研究課題/領域番号 |
20K12174
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
坂本 綾子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 上席研究員 (00354960)
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研究分担者 |
横田 裕一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員 (30391288)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | DNAポリメラーゼζ / ガンマ線 / DNA二重鎖切断 / ヒメツリガネゴケ / ゲノム編集 / 相同組換え / 放射線応答 / DNA修復 / 染色体 |
研究開始時の研究の概要 |
真核生物の間で保存されているDNAポリメラーゼζ (Polζ)の新規機能を明らかにする目的で、モデル植物であるシロイヌナズナおよびヒメツリガネゴケを材料として、1) DNA二重鎖切断修復プロセスにおける突然変異の検出、2) リボヌクレオチドの取り込みによるPolζ活性の追跡、3) Polζとの二重欠損によって合成致死となる変異体の探索を行う。これによりPolζのDNA二重鎖切断修復への関与を明らかにし、種を超えて保存されたゲノム維持機構が存在する可能性を示す。
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研究実績の概要 |
DNAポリメラーゼζ(Polζ)を欠損したシロイヌナズナの変異体(rev3-1)は放射線に対して感受性を示すことから、植物のPolζがDNA二重鎖切断修復に関与していることが示唆されているが、その証拠は得られていない。本研究ではシロイヌナズナおよびヒメツリガネゴケを材料に用いてPolζの新規機能の探索を行うことを目的としている。R4年度は、ヒメツリガネゴケのDNA二重鎖切断修復に関わる経路の解析と、シロイヌナズナPolζの小サブユニットであるREV7とGFPとの融合タンパク質を発現する形質転換植物の作成を行った。 1) ヒメツリガネゴケでは相同組換えに必須なRAD51Bを欠損すると放射線抵抗性が大きく下がることがわかっている。今回、RAD51Bに加えオルタナティブエンドジョイニング(alt-EJ)に関わるPOLQを欠損させた二重変異体のガンマ線に対する感受性を解析したところ、RAD51B単独変異よりもさらに放射線抵抗性が低下することがわかった。 2) APRT遺伝子座をマーカーとして用いた変異スペクトル解析では、RAD51Bを欠損すると繰り返しを含む欠失・挿入変異が多く検出されている。今回、RAD51BとPOLQの二重欠損変異体の変異スペクトルを解析したところ、通常のPCRでは捕捉できない大きな構造変化が頻繁に生じることがわかった。このことから、ヒメツリガネゴケのDNA二本鎖切断修復では相同組換えに次いでalt-EJが重要なことが示唆された。 3) Polζの新規機能を解明する目的でPolζの小サブユニットであるREV7とGFPとの融合タンパク質を発現するコンストラクトをREV7欠損株に導入し、rev7バックグラウンドの指標であるマイトマイシンC感受性が相補されることを確認した。また、蛍光顕微鏡による観察でGFP融合タンパク質がシロイヌナズナ細胞の核及び細胞質で発現することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、ヒメツリガネゴケREV3およびRNaseH2欠損株の構築を予定していたが、プロトプラストの調製と遺伝子導入の効率が安定せず、変異体を得ることができなかった。一方、シロイヌナズナPolζの小サブユニットであるREV7とGFPとの融合タンパク質を発現する形質転換植物の作成に成功したことから、今後pull-down実験等でPolζと相互作用するタンパク質の探索を開始する準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度は、前年度に作成したGFP::REV7導入植物を利用しPolζと相互作用するタンパク質の同定を試みる。また、引き続きPpREV3欠損株の作成を試み、ヒメツリガネゴケにおけるPolζの機能の解析を進める。 1) ヒメツリガネゴケ原糸体組織よりプロトプラストを調整し、sgRNA、Cas9遺伝子、および薬剤耐性遺伝子を発現するプラスミドを導入し、薬剤耐性を指標にPpREV3欠損細胞をスクリーニングする。 2) GFP::REV7導入植物に対してガンマ線を照射し、一定時間後にタンパク質を抽出してGFP抗体ビーズと混合することでGFP-REV7融合タンパク質を吸着させる。その後、溶出バッファーでビーズ結合画分を溶出しSDS-PAGEでGFP-REV7の濃縮を確認する。さらに、溶出画分を銀染色することでGFP-REV7と相互作用するタンパク質を検出し、それらがガンマ線照射後に変化するかどうかを分析する。 3) GFP::REV7導入植物とPolζの大・小サブユニットを欠損したrev3 rev7二重変異体を交配し、GFP::REV7をrev3バックグラウンドへ導入する。rev3 GFP::REV7導入植物とREV3 GFP::REV7導入植物の双方に対してガンマ線を照射し、GFP-REV7と相互作用する画分を比較解析することで、Polζの大サブユニットと相互作用するタンパク質を検出する。 4) 上記の実験で得られたタンパク質画分を質量分析法で解析することにより、Polζ相互作用タンパク質を同定する。
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