研究課題
基盤研究(C)
地球温暖化の将来予測には、世界規模で進行している森林伐採の影響評価が不可欠である。伐採区では、土壌中の炭素循環が変化し、それまで土壌に有機物として貯留されていた炭素がCO2として大気中へ放出される可能性がある。近年、森林では土壌炭素の5割超が表層20cmから30cm以深に存在することが判明し、伐採による表層以深の土壌からの炭素放出機構解明と放出量評価が喫緊の課題である。本研究は、土壌の浅部から深部まで炭素動態を計算可能な数値モデルと、伐採サイトでの観測・分析を通して、森林伐採時の土壌からの炭素放出機構を再現・解明し、更に、過去の国内林伐採による炭素放出量の評価とその将来予測を実施する。
森林伐採に対する土壌中炭素循環の応答機構の解明のため、森林内炭素循環モデルを構築し、国内の皆伐・植林サイトに適用した。モデル計算の結果から、それまでCO2の吸収源であった当サイトが、皆伐後に放出源となったことが示された。これは皆伐の際に地表と土壌に供給された植物残渣が速やかに分解(CO2が放出)されたためであった。植物残渣の大部分は分解・消失したため、土壌中の炭素量とCO2放出量の増加は比較的少なかった。皆伐後は下草(ササ)が繁茂したことでCO2固定が回復し、4年程度で当サイトがCO2の吸収源に戻ることが示された。このように、新規モデルの開発と利用により、森林伐採時の炭素循環予測に成功した。
地球温暖化の将来予測には、世界規模で進行する森林伐採に伴う炭素(二酸化炭素(CO2))放出量の評価が不可欠であり、このためには森林地上部のみならず、既往研究では困難であった地下部の炭素動態の予測が求められる。本研究は独自開発した数値モデルと野外観測を融合することで、地上植生、表層有機物層、および浅部土壌から深部土壌にわたる炭素動態の予測を可能にし、森林伐採時の伐採区の炭素循環の応答機構の解明に成功した。得られた成果は、全球炭素循環解析のため陸域炭素循環モデルの構築やパラメタライズ、伐採区からの炭素放出量評価に役立てることができ、地球温暖化の将来予測の計算精度向上に資するものである。
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