研究課題/領域番号 |
20K12060
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 洋 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (00374067)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | コネクトーム / 複雑ネットワーク / 機能モジュール / コミュニティ / 重なり / 階層性 / べき分布 / 深層ニューラルネットワーク / 複雑ネットワーク科学 / 脳情報処理様式 |
研究開始時の研究の概要 |
情報処理機械としての脳の本質はネットワーク構造にある。全脳におけるネットワーク地図―コネクトーム―を描き出す試みが世界中で活発に進められており、それらの結果が利用可能なデータとして公開されている。本研究は、脳が情報を処理する仕組み(脳情報処理様式)をコネクトームから導出できる、ということを示す。機械知能の分野で優れたオブジェクト認識性能を示す深層学習は、視覚野の情報処理様式を擬している、と考えられている。視覚野のコネクトームの構造を分析してこの考えを検証する。すなわち、深層学習の多層・フィードフォワード結合様式と実際の視覚野のネットワーク様式との整合および相違を明らかにする。
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研究実績の概要 |
【本研究の目的】高解像マウスコネクトームから脳情報処理様式を導出する。 【方法】コネクトームのリバースエンジニアリング:コネクトームの構造に潜在的に表現された脳情報処理の機能構成を、ネットワーク分析を用いて推定する。はじめに、その機能構造がマクロレベルである程度知られている視覚野に注目する。ネットワーク分析によるミクロレベルからのアプローチに基づき、マウス視覚野の機能構成を明らかにする。視覚野を対象として構築したコネクトーム・リバースエンジニアリングの方法を、さらに海馬、大脳基底核およびその他の領域にも適用する。並行して、新たなネットワーク分析方法の開発にも取り組み、その成果をコネクトーム・リバースエンジニアリングに取り入れる。 【令和4年度研究の成果】 「マルコフ連鎖モジュール分解(Modular decomposition of Markov chain, MDMC)」は、研究代表者が考案したネットワーク分析の方法であり、コネクトーム・リバースエンジニアリングを実行する上での核である。先年度、高解像マウス視覚野コネクトームにMDMCを施し、視覚野情報処理の機能モジュールを同定した。本年度は、同じ方法を用いて、海馬情報処理の機能モジュールの推定を試みた。ただし、海馬スライスを用いた神経科学実験との対比を行うために、海馬全体に対してではなく、長軸に垂直なスライスに対する高解像コネクトームを構築した。これにMDMCを施し、次の結果を得た:個々の機能モジュールは、解剖学的に同定された海馬区分(歯状回、CA3野、CA2野、CA1野)には必ずしも対応せず、むしろ区分間をまたぐ構造を持つ。これらは、海馬の情報処理様式を理解する上で、従来素朴に行われてきたような、解剖学的区分を機能単位とみなすことが、適切でないことを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、令和2年度に予定していたところの、協力者との対面コミュニケーションによる高解像コネクトーム・データの入手を、一年延期して、令和3年度に行った。そのために時間的には一年うしろにずれてはいるが、当初の計画内容に基づいた研究が実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に着手したマウス海馬および大脳基底核のコネクトーム・リバースエンジニアリングを完遂する。これにより、当初に計画した内容が達成される。 さらに新しいネットワーク分析方法の開発にも取り組む。研究代表者は、ノード間(必ずしも直接つながっていなくてもよい)の因果的影響関係を明らかにする方法を構築しつつある。これを完成させることにより、コネクトーム・リバースエンジニアリングに、コミュニティ抽出とは別の、新たな柱を立てる。
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