研究課題/領域番号 |
20K12047
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
神谷 幸宏 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (10361742)
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研究分担者 |
小栗 宏次 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (00224676)
河中 治樹 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (90423847)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 感情推定 / 生体信号処理 / 生体信号データベース / ARS / 信号解析 / 呼吸 / センサーヒュージョン / データベース |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題の問いは,次の点である。(1)呼吸から人の心の状態は推定できるか,および(2)センサ出力から得られる特徴量で,心の状態を推定する特徴量はなにか。 心の状態と呼吸が強く結びついているであろうことは,日常感覚からも想像できる。落ち着いているときの呼吸に比べ,緊張したときや苦痛や恐怖を感じたときの呼吸が異なっていることは日常感覚としても理解できる。 本研究課題では,呼吸にともなうセンサ出力を処理することで心の状態を推定できるかを追求する。
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研究実績の概要 |
当該年度はデータ解析のアルゴリズムの優位性を他の手法と比較しながら行うこと,および実験機材の整備を注力した。 データ解析アルゴリズムの検討の面では,本研究において中心的な役割を果たす,研究代表者によって提案された新しいデータ解析法ARSについて,これまで理論的にその優位性を検討してきた。しかし,信号処理には長い歴史があり,これまでの蓄積の歴史的な信号処理の成果のすべてを把握することは難しい。こうした状況の中でARSをデータ解析法の歴史の中で捉え直し,特に低い周波数帯において解像度を高める過去の研究成果の洗い出しに努め,それとの性能比較,ARSの優位性の検証を行った。信号処理の歴史においてIoTが普及した現在ほど,低周波数信号解析のニーズが高まったことはない,との認識の上でこうした過去の経緯との手法の比較は重要であると考えている。 一方,実験機材整備の面では,これまで実験に使用してきたドップラーセンサモジュールが,メーカーにおいて生産中止となったため入手が困難となった。このため対策と代替品の探索に努めている。こうした中で,従来のドップラーセンサの出力のうち解析の前処理により性能が改善される可能性に気づき,その評価を行ってきた。具体的には,これまでARSをドップラーセンサに適用するにあたり,ドップラーセンサモジュールから出力されるIおよびQチャネルの2つの信号から計算する振幅を計算し,これにARSを適用していた。しかし,2つの信号から計算される位相変化に対してARSを適用することが可能であることに気づき,解析方法に修正を加える検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,データ解析アルゴリズムの検討の面では,従来の既存方法のうち特にConstant Q Transform (CQT)およびNon-Harmonic Analysis (NHA)に注目し,性能面および実装面での特徴比較,検討を行った。CQTは1960年代に提案された古い手法であり,フーリエ変換がもつ低い周波数における解像度の低さを改善するための手法として提案されたものである。この方法とARSとを理論的な側面から比較・検討しARSのほうが低周波数領域において解像度が高くなる条件を明らかにした。また計算量の側面からはARSがCQTに対して圧倒的な優位性を持つことを明らかにした。一方,NHAは2007年に富山大学から提案されたフーリエ変換に基づく新しい手法であり,医療画像への応用などが行われ広く注目されている。ARSはフーリエ変換のような意味での周波数直交性を利用しないためNHAとは応用先が異なるが,その特徴の比較のための課題を洗い出しているところである。一方,計算量の面ではARSに優位性がある。現在,IoTシステムにおいてセンサ側で信号解析を行うエッジ処理が注目を集めており,計算量の削減は信号解析アルゴリズムにおいて重要な側面となっており,エッジ処理に適したARSの最適化を行うことが見込まれる。 一方,実験機材整備の面では,これまで使用してきたドップラーセンサモジュールの生産が中止されることがわかり,新しい機材選定を行っている。その中で,ドップラーセンサモジュール出力から計算される位相の値に対してARSを適用する可能性を着想した。位相成分に対して信号解析を行おうとする場合,位相の不確定性と,それに伴う位相の不連続性が解析において大きな問題となる。ARSはこの問題にうまく対処できる可能性があり,あらたな研究として今後展開する予定である。 こうした状況を考え,概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
データ解析アルゴリズムの検討の面では,CQT,NHAのような低周波数領域の性能改善を目指した解析手法との比較を中心に理論的な比較を進めていく。その一方,これらはいずれもフーリエ変換に基づく手法であり,それ以外の方法に基づく従来手法についても視野を広げ検討する必要があると考えている。 一方,実験機材整備の面では代替品として使うことができる新しいドップラーセンサモジュールの探索を行い,そこに合わせた回路設計を再度行う予定である。また同時に,信号の位相成分のARSによる解析の強みと,位相不確定性に対するARSの強みも検証する予定である。
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