研究課題/領域番号 |
20K11996
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
米山 淳 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30283344)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ファジィシステム / 非線形システム / 制御系設計 / 安定性 / ロバスト制御 |
研究開始時の研究の概要 |
研究の主課題は非線形システムの制御系設計をシステマティックに行うことである。そこで、高木・菅野ファジィシステムに基づいた制御系設計を提案する。高木・菅野ファジィシステムにおいて最も重要な点の一つは、一般的な非線形システムを厳密に表現できることである。このため、非線形システムのシステム解析や制御系設計においては、それと等価な高木・菅野ファジィシステムを用いることができる。つまり、高木・菅野ファジィシステムに対するシステム解析や制御系設計により一般的な非線形システムのシステム解析や制御系設計が可能になる。
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研究実績の概要 |
非線形システムを正確に記述できる高木・菅野ファジィシステムに対して、オブザーバの設計を行った。オブザーバは状態を推定する機構であり、これにより出力フィードバック則の設計が今後可能になる。 オブザーバに関しては、すでに前件部変数が既知の高木・菅野ファジィシステムに対しては設計手法が得られている。しかし、前件部変数が既知である高木・菅野ファジィシステムは制限されたクラスの非線形システムしか記述できないことが知られている。そのため、前件部変数が未知である場合もしくは前件部変数が測定できない場合の高木・菅野ファジィシステムに対するオブザーバの設計が求められている。これは、これらの場合の高木・菅野ファジィシステムが広いクラスの非線形システムを表現できるからである。オブザーバ設計には、ラグランジュの平均値の定理を用いた。この定理を利用することで、システムの状態の真値と推定値の誤差を記述する方程式を高木・菅野ファジィシステムにより表現できる。この方程式で記述される誤差システムに漸近安定性のための条件を適用することで、誤差を収束させるオブザーバを設計した。また、出力方程式も非線形な方程式に拡張することも行い、より一般的な非線形システムに対するオブザーバの設計手法を提案した。さらに、未知の外乱が混入した高木・菅野ファジィシステムに対するオブザーバの設計も行った。これにより、外乱が混入したシステムに対しても、その外乱を除去してシステムの状態を推定する手法が確立された。最後に、数値シミュレーションにより、これらのオブザーバの提案手法の有効性を確認した。 オブザーバの設計が完成したことにより、このオブザーバを基にした出力フィードバック則の設計に向けて実現性が増したことになり、本研究の最終的な目的達成も近いと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来、今年度は出力フィードバックによる制御設計をすることを目的としていたが、その前段階であるオブザーバの設計に時間がかかった。特に、前件部変数が測定できない場合の高木・菅野ファジィシステムに対するオブザーバ設計はまだ行われていなかった。これは、システムの状態の真値と推定値の誤差を閉じたシステムで記述することが困難であったためである。これを解決するために、全く新たな手法としてラグランジュの平均値の定理を用いた。しかし、この定理はスカラ関数に対するものであるため、これをベクトルに対応する定理に拡張した。これを確立するのに予定した以上の時間を要した。そのため、今年度はオブザーバ設計を中心に行った。 この結果は、当初の研究計画からはやや遅れているが、今年度のオブザーバの設計法の確立により、前年度に提案した状態フィードバック則と併せて、出力フィードバック則の設計への見通しが出きた。これまでにも、出力フィードバック則の設計手法は与えられているが、前件部変数が測定不可である高木・菅野ファジィシステムに対するオブザーバは設計されていなかった。したがって、今年度のオブザーバの設計が実現したことにより、広いクラスの非線形システムを表現できる、前件部変数が測定不可である高木・菅野ファジィシステムに対する出力フィードバック則の設計への道筋ができた。 その他に、実システムを考慮して、入力端にも外乱が混入するシステムに対する外乱オブザーバの設計も行った。そのため、オブザーバの設計に関しては、当初の計画以上に進んだと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた結果を基にして、前件部変数が未知の高木・菅野ファジィシステムに対する出力フィードバック則による制御系設計を行う。つまり、前年度までに提案した状態フィードバック則の設計手法と、今年度得られたオブザーバの設計手法を併せて、動的な出力フィードバック則の設計法を提案する。なお、高木・菅野ファジィシステムは非線形システムであるため、単純に状態フィードバック則とオブザーバを合わせる分離定理が成り立たないこともあるが、その場合にも動的な出力フィードバック則による設計法を考察する。また、オブザーバを用いない静的な出力フィードバック則による設計手法も提案する。 さらに、それぞれの制御則によるシステムの安定性の保証のため、複数のリアプノフ関数候補を用いて、閉ループシステムの安定性を議論する。特に、前年度に得られたリアプノフ関数は安定条件を緩和できることが判明したため、そのリアプノフ関数とそれに対応する出力フィードバック則により、その設計条件の軽減が期待できる。 また、実際のシステムの状況を考えると、未知の外乱が混入するシステムやシステムパラメータが変動するシステムに対するロバストな出力フィードバック則の制御系設計も必要となるため、このようなロバスト性を有する制御系設計法も考察する。 最終的には、これらの提案手法の有効性を示すために、数値シミュレーションや実システムでの制御実験も検証する予定である。
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