研究課題/領域番号 |
20K12030
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
松田 憲 北九州市立大学, 大学院マネジメント研究科, 教授 (10422916)
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研究分担者 |
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70195444)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 単純接触効果 / 倦怠効果 / 親近性 / 新奇性 / 色相変化 / 暖色と寒色 / 新奇性付加 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,呈示刺激の変更箇所や変化量,変化スケジュールを操作することで,単純接触効果における新奇性要素の付加が心的飽和の抑制と好意度の上昇に及ぼす影響について,主観的ないし潜在的指標を用いて検討する。 具体的には,呈示刺激としてアバターを用いて,独立変数としてアバターの事前好意度を操作する。アバターの変更箇所は,アバターの髪形やアクセサリー,服装を操作する。潜在的な態度変容の測定には,好意度の測定を主観的評価からIAT(Implicit Association Test)に変更して行う。
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研究実績の概要 |
単純接触効果は,ある刺激に繰り返し接することで,その刺激に対する好意度が高まる効果である(Zajonc,1968)。しかし,過度の接触によって心的飽和が生じ,好意度上昇は抑制される(Bornstein,Kale, & Cornell,1990)。 松田・楠見・細見・長・三池(2014)は,自動車画像を反復呈示することによる親近性の上昇と,画像呈示ごとに背景画像を変化させることによる新奇性の付加が,単純接触効果に及ぼす影響を検討した。その結果,背景の変化によって新奇性の付与をした場合の方が,背景画像が変化しない場合と比較して,好意度をより上昇させることが示された。 また,反復呈示刺激自体に新奇性を付加させた実験として,松田・橋口・藤野・楠見(2019)は,呈示刺激である女性アバターの化粧変化によって新奇性を付加させたところ,単純接触効果の上昇は女性参加者のみに見られ,男性参加者では検出することが出来なかった。その後に行われた男女アバターの髪形を変化させた実験(松田・牛尾・楠見,2022)や男女アバターの服装色の明度を変化させた実験(松田・奥・川原・楠見,2022)においても同様に,単純接触効果が得られたのは女性参加者のみであり,男性参加者には得られなかった。 今年度に行った研究では,アバターの服装色の色相変化という新奇性付加がアバターに対する単純接触効果へ与える影響を検討した。前年度に行った実験では無彩色間での変化(明度変化)であったが,暖色間での変化と寒色間での変化の2種で新奇性の付加を行った。有彩色の変化を新奇性要素としたことで,より接触ごとの変化が分かりやすくなり,男性参加者においても,反復呈示によってアバターへの好意度は上昇すると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,アバターの服装色の色相を変化させ,色相変化による新奇性付加の効果を暖色間での変化と寒色間での変化を比較することで行った。 実験は評定フェーズであるセッション1,5,9と接触フェーズであるセッション2~4,6~8で構成された。接触フェーズの各セッションでは,事前好意度(接触前のアバターへの好意度)の高低ごとにそれぞれ暖色間での服装変化,寒色間での服装変化を行った。評定フェーズでは,参加者はアバターへの評価を行った。評定尺度は事後好意度(接触後の好意度),親近性,新奇性であり,「全く感じない」:1~「非常に感じる」:9の9段階評価で回答を得た。接触フェーズではアバターの連続呈示を行った。 実験の結果,事後好意度評定値においては,アバターへの反復接触と接触時の新奇性付加によって評定値が上昇することを予想したが,男性参加者と女性参加者のいずれにおいても事後好意度の上昇は見られなかった。むしろその逆に評定値の低下が見られ,事前好意度の高いアバターで呈示回数5回,9回の事後好意度評定値が呈示回数1回条件を下回るという結果になった。 以上より,今年度に行った実験では,これまでに行ってきた反復接触時に新奇性を付加させた一連の研究とは異なり,そもそも単純接触効果が得られないという結果であった。そのため,今後は今回行った実験の問題点を明らかにしたうえで,再実験を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように,今年度に行った実験ではアバターの服装色の色相(暖色,寒色)変化による新奇性付加の効果が単純接触効果に及ぼす影響を検討したところ,暖色と寒色のいずれの変化条件においても単純接触効果を得ることが出来なかった。 これまで行ってきた実験ではアバターの化粧変化や髪型の変化,服装の明度変化によって新奇性の付加を行ってきたが,いずれもアバターへの反復接触による好意度の上昇は女性参加者のみに見られた。今回の実験では,これまでの研究とは異なり,結果に性差が見られなかった。一連の先行研究ではアバターへの接触時にアバターに新奇性を付加する変化あり条件を,新奇性を付加させない変化なし条件と比較していたのに対して,本研究ではアバターの服装の色相を暖色間でも寒色間でも変化させており,新奇性付加の有無の比較ではなかったことが原因と考えられる。先行研究では刺激への新奇性付加の要因に性差が見られていたため,この新奇性付加の有無が単純接触効果に与える影響のところに性差が生じるということが,本研究の結果から推測される。新奇性付加の有無で性差が生じる原因として,変化に対する感度や変化に対する認識に性差がある可能性があると考える。 今後の実験では,先行研究と同様に接触時に新奇性を付加させない変化なし条件を統制条件として設定し,暖色間変化と寒色間変化を参加者間の条件とすることで,変化ありと変化なしを比較する形で実験を行うことが可能になり,評定フェーズでも有彩色アバターを使用して評定フェーズと接触フェーズでの服装色のギャップを無くすことで好意度評定値の低下を防げる可能性がある。このように手続きを変更することで,服装色の変化を明度ではなく色相で行った場合でも,単純接触効果が得られる可能性があると考える。
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