,画像超解像問題の圧縮センシングによる定式化(J. Yang et al., 2010.)について,解析的に性能評価を実行する.また,Yang et al. の定式化が成功した,もう理由の一つである特徴空間の選択について,その最適な選択法を理論的に解明する. 最後に,拡散方程式により時間発展した温度や濃度等の初期分布推定問題について,上述の研究結果を応用した解析的性能評価を実行すると共に,最適な特徴空間の選択法を解明する.
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研究実績の概要 |
本研究の主たるテーマは超解像であるが,その基礎として,相関を有するデータに対する圧縮センシングの平均的性能の解明が必要である.圧縮センシングとは,推測対象について多数の特徴を事前に用意することにより,少数データからでも推測を可能にするもので,原理的に最も高性能な統計的推測手法である.しかし,圧縮センシングを実問題へ応用する際に本質的役割を果たす,辞書行列については不明な点が多い.例えば,情報内の相関の強さと辞書行列の縦横比の最適な関係について,定性的にはその性質を理解できるものの,定量的には明らかにされていない. そこで,画像処理への応用に必要な画像辞書を例に,辞書の最適な縦横比の解析的評価の研究に今年度も取り組んだ.具体的には,統計物理学のレプリカ法を応用して,「劣化画像の復元問題」の解の,大自由度極限における典型的な振る舞いを解析的に評価することが課題である.そこで,上記問題の解の典型的な振る舞いを記述する非線形連立方程式を導出し,その完全復元解を基点とした,モデルのパラメータに関する2次までの摂動解析を行った.また,解析結果のパラメータ空間における適用可能範囲と解の一意性を意味する「レプリカ対称性」が,パラメータ空間内のどの領域において成立するか解明した. これにより例えば,「画像を疎符号化により表現したとき,画像辞書の縦横比を厳密に調整しなくても,高い推測性能が得られる.」といった経験的事実を説明することが可能となった.更に,画像内の相関の強さを制御するパラメータと疎符号化の疎性パラメータの値に対して,辞書行列の最適な縦横比が,レプリカ対称性の成立限界を意味するAT線により与えられることを明らかにした. 本研究の本来の課題である超解像では,辞書行列は低解像度画像と高解像度画像の両方に対応する部分から構成されるので,上述の研究成果を直接的に応用することを計画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在までに,本課題が有する困難さは,次の3点であった.(1) 画像情報内の相関や,外部から付加されたノイズの強さに対するシステムの応答を調べるには,それらのパラメータについて2次以上の摂動解析が必要 (2) システムの平均的性能を記述するオーダーパラメータが従う,非線形連立方程式を摂動的に解析するに当たり,摂動展開の基点となる解が複数存在することや,また,どのパラメータの組合せを展開パラメータとすべきか不明瞭である.更に,観測可能な量に,どうしても消去出来ない発散が発生し,その解決や解釈が必要 (3) オーダーパラメータが従う非線形連立方程式を摂動展開しても,依然として,各摂動レベルの方程式やその解が長大かつ複雑である. これらの困難に対して,(2)について,今年度も更に解明を進めることが出来た.他方,(1)と(3)については,数式処理ソフトウェアを援用して解決してきた.特に今年度は,解析結果のパラメータ空間における適用可能範囲と解の一意性を意味する,「レプリカ対称性」が安定となるパラメータ領域の同定に成功したが,当初採用した Gardner and Derridaによる導出法へ必要とされる解析的計算が長大なため,半年以上の期間を必要とした. 上記領域における誤差の評価を基にした,画像辞書の最適な縦横比等を解明する過程において,本研究において本質的に重要な基礎的諸課題を明らかにしたことは大きな収穫であるが,主たるテーマである超解像の問題に未だ着手出来ていないことから,上記の通り現在の進捗状況が評価される.
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り,「相関を有するデータに対する圧縮センシング」について困難な点の解決と,「解の安定性の為の条件」の解明を果たすことが出来た. 念のため,完全復元解以外の解を基点とした,摂動解析の結果も確認する必要があるものの,本研究課題に必要な基礎的諸問題を一通り解決した. 今後も,数式処理ソフトウェアの援用と,学内での教育・その他業務への対処を効率的に行い研究時間を確保するのが,最大の研究推進方策と考えられる.
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