研究課題/領域番号 |
20K12144
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
山本 彬友 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 特任研究員 (30794680)
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研究分担者 |
羽島 知洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), グループリーダー代理 (40533211)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 大気沈着 / 基礎生産 / 炭素循環 / 貧酸素化 / 気候変動 / 海洋基礎生産 / 地球温暖化 / 人為起源エアロゾル / 地球システムモデル |
研究開始時の研究の概要 |
地球温暖化は海洋の成層化により海洋深層から表層への栄養塩供給を減少させる一方、人為起源エアロゾルは大気から海洋への栄養塩供給量を倍増させている。そのため海洋の基礎生産は温暖化と海洋外からの栄養塩流入という2つの人為的プロセスの影響を受ける。しかし、従来の地球温暖化研究では、人為起源エアロゾルからの栄養塩供給が考慮されていなかった。本研究では大気由来の栄養塩沈着過程を組み込んだ地球システムモデルを用いた数値実験を実施し、地球温暖化の影響と人為起源エアロゾルの影響をそれぞれ定量化するとともに両影響の相互関係を明らかにする。さらには基礎生産の変化に付随して生じる炭素循環や貧酸素化への影響も評価する。
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研究実績の概要 |
今年度は昨年度投稿した、過去再現実験における海洋生態系と物質循環に対する人為起源栄養塩流入と気候変動の影響評価に関する論文がScience Advancesから出版され、プレスリリースを行なった。過去の基礎生産、溶存酸素、炭素吸収の変化について、人為起源栄養塩流入の影響が気候変動の影響に匹敵する可能性を初めて示した論文である。 論文の改訂中に、窒素循環フィードバック(窒素負荷に対する窒素固定の減少及び、脱窒の増加)が人為起源窒素の半分を消費し、基礎生産の増加を抑制していることを明らかにした。また、基礎生産の変化と溶存酸素の減少についてCMIP5及びCMIP6モデルの結果と比較し、富栄養化による変化がCMIP5モデルとCMIP6モデルの違いと整合的であることを示した。このことから、CMIP6モデルの複数のモデルにおいて富栄養化を考慮したことが、CMIP5モデルとCMIP6モデルの違いの一部を引き起こした可能性が示唆された。 昨年度から実施している将来予測実験については、4つのシナリオについて解析を行なった。全球の窒素沈着量については、SSP1-2.6では大気汚染対策が進み、2050年頃までに人為起の窒素沈着の大部分が削減される。一方、他のシナリオでは2100年まで現在と同程度の沈着量であった。地域変化については、全てのシナリオで、欧米と東アジア沿岸域の21世紀末における窒素沈着量が現在に比べて減少する。その影響で北大西洋と北太平洋では、基礎生産に対する富栄養化の影響が、現在に比べて21世紀末では減少した。一方、SSP3-7.0とSSP5-8.5では太平洋、インド洋の低緯度域で沈着量が増加し、基礎生産が増加することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去再現実験については計画通りに論文を出版し、将来予測実験については解析行い、計画通り論文を執筆中である。 投稿していた過去再現実験の論文は、4人の査読者がついた。多くのコメントに対応する必要があり、時間がかかったが、無事に出版された。追加の解析から、窒素フィードバックが窒素沈着の約50%、河川窒素流入の約70%を消費しており、硝酸塩濃度及び基礎生産の増加を抑制していることを示した。このフィードバック率の違いのため、基礎生産増加に対する窒素沈着の寄与が河川窒素流入の寄与よりも大きくなることを明らかにした。 将来予測実験については、昨年度実施したSSP1-2.6, SSP2-4.5, SSP5-8.5の3シナリオに加えてSSP3-7.0についても実験を実施した。更に、各実験において気候変動、窒素沈着、鉄沈着の影響を切り分ける感度実験を実施し、これらをまとめて解析した。SSP1-2.6では大気汚染対策が進み、2050年頃までに人為起の窒素沈着の大部分が削減されるが、他のシナリオでは2100年まで現在と同程度の沈着量であった。基礎生産については、SSP1-2.6とSSP2-4.5では人為起源栄養塩流入と気候変動の影響がほぼ相殺した一方、SSP3-7.0とSSP5-8.5では気候変動に伴う減少が支配的であった。地域変化については、全てのシナリオにおいて北大西洋と北太平洋で沈着量の減少に伴い基礎生産が減少した一方、低緯度域ではシナリオによって沈着量が増加する海域があり、基礎生産が増加する傾向にあった。これ等の結果と、昨年度実施した貧酸素化の解析と合わせて、論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は今年度執筆を開始した、将来予測実験における海洋生態系と物質循環に対する人為起源栄養塩流入と気候変動の影響評価に関する論文を投稿する。 また、今年度受理された論文を学会で発表する。
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