研究課題/領域番号 |
20K12177
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
安田 武嗣 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (60332269)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | DSB修復制御 / 脱アセチル化 / 量子トンネル効果 / RAD52 / SIRT3 / アセチル化 / DNA修復 / 量子効果 / DNA損傷応答 / 細胞死 / 非ヒストンタンパク質 / ヒストンアセチル化酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、DNA損傷応答に関わる非ヒストンタンパク質の中で、p300およびCBPヒストンアセチル化酵素(HAT)によってアセチル化されることを同定している非ヒストンタンパク質のアセチル化修飾の役割を明らかにする。DNA修復や細胞死制御に関わる非ヒストンタンパク質のアセチル化修飾の役割について、細胞生物学的、生化学的、構造生物学的に明らかにする。これらの研究により、HATやヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)による、非ヒストンタンパク質のアセチル化修飾が引き金となって誘導される反応により、細胞が生存や死へ向かう細胞応答の新規制御機構を解明する。
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研究実績の概要 |
ヒトRAD52タンパク質は、DNA二重鎖切断(DSB)修復において、相同組換え(HR)修復に一重鎖DNAアニーリング修復に関わるが、RAD52が関わるHRとSSA修復の制御機構については不明であった。RAD52はp300/CBPによってアセチル化されるが、このアセチル化修復はHR修復には必要であるが、SSA修復には不必要であることを明らかにした。結晶構造解析から解明されているRAD52のDNA結合に必要なリジンやアルギニンのアミノ酸をアラニンに置換した変異遺伝子をゲノム編集によって導入した細胞を用いた実験により、HR修復とSSA修復の両方に必要な部位と、SSA修復にだけ必要な部位を明らかにした。これらの結果から、アセチルか修飾とDNA結合部位の両方が、RAD52によるHRとSSA修復の制御に関わると考えられた。 一方、RAD52はSIRT3などによって脱アセチル化され、これはHR修復に必要である。この反応に量子トンネル効果が関わることを明らかにした。量子トンネル効果とは、電子などの小さな粒子(量子)が、古典力学的には乗り越えられない反応に必要な障壁を、まるで障壁に開いたトンネルを潜り抜けるように通過するという現象である。重水素(D)は水素(H)よりも量子トンネル効果の確率が低いため、水素が反応に関わる酵素化学反応ではHをDに置き換えると反応速度が低くなるという速度論的同位体効果が現れる。試験管内の反応において、反応溶液の水をH2OとD2Oで比較すると、D2OではH2Oよりも脱アセチル化の反応速度が約1/2に減少した。一方、細胞を用いた実験では、細胞培養液の水をH2OからD2Oにすると、HR修復がほぼ完全に阻害されるという強い同位体効果が現れた。HR修復は通常の細胞増殖にも必要であるが、D2Oに晒した細胞ではアポトーシスやネクローシスによる細胞死が誘導された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定していたアセチル化が引き金となって起こるRAD52の反応についての解析については、今年度はやや遅れているが、アセチル化がHRとSSA修復の経路選択制御に関与していること、脱アセチル化の量子レベルの影響が明らかになり、それが細胞の生存に必要な重要な仕組みであるという予想外の展開につながり、おおむね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
アセチル化修飾に関わる酵素化学反応による量子レベルの影響が、細胞の生存に重要なDNA修復や遺伝子発現などに及ぼす影響とそのメカニズを明らかにする。また、細胞の生死選択制御に非ヒストンタンパク質のアセチル化が与える影響について、精製タンパク質を用いたin vitroの実験と細胞を用いた実験により解明する。
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