研究課題/領域番号 |
20K12031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
加藤 和夫 東北学院大学, 工学部, 教授 (60416609)
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研究分担者 |
門倉 博之 東北学院大学, 工学部, 准教授 (50805497)
石川 敦雄 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40416582)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 空間周波数 / 潜在的感覚 / 潜在的連合テスト / 大脳神経活動 / 脳波 |
研究開始時の研究の概要 |
建物の外観や室内デザイン,映像コンテンツなど視覚的な空間に存在する空間周波数特性に着目する.空間周波数パターンは,それ自体は目立たなく顕在的には中立な印象を受けると予想されるが,1/fゆらぎが快適感を与えるといった例のように潜在的な人間感覚を誘起する可能性がある.この心理的・生理的な影響については,詳細には解明されていない. 本研究では,空間周波数特性が(1) 観察者の知覚・認知,感性・情動などを含む潜在的な心的活動に与える影響の評価と(2) 関連する大脳神経活動を明らかにすることを目的とする.これにより,デザインや工業製品に,「人にやさしいデザイン」といった新たな付加価値を与えると予想される.
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研究実績の概要 |
本研究では,建物外観や室内デザインなどに存在する空間周波数特性に着目する.空間周波数パターンは,それ自体は目立たなく,顕在的には中立な印象を与えると予想されるが,1/fゆらぎが快適感を与えるといった例のように潜在的な人間感覚を誘起する可能性がある.この心理的・生理的な影響については,詳細には解明されていないため,本研究では空間周波数特性が(1) 観察者の潜在的な心的活動に与える影響と(2) 関連する大脳神経活動を明らかにすることを目的としている.特に,カテゴリー判別に要する反応時間を用いて潜在的な意識を測定する潜在的連合テスト(IAT)を用いた先行研究(基盤研究C,平成29年度~令和元年度)の結果を踏まえ,本研究では空間周波数がより能動的に潜在的意識の活動を賦活させる新たなIATの実験デザインを導入する計画をして,実験を遂行している. 以上の研究背景と目的に基づき,コロナ禍で延期していた被験者実験を令和4年度より実施し,引き続き令和5年度も継続して実施した.実験では,IATのダミーターゲットの背景に配置した高空間,および低空間周波数画像の影響をIAT得点,反応時間,事象関連電位,事象関連同期/脱同期の観点から評価した.その結果,反応時間からは高空間周波数の強い影響が確認された.事象関連電位には,潜時350msのピーク振幅に空間周波数間で差異が見られた.また事象関連同期/脱同期については,Statistical Parametric Mappingに基づく統計的手法より,前頭部のアルファ波(Fp1)とシータ波(F8)に空間周波数間で差異が見られ,特に高空間周波数の強い影響が確認された.以上の結果より,高空間周波数が対象物への潜在的な相互作用を強める効果があると推察された.今後,研究成果を論文としてまとめ,発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画のフェーズ1(令和2年度~3年度,基礎実験)において,先行研究におけるIATを改良し,ダミーターゲットの背景に配置した空間周波数がより能動的に潜在的意識を賦活させる実験デザインの検討を計画していた.実験画像の作成などの準備は令和2年度に整ったが,それ以降はコロナ禍の影響で被験者実験を実施することができなかった. またフェーズ2(令和3年度~4年度,応用実験)については,実空間を想定してIATのダミーターゲットを建物デザイン,非常口デザイン,人物などとして,その背景の空間周波数の影響を評価する計画であったが,同理由から未実施であった.そのため,当初の研究期間(令和2年度から4年度)を,2年間延長申請して,令和6年度までの研究期間が認められた. 令和4年度は,コロナ禍の影響を考慮しながらフェーズ1の被験者実験を実施することができ,反応時間や脳波の測定に基づき一定の成果を得ることができた.しかし,被験者数や解析の深度が不十分であったため,令和5年度も引き続き被験者実験を実施した.その成果については,研究実績の概要に述べた通りであり,当初計画していたフェーズ1の内容をほぼ完了することができたと考えている.また同時にフェーズ2の実験デザインについても,準備を進めることができたため,令和6年度には被験者実験を実施することを予定している.具体的には非常口やAEDを表すピクトグラムに,背景の空間周波数が与える影響について評価をする予定である.このような進捗状況を鑑み,「やや遅れている」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況として「やや遅れている」と判断したが,その主な原因は,コロナ禍により被験者実験が計画通り進んでいないことである.そのため令和6年度まで2年間当初の研究期間を延長した. フェーズ1(基礎実験)については,令和5年度までで実験・解析はほぼ完了したと考えられるため,今後は研究成果を論文等にまとめる予定(現在学会誌に投稿中)である. フェーズ2(応用実験)では,実空間を想定してIATのダミーターゲットを建物デザイン,非常口デザイン,人物などとして,その背景の空間周波数の影響を評価する計画であった.この中で,実験画像といった実験デザインについては,令和5年度中に準備を進めることができた.具体的には非常口やAEDを表すピクトグラムに,背景の空間周波数が与える影響について,フェーズ1と同様にIATを用いて評価をする予定である.今後は被験者実験を実施することで,反応時間に基づく行動指標と脳波測定に基づく大脳神経活動の評価を予定している.
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