研究課題/領域番号 |
20K12160
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 毅 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (10274143)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 放射線耐性細菌 / 放射線耐性機構 / 生体防御機構 / γ線 / 電離放射線 / 大腸菌 / 進化 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線耐性細菌の放射線耐性という表現型の進化において主要な選択圧と考えられる乾燥ストレスを選択圧として、モデル生物である大腸菌を用いた適応進化実験により乾燥耐性大腸菌を作出する。そして、得られた乾燥耐性大腸菌の放射線耐性、および遺伝学的、生化学的性状を解析することにより、自然環境中に存在する選択圧による進化により細菌が放射線耐性という表現型を獲得することを実証し、高い放射線耐性を有する細菌の進化の機構を解明する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、適応進化実験により電離放射線に対し高い抵抗性を有する大腸菌を作出し、その性状を解析することにより、細菌および生物一般の放射線耐性機構およびその進化の機構を解明することである。これまでにγ線を選択圧とした適応進化実験により放射線耐性進化大腸菌を作出した。そして、γ線非照射野生型大腸菌、γ線照射野生型大腸菌、γ線非照射進化大腸菌、およびγ線照射進化大腸菌の全ての遺伝子の発現量をRNA-Seq解析により定量・比較し、発現変動遺伝子に対するGO解析、KEGGパスウェイ解析、階層クラスター分析を行うことにより以下の成果を得た。 1)野生型大腸菌と進化大腸菌では定常状態における遺伝子発現状態が異なっていた。さらに、野生型大腸菌と比較して進化大腸菌では、ストレス曝露後の生存、細胞回復、DNA修復、レスポンスに関与する遺伝子(抗ストレス遺伝子)の発現量が有意に増加していた。 2)野生型大腸菌と進化大腸菌ではガンマ線照射による遺伝子発現量の変動への影響が異なっていた。さらに、進化大腸菌におけるガンマ線照射による抗ストレス遺伝子の誘導効率は野生型大腸菌におけるそれと比較して高かった。 3)抗ストレス遺伝子の発現量は、野生型大腸菌と比較して進化大腸菌で増加し、ガンマ線照射による誘導によりさらに増加した。 4)これらの結果より、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の定常状態での発現量の増加、およびガンマ線照射によるそれらの高効率の誘導が進化大腸菌の高い放射線耐性に関与していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、適応進化実験により電離放射線に対し高い抵抗性を有する大腸菌を作出し、その性状を解析することにより、細菌および生物一般の放射線耐性機構およびその進化の機構を解明することである。 本年度までにγ線を選択圧とした適応進化実験により、γ線耐性進化大腸菌を作出した。さらに、γ線非照射野生型大腸菌、γ線照射野生型大腸菌、γ線非照射進化大腸菌、およびγ線照射進化大腸菌の遺伝子発現状態をRNA-Seq法により解析した。その結果、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の定常状態における発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。 しかし、RNA-Seq解析において得られた結果は、qRT-PCR法により確認する必要がある。現在、このqRT-PCR解析が未実行であるため「やや遅れている」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までにRNA-Seq解析により、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の定常状態における発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。そこで今後、これらの結果をqRT-PCR解析により確認する。
|